パンツ事件簿
新たに間に入ってくれた7つ星の騎士の前に、さすがの男も黙り込んで、行くぞって蜘蛛の子を散らすように離れていく。 そして興が冷めたとばかりにジークフリートについてきていた女性達もそそくさと離れていった。
それだけ7つ星の騎士団が影響力がある存在なんだっていうのがわかった。 わかったんだけど……
「あの、」
事が収まってサッサと立ち去ろうとする7つ星の騎士を呼び止める。 どうしても確認したいから。
「貴方、もしかしてフィン? フィンだよね! 今までずっと連絡も取れないで心配したのよ?」
だけど7つ星の騎士の人は振り返りもしてくれないで、
「人違いです。 見習いの身ですのでこれで」
そう一言だけ言って離れて行こうとする。
「待って! 待ってよ、フィン!」
追いかけようとした私を、ジークフリートに手を掴まれて何か事情があるんでしょうって止められたの。
間違いなく今の人はフィンだった。 どうしてそんな態度なのかとしょんぼりする私を見て、なぜかキュモヲタが謝ってきたの。
「ぼ、僕のせいなんだな。 ララノアたんゴメン……」
「え、え? うううん、キュモヲタは私を助けにきてくれたんだから悪くはないよ。 むしろ助けてくれてありが……」
とう。 と言葉を続けようとした私の目に信じられない光景が飛び込んできた。
汗を大量にかいているキュモヲタが汗を拭うその手に掴んでいる物、それは……
「なんでキュモヲタが持ってるの私の……」
「ああっ! 間違えた!」
「なんだと!?」
普段冷静なジークフリートが、らしからぬ声をあげてキュモヲタから私のパンツを奪いあげるんだけど……
だからそれは私のパンツなんだってば!
取り返したジークフリートがその手に掴んだ物をジッと見て何かわかると、顔を赤くさせて慌てて私に返してくる。
「も、申し訳ありませんでした!」
「ぼ、僕のコレクションがぁぁ」
受け取ってすかさずしまおうとするんだけど、ドレスにポケットなんかもちろん無く、かといってこのままキュモヲタの汗を拭われたパンツを握りしめているわけにもいかず……
「こ、これ、あげるから、さっさとしまって!」
なんてとんでもない事を言ってしまったり。
はぁっ……とんでもなくみっともないところを……
そこで今いる場を思い出して恐る恐る見回すと、思った通りヒソヒソと話し声があって……
恥ずかしいよぉ。
なんとか会食がやっと終わって、アルバロ、ルロス、ジークフリートの3人に連行されたキュモヲタが私の前に連れてこられた。
「死罪です!」
ジークフリートの第一声がこれだった。
「ブ、ブヒィッ! し、死にたくない、死にたくないよララノアたん!」
死罪と言われて私の足にしがみついてくるキュモヲタ。
「何どさくさに紛れて羨ましい事をしているんですかっ!」
ポロッと本音を言うアルバロがキュモヲタを引き剥がした。 そんな状況だわ。
「とりあえず、死刑とか言わないし、みんなも一旦落ち着つこう? まずどうしてキュモヲタが私のパンツを持っていたのか、そこから話してくれる?」
聞かなければよかった……
つまるところ、姿を消したキュモヲタが入浴中の私の脱衣所に侵入して、魔力を感知したルロスにみつかって叩き出されたんだけど、既にパンツを盗んだ後だった、と。
「し、信じられない事をするんだね、君は!」
ジークフリートがさっきから冷静さを失っていて、凄く怒っているみたい。
「まぁまぁジークフリート、ちょっと落ち着こう? それでキュモヲタはなんでそんな事をしたの?」
「き、決まってるんだな。 ララノアたんが好きだから、す、好きな子の物が欲しかっただけなんだな」
キリッとした顔で理由を言ってくる。
だけど、好きだからってそんな、人の、それも身につけていた物なんて普通欲しがるかなぁ……しかも下着だよ? パンツだよ?
「理由はどうであろうとキュモヲタ様のやった事は泥棒、犯罪、ギルティですよ!」
アルバロが即座に有罪を叩きつけてきたんだけど、ギルティってなんだろう?
「それでは私も調べもせず叩き出してしまった責任がありますね」
ルロスが腕を組んで片方の手を顎に当てて、難しそうな顔をしながらそんな事を呟いた。
「それはルロスのせいじゃないよ!」
「んもう! たかだかパンツ1枚で死罪とか犯罪だとか責任なんかもういいじゃない!」
そう言った私をアルバロ、ジークフリート、ルロスの3人がまじまじと見つめてくる。
……え?
「「「良くありません!」」」
「はい……」
こ、怖いよ、みんな。
でもこのままだと落とし所が見つからないままだよね。 でもどうしたら……
「そうだわ、こうしましょう。 キュモヲタは私の返して。 それでもって私に2度と盗みはしないって誓いなさい。
ジークフリートも理由はどうであれ私のを手に取ったんだし、アルバロも浴場の出入り口で見逃したんだし、ルロスも調べないで行かせちゃった。
だから、全員謝ってそれでおしまい!」
お願いだからこれで終わらせてっ!
「しかしあれは取り返そうとしただけで……」
そこでジークフリートはハッと口に手を当てて言葉を噤んでくれる。 今回ジークフリートがキュモヲタから取り返したことで大事になった原因でもあるからね。
キュモヲタは私に誓って謝って、ジークフリート、アルバロ、ルロスも謝ってきてそれでおしまいになった。 そう思いたかった。
「で、でも、ぼ、僕とララノアたんが結婚したら……その時は良いよね?」
「あ、あははぁ……もしもとんでもない確率で結婚する事になったらねぇ……」
遠回しに言ったつもりだったんだけど、キュモヲタの脳内では既に私と結婚が決まっているみたい……
「ぼ、僕とララノアたんが結ばれるのは僕の中では、け、決定事項なんだな」
お願いだからなんでそういう発想になるのか教えて!
こうして私のパンツ事件は幕を降ろしたんだけど、はぁ……疲れた。




