ドラウの社会
ローブを着た女のドラウの姿は、黒い髪の毛に黒い瞳で……顔は違うけれど……そう、まるでサーラのような姿になったの。
「サーラみたい……」
えってアルバロが振り返ると驚いた顔を見せて、慌ててカバンから鏡を取り出して女のドラウに手渡したわ。
『もしかしてこれって君の前の姿?』
鏡を見つめて顔に手を触れながら、女のドラウが頷いていたわ。
ドラウの顔立ちは彫りが深く目鼻立ちがはっきりした美形ではあるけど、まつげが長かったり影がある感じの怖い印象なんだけど、今の女のドラウの姿は黒目黒髪に平べったい顔立ちでサーラみたい。
『確かにこれは前世の姿です。 これは驚きました』
とりあえずこれでなんとかごまかせるようになって、アルバロが早くサーラと合流する事を勧めてくるわ。
「なぜサーラなの?」
「そ、それは……」
口ごもるアルバロの顔をジッと見つめていると諦めたように話し出したわ。
サーラが世界の守護者と知り合いのようだから報告すればなんとかしてもらえるかもしれないって話だったわ。
「世界の守護者って言ったら、創造神の執行者じゃないか? そんな人と会ったのかアルバロは」
フィンが驚いて聞き返していたわ。
言葉のわからない女のドラウはクローロテースが相手をしていて、言葉が通じないのに話しかけていたわ。
「とりあえずそういう事ならサーラに早く会うしかないわね」
「待って!」
話がついたと思ったらクローロテースが……
「お腹が空いたよ?」
夕飯を指差しながらお腹をさすって言ってきて、フィンとアルバロは苦笑いを浮かべて、女のドラウは意味がわかったのか頭を下げているわ。
結局夜の移動は危険ってフィンが言うから、その晩はやっぱりここで野営することになるの。
その時に女のドラウの名前をアルバロに聞いてもらったんだけど……
「ルロスィアン=ディザスター=アンドゥダグと言うそうです」
な、長い……舌をかみそうだわ。
「長いのでルロスでいいそうです」
私の他にフィンも顔をひくつかせていたのに気がついたみたいで、気を使ってくれて短く呼ぶ呼び方を教えてくれたわ。
その夜、見張りの順番がアルバロの時にルロスと話をしていたみたい。
『ドラウに転生ってどういう感じなの? 僕は人種の人間だったから、文明は違ったけど感じは似ていたからね』
『そうですね、一番の違いは女尊男卑でしょうが、それ以上に男は奴隷みたいなものです』
『ど、奴隷!? じゃあ結婚とか子孫を残した場合も父親は奴隷のままなの?』
『相手によりますが、氏族長と婚姻を結んだ場合は地位が向上して多少なり権限を持ちます。 氏族長に仕える者たちと婚姻を結んだ場合は、通常の男より地位が高い程度ですね』
アルバロが少し引き気味に苦笑いを浮かべて、ドラウの男に転生してなくてよかったって言うと、ルロスが少しだけ口元を緩めて笑ったわ。
そういえばルロスって、あまり感情を出さないわね?
『でもそうしたらルロスは女性なのになんで逃げ出したりなんかしたの?』
『ドラウの社会は常に氏族同士で争いが絶えません。 負けた氏族は勝った氏族に仕えるか殺されるかで、陰謀策謀が常に渦巻いているのでちょっとした隙を突いて殺されたりします。 だから感情を出すのも危険になります』
そ、そうなんだ……って返事しかアルバロにはできなかったみたい。
『ただし【ドラウの女神アラクネー】のお告げがあれば、氏族間のわだかまりより優先して従うことになります』
『それって昔あった地上制圧の事?』
ルロスが頷いて答えたわ。 確かそれでここの以前の国が滅んだのよね。
『そういえばオークとドラウってどういった関係なの?』
『主従関係で主に身の回りの世話をさせています。 賢い家畜でしょうか……また戦いの時は男のドラウが率いる兵でもあります』
『そうなんだ……ルロスはそんな環境で生きてこれたなんて凄いね。 僕だったら自殺でもしてそうだ』
『女であった事と氏族長の娘だったから、でしょうね。 それと……前世でのおかげもあるかもしれません』
あまり表情を顔に出さないためルロスがどんな思いなのかわからないけど、アルバロはこれ以上は聞かないほうが良さそうって判断したみたいで、最後に一言だけ言って話を終わらせたわ。
『プリンセス ララノアはまだ13歳になったばかりだけど、とても思いやりのある優しいプリンセスだよ。 きっとルロスを助けてくれるからね』
アルバロの顔をジッと見つめてから、ルロスは信じて見る事にしたみたいだわ。




