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視察の報告とそれぞれの道

 魔導門(ゲート)を抜けた先は王宮の中庭で、先に入ったフィンたちがすでに待っていたわ。


 突然現れた魔導門(ゲート)にお父様やログェヘプレーベ、マクシミリアンや兵士たちも集まっていたみたいだけれど、先に姿を見せたアリエルが説明をしたようで兵士たちは既に解散させられていたわ。



「ヴォーグ、大事な話があるから人払いしてくれ。 そこでヴォーグとログェヘプレーベにも話しておく」


 付き人であるサーラがこんなことを言えば当然マクシミリアンが黙ってはいないわ。



「貴様! 付き人の分際で陛下を呼び捨てにし、命令まで! 某が叩き切ってくれるわ!」


 誰かに止められる間も無くマクシミリアンは抜刀してサーラに斬りかかってしまうのだけど、その剣はサーラの側にいた赤帝竜(ルースミア)の手によって止められてしまうの。

 そう、本当に素手で……



「な!? 剣を素手で受け止めただと!」


 驚くマクシミリアンを他所に赤帝竜(ルースミア)は平然とした顔でサーラに、こともあろうかこう言ったの。



「なぁ(ぬし)よ、コイツをフルボッコしてもいいか?」


 フルボッコされた姿を目の当たりにしている私や特にフィンが慌てて止めようとして、マクシミリアンは剣を掴むその手から離そうと必死になっているところで、お父様が止めてくるわ。



「マクシミリアンいいんだ、剣を引いて下がってくれ」


 お父様、マクシミリアンは引きたくても赤帝竜(ルースミア)に剣を掴まれていて引けないんですよぉ……


 と思ったのもつかの間、赤帝竜(ルースミア)が急に剣を掴む手を離したからマクシミリアンはよろけて、体勢を立て直しながらお父様に向かって叫んだわ。



「何故です! このような輩の好きにさせるつもりですか!?」


「このようなって言うがな、今将軍の剣を素手で掴んでいたのはあの赤帝竜(ルースミア)だぞ? そしてその横にいるのが【魔法の神エラウェラリエル】、最後に【自然均衡の神スネイヴィルス】の代行者アリエルだ。

無礼なのはどっちかわかったか?」


 マクシミリアンは驚いた顔を見せたけど、すぐにサーラの方を向いてこいつは付き人ではありませんか! って怒鳴ったの。



「う……いや、それがな……」


 お父様がどう説明したらいいか困ってサーラに顔を向けてくるわ。



「ヴォーグ、もうララノアたちにも素性は明かしているから構わないよ。

マクシミリアン=ミュラー、秘密にしていて悪かったが俺は創造神の執行者にして世界(ワールド)守護者(ガーディアン)のサハラだ。 訳あってララノアの側にいた」


 この場で驚く声を上げたのはたった1人、マクシミリアンだけで、この場にいる他のみんなは平然としていることにも驚いているわ。

 ジークフリートは知らなかったはずなんだけど、ここまでのやり取りから察していたみたい。

 そんなところにちょうどお母様がアルナイル先生が中庭に姿を見せて、こちらを見て驚いた顔で駆け寄ってきたわ。



「アリエルさん! お久しぶりです! あ、今は代行者様でしたね」


「……お久しぶりです」


 それはまるで旧友にでも会ったような挨拶で、アリエルも手を振って笑顔で久しぶりって返していたわ。



「アリエル様はお母様とアルナイル先生とお知り合いだったんですか?」


「そうよ、キャビン魔導学院時代のクラスメイトだったの」


 それはごく当たり前のように返されて、私もそうだったんですかとしか返せないほどだったの。



「サハラさんも久しぶりです……って、サーラさんでした!」


「いや、いいよアルナイル。 今俺の素性を明かしたところだ。 それにこれでマクシミリアンも信じてくれただろう?」


 後から来たアルナイル先生にまでサーラをサハラって言い間違えれば、さすがのマクシミリアンも認めたようでサーラに頭を下げてきたわ。



「大変な失礼を致しました……」


「いや、いいよ。 俺も黙っていたんだし、バラすつもりはなかったが……っと、それどころじゃなかったな」


 本来の目的を思い出したようにマクシミリアンだけを残して王宮の中へと入っていったの。





 お母様となぜかアルナイル先生も加わって、王宮で一番広い応接間に入るとさっそくサーラが話をはじめようとするのだけど、



「サーラ、なんでマクシミリアンだけは呼ばないの?」


 サーラはフィンの顔を一度チラッと見てから、マクシミリアンは軍人としては立派だけれど柔軟性が足らないため、これから話す話の足をいちいちおられたくなかったって答えてきたの。


 それを聞いてもフィンは特に気にするどころか、先ほどから何かを考えているみたいだわ。


 それで話が始まってまず今回の視察の報告からとなって、私が見てきたことを報告していくの。



「ヴォイドの町、ヴェニデの町ではこれといった問題は感じなかったのだけれど、ヴィロームの町ではーーーーー」


 こんな感じで、婚約話以外の報告をしていって、ヴァリュームの帰り道でルロスと出会ったところにきて私は話すのを一旦やめてサーラを見たの。 サーラが頷いてきたからルロスが転生者で、ドラウである事を話すけど誰1人特に驚く人がいないから逆に私の方が驚いちゃった。

 報告を続けて他のドラウが襲ってきたこと、その時見た事聞いた事全てを報告し終えてたの。



「ララ、視察とその報告よく出来たな。 偉いぞ!」


「お父様、私だってもう13歳になったのよ? いつまでも子供扱いしないでよね」


「……今回の視察の旅で、ララは随分成長したみたいね」


 そんな風にお母様が嬉しそうに言って、アルナイル先生も頷きながら微笑んでくれて少し照れちゃう。




「となるとでやがりますが、神々は力を貸せやがらずに我らだけでドラウの進軍を防ぎやがらないといけないわけでやがりますが……」


 ひと段落したところで大臣のログェヘプレーベが口火を切ってドラウ進軍の話をしだしてきて、ルロスにドラウの進軍について尋ねてきたわ。



「巣で聞いた話では今すぐにでもという話は上がっていません」


 知っている限りの地下世界(アンダーダーク)での話をルロスがはじめて、私たちにはよくわからない、地下世界(アンダーダーク)の覇権を争っている相手との戦いが一度落ち着きを見せだしたところらしいわ。



「つまりは当面は攻めてくる事は無いだろうという事でやがりますね?」


「おそらくとしか言えません」


 ルロスとログェヘプレーベのやり取りを黙って聞いて、話が途切れたところでお父様が当面の心配はなさそうだなって安心した顔を見せたわ。



「よし……それでは王都の方は当面は問題はないだろうから、アルバロのアイデアの避難所作りに……ヴィローム領主エーリッヒ=ヘイへの子ジークフリート、お前のところの兵士たちにも手伝わせて一刻も早く完成させて欲しい」


「はっ! 仰せのままに」


「さてサーラ、いやサハラ、間接的にであれば手を貸してもいいようだがお前たちはどうする?」



 【魔法の神エラウェラリエル】はいつまでも地上には留まっていられないため、この会議の後は神界に戻らなくてはならないらしくて、代行者のアリエルも同じく【魔法の神エラウェラリエル】の代行者のキャスに話を持ちかけておくそうだわ。

 そしてサーラは……



「何そんな顔をしているんですか? いずれは別れなければいけない時が来ますが、今はララの付き人のままですよ」


 心配そうな顔を見せた私の顔を見ながらサハラではなくて、サーラとして私の頭を撫でてきてくれたの。



「我の住処はサハラのいる場所だ。 しばらく離れていたからサハラのいるここに住まうぞ」


「ははは……しばらくは食料の心配をしなくてはならなそうだな」


 赤帝竜(ルースミア)が滞在の意思を示すと、お父様がそんな冗談めいたことを口にしたわ。



「僅か長く滞在しすぎんした。 ララちゃん少ぅしばかりの間でありんすが、ぬし、わっちは旅に出んす」


 驚く私にブリーズお姉様はゴメンねってポーズを取ってきたの。 ブリーズお姉様は世界を旅しながら、その歌の力で人々に元気を与えたいんだって。



「わっちは毎年ここでコンサートを開く時には帰ってきんす。 でありんすから許してくんなましね」


 この他にもクローロテースもそろそろ約束の時だからって、海に戻るって言い出したわ。

 クローロテースが人魚だって知らなかったアルナイル先生やジークフリートは驚いたけれど、お父様が交友を結んだ話をして納得させたの。



「なんだかみんないなくなっちゃって寂しくなるな……」


「仕方が無いでしょう。 人には人のそれぞれの道があるんですから」


「うん、わかってる。 わかっているけど、やっぱり別れは寂しいよ」


 なんだか私のせいで最後はしんみりした感じで終わる事になっちゃった……



 ただその日の夕食は全員で食事する事になって、すごく賑わいを見せたわ。 お父様の言っていた赤帝竜(ルースミア)の理由もわかったしね。




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