フィンと
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今日はフィンと逢引……うううん、散歩の日。 昨晩ルロスに聞いて、どんな格好が良いのか聞いたら、行き先によるけれど動きやすくてオシャレなものがいいですって言うから、ドレスローブの中でもお気に入りのワインレッドの物にする。 ドレスローブにする理由は顔を隠すためのフードがついているから。
「帯剣は必要無いわよね」
王宮を出て約束の場所に向かうんだけど、緊張で足がなんか震えてうまく歩けない。
なんとか辿り着くと既にフィンが待っていて、フィンもいつもの王国兵の格好ではなくて青いチュニックに白いズボン姿。
「お、おはようございます、ひ、姫様」
「う、うん、お、おはよう、フィン」
2人して赤面で挨拶したまではいいけど、言葉が続かなくなる。
「今日は晴れて良かったですね」
「う、うん、そうね」
…………
……
突然フィンにガシッと手を掴まれてそのまま歩き始めて、王都に向かっているようだったから、慌てて顔を隠すためにフードを目深に被った。
お互い会話も無いまま王都まで着いて、なんだか人に見られているような気恥ずかしさから、手を離そうとしたけどフィンが離してくれない。
「今日は必要な時以外この手は絶対に離しませんから、そのつもりでいてください!」
「あ……は、はい」
フィンの迫力に驚きながら返事を返しちゃう。 そこでなんだか可笑しくなってつい笑っちゃった。
「なんですか、いきなり笑いだして」
「うん、朝からなんかずっとこんな調子で可笑しくなってね」
フィンも頭を掻きながら照れ笑いをして見せてくる。
「ねぇ、今日はフィンがエスコートしてくれるんでしょ? 何処に連れて行ってくれるのかな?」
繋いだ手を引いて連れて行ってくれた場所は、小さい頃にはサハラにも連れて行ってもらえなかった歓楽街で、一瞬ドキッとした自分がいる。
それを察したのか、フィンが慌てて言い訳をしてくる。
「ち、違いますよ。 目的の場所がここにあるだけです」
連れて行かれた場所は見るからに怪しい露店が立ち並んでいて、一番手前に見えるお店に至っては見るからにエッチィ物が並んでる。 なのでフィンの事を白い目で見ると、そっと耳元で囁いてきた。
「ここは闇市で、シーフギルドがいわゆる裏ルートで仕入れている場所なんです。 市場に出回らないような良いものや珍しいものが色々あるんですよ」
「取り締まらないの?」
「親父の話では必要悪と言うものらしいです。 さぁとりあえず見て回りましょう」
フィンと一緒に見て回るんだけど、媚薬やら張型やらのエッチィものばかり。
そんなわけだから、フィンの事も白い目で見ちゃうんだけど、当のフィンが一番テンパっている様子。
ちょっと待っててくださいっていって、身近な露店の店主に話をしに行って少しすると戻ってきた。
「やっぱりここであってます。 ただもうちょっと先に行ったところだそうです」
私の誤解を解くのに必死なようだったみたいで、間違いじゃなかったフィンはホッとしているようだった。
言われた通り如何わしい露店の道をさらに進んでいくと、小物なんかを扱う露店がチラホラ見えてきた。
「ほ、ほらっ! 本当だったでしょう?」
それを見た私は吹き出しちゃって、
「フィンってば必死過ぎぃ」
「わ、悪かったですね!」
誤解も解けて一緒に見て回る。 見たこともない珍しいものが本当に多くて、露店のお店の人に色々聞いていく。
「これってもしかして?」
「ホールディングバッグだよ。 しかもレアなデザインのポシェットタイプだ」
「わぁ、やっぱり。 じゃあそれ頂戴?」
「おいおい嬢ちゃん、値段も聞かないで良いのかよ? 世間知らずにもほどがあるぜ?」
ムッとしながらフィンを見ると、フィンまで呆れた顔を向けてくる。
「おっさん、ちなみにそれいくらだ?」
「金貨で1000枚だ」
ふーんって返事をしておく私に対して、フィンは凍りついてる。
ちなみに金貨1枚は日本円に換算すると10万円らしいわ?
「ありえねぇ! 普通金貨300枚ぐらいだろ?」
「だからそりゃあ普通のバックパックタイプとか大袋タイプだ。 こいつはレアデザインっていっただろ」
その昔はウィザードたちが自作して売ったらしいんだけど、今じゃ作れる人がいなくなったから、その残りしか現存しなくて、貴重なのだそう。
「姫様、諦めてください。 金額が高すぎます」
「お父様に出してもらう!」
こっそりとフィンが耳打ちしてくる。 闇市である以上、表沙汰にお父様にここの事を言うわけにもいかないんだそう。
仕方なく諦めて他のお店を見て回りながら、フィンとの散歩を楽しんだ。
でもこれってただのお買い物よね? 何も買ってないけど……
それでもって日も落ち始めて王宮に戻る時間になった。
今日待ち合わせた場所まで戻るとフィンが立ち止まる。
「姫様……」
「なに? フィン」
「今日は楽しかったです」
「うん、私も楽しかった」
フィンが1度深呼吸をしてから私の目をまっすぐ見つめてくる。
「一度しか言いません」
「うん?」
「……お前の事が好きだ。 俺がお前を一生守ってやる、だから……俺を選べ」
一番付き合いの長いフィンから初めてしっかりとした告白をされた。
まさか告白されるなんて思ってなかった私は、両手を口に当てたまま、気がついたら涙が溢れてる。
「と、まぁそんな感じでくる奴がいるかもしれませんからね」
「……え?」
「自分で練習役は十分務まりましたか?」
フィンが苦笑いを浮かべる。
きっとフィンなりの精一杯なのが分かった私は、フィンに合わせるようにする。
「もーっ! 本気になりそうになったじゃない!」
こうして私とフィンの散歩という口実の逢引は終わった。
この1日を影から見ていた猫の女獣人が頭を抱えて見ていた。
「フィン様ぁぁぁ、そんなんじゃあ姫様の心はゲット出来ないニャアァァァァ!」
フィンとデートの話でした。




