クローロテースとの別れ
初めての王国旅行最終話です。
フィンが王宮を出てから数日後、お父様とサーラと私の3人だけでクローロテースを海へ連れて行く日が来たの。
「嫌だよクローロテース、帰らないで」
愚図る私にクローロテースは笑顔で、私のおかげで1度は地上が嫌になったのが楽しくなれたよって感謝してくるのだけど、海へ帰ることは拒否しなかったの。
グリフィンが引く馬車でクローロテースと初めて出会った海岸まで、例によってサーラの悲鳴を聞きながら空を飛行移動して、しばらく待つと海神トリートーンが姿を見せたの。
今回はたった1人だけで現れて、クローロテースの無事な姿を見て喜んでいたわ。
「マルボロ王国国王ヴォーグ、まずは約束を守ってくれたことに感謝しよう」
「礼ならば俺の娘に言ってやってくれるとありがたい。 俺は正直なところ何もしていないからな」
海神トリートーンがクローロテースと並んでいる私を見て、ふむと頷くと私に感謝の言葉をかけてくるわ。
「……随分と仲良く接してくれたようだな。 儂のとこの跳ねっ返りが今もそちと仲良くしているのを見ればよくわかる」
「うわ〜父様ったら私のこと随分と酷い言い方するのね」
海神ともあろうトリートーンもクローロテースには手を焼かされているようで、苦笑いを浮かべながら言葉のあやだって誤魔化して見せていて、改めて親子なんだって思ったわ。
「しかし随分と素直に海に帰る気になったものよの? てっきり地上に残りたいというとばかり思っていたのだがな」
「うん、だって地上に来てたくさん素敵な人たちと出会えたのに、肝心の私ったら海神の娘なのにまーったく役立たずだったのよ?
だから一度父様の元に戻って、ララノアの役に立てるように私はなりたいの」
ほほ〜と海神トリートーンが感心するのと同時に、役立たずだったって言ったことに不快感を示してきたわ。
「だからねララノア、私も1度父様のところに戻って、もっと力をつけてくるよ。
いつになるかわからないけど、ララノアが困ったことがあったら助けてあげれるようになっておくね」
「クローロテース……」
「もっとも〜父様次第なんだけどね〜。 海神の娘が今以上の力がつけられないんじゃ恥ずかしいから戻ってこないかも?」
うわぁ……海神トリートーンの眉尻がさっきからピクンピクンしてるよ。
よほどクローロテースの言ってることが気に障ったのか、トリートーンが理由をお父様に聞いてきて、お父様はドラウの進軍がそう遠くないうちにあるかもしれないことを伝えたわ。
「なるほどな。 となると人種の神は今回も手出しは出来ないのであろう」
海神トリートーンはそれ以上言葉を続けることはなくて、クローロテースを手招いてくるわ。
いよいよお別れって時にクローロテースが、私の耳元に口を寄せて耳打ちしてくるの。
「私なりにずっと見てきたけど、ララノアには人を惹きつける力を持っているわ。 それはきっと王家の血筋なのかもしれないけど……私もララノアの事大好きだよ!」
ムチュッて頬っぺたに口づけされちゃった。
「……あ」
「ここはララノアの1番大切な人に譲らないとねぇ」
私の唇に指で触れてきて、その指をクローロテースの唇につけると、顔を真っ赤にさせながら手をパタパタ振って海へと駆けていくクローロテースを、初めてキスされた私は手をキスされたところに当てながらポーッとなりながら見送ったの。
胸のあたりまで海水に浸かったところで足元を見たところから、海神トリートーンが足を元の姿に戻したみたい。
「じゃあね〜ララノア、きっとまた会いに来るから、だからさよならは言わないよ〜!」
「それではな。 ヴォーグ王よ、武運を祈っておる」
お父様が頷くにを確認して海神トリートーンとクローロテースは海に消えていったわ。
行っちゃった……って振り返るとむすっとしたサーラの顔があって、どうかしたのか聞いたらついていく理由はなかったじゃないかって怒っていたみたい。
「さぁ俺たちもさっさと帰るとするか! なぁサーラ、また可愛らしい悲鳴を聞かせてくれよ?」
ウググってなるサーラを他所にグリフィンの引く馬車に乗り込んで、お父様がおいでおいでしてる。
御者台に座った私がサーラを見ると諦めた顔でお父様の横に座って、帰路の飛行を始めるの。
サーラの悲鳴とそれを楽しそうに落ちないように捕まえておいてやるって、サーラの胸を掴んでいるお父様に呆れながら……
王宮に戻った私がグリフィンにお疲れ様ってやっている間のこと……
「なぁサーラ、帰りの時に俺に胸掴まれてちょいと感じてただろ?」
「んなわけあるか!!」
「っかしいなぁ? アリエルに聞いたが、あまり長いこと女体化してると精神も女性化していくんじゃなかったか? ほれ、今だって手で胸を守るようにしてるじゃないか?」
呆れながらお父様の変態っぷりの話を聞いていると、慌ててサーラがその仕草をやめて、ちゃんと寝るときは姿を戻しているって言っていたの。
じゃあ、寝ている時にサーラの部屋に入れば、サーラの本当の姿が見れるのかも!
なんて思ってその日の夜に早速サーラの部屋をそっと覗き込もうとドアをソーッと開けたつもりだったんだけど、暗い部屋の中から私の事をジッと見つめる赤帝竜に驚いて、慌ててドアを閉めてベッドに飛び戻ることになっちゃった。
翌朝、サーラには赤帝竜は脳の半分だけで睡眠しているから、寝ないでもいられる事を教えられたわ。
残念そうな顔をする私に、サーラは戴冠式の日になった時に見せてあげるって約束してくれたわ。
こうして私の少女期から王国の旅行を経ていく事で、根本は変わらないだろうけど、色々我慢する事やたくさんの人と出会い、色んな人を見て成長していった私は、ちょっとづつ大人へとなっていく。
次話からララノアの雰囲気がだいぶ変わってきて、登場人物も怒涛の如く増えますが、主だった登場人物紹介も更新するので、わからなくなったらご覧ください。




