ドラウに転生した女
一応気をつけながら様子をしばらく見ていると、女のドラウもこちらを気にしつつも食事を続けているわ。
「私たちの夕飯が……」
気がつくと指をくわえてお腹をさするクローロテースが、なくなりそうな勢いで食べている女のドラウを見つめながら私の横に来ていたわ。
女のドラウもそれに気がついて、自身が食べているものとクローロテースを見比べると、青白い顔の頬を赤く染めて立ち上がって頭を下げて何かを喋ってくるわ。
それは何を言っているのかわからないけど、発声から知っている言語を色々使って伝わるか試しているようだったわ。
おそらく女のドラウが知っている全ての言葉を試しても私たちがわからないでいると、おまじないか何かのように両手を合わせて頭を下げるのを最後に取ると、地面に置いた剣を拾い上げて、ゆっくり後ずさりながら立ち去ろうとする女のドラウに、慌てた様子で私の知らない言葉でアルバロが呼びかけたわ。
『待って! 君、今日本語を最後に使ったよね!』
ゆっくり後ずさりしていた女のドラウが足を止めたの。
『貴方も前世の記憶持ちですか?』
アルバロが女のドラウの言葉に頷いてから振り返ってくるわ。
「彼女は僕と同じ転生者です、フィン、危険は無いから武器を下ろして!」
そういうなりアルバロは1人で女のドラウの方へ近づいて話し出したわ。
『僕も前世の記憶持ちだよ。 あっちにいる人たちは違うけど、僕が転生者だと知っているから大丈夫、安心して』
『そう、私以外にも前世の記憶持ちがいたのですね』
『あそこにいる女の子はララノアと言って、この国、マルボロ王国のプリンセスだから君の事もきっと保護してくれるよ』
『その話、信じていいのですか?』
『君を庇ったのは誰だった?』
話がついたのか、アルバロが女のドラウを連れて私たちの元まで来て説明をしてくれたわ。
「つまり貴女もアルバロと同じ転生者なのね?」
『……だって聞いているよ』
アルバロの通訳で女のドラウが私に頷いてくるわ。
『まず私を本気で保護する気があるのか確認が欲しい』
「……って言ってます」
「保護って人種から守ってって事よね?」
『……それで間違っていないよね?』
『……人種?』
アルバロが人種の事を説明しているみたいで、それを聞くと女のドラウは首を振ってくるわ。
『私の……同族になるのですね、ドラウからです。 私は故郷を逃げ出しました』
「……だって言ってます」
アルバロに通訳して貰いながら話していくと、この女のドラウは故郷のドラウの住む場所で生まれ育ったのだけど、彼女からするとその狂気染みた生活に耐えられなくて、1人でも十分生きていけるだけの力を得てから逃げ出してきたのだそうよ。
それでせっかく逃げ出して地上に出たというのに、姿を見るだけで攻撃をされ続けたのだそうなの。
『そうですか……ドラウというのは人種全てが畏怖すべき種族、これでやっと姿を見ただけで怯えたり襲いかかってくる理由が理解できました』
今まで黙って聞いていたフィンが、あることに気がついて口にしてきたわ。
「姫様ちょっといいですか? あんたさっき同族から守ってくれって言ったよな? まさか追われているのか?」
『……だって』
『……どうやら私の種族は裏切り者には死をのようです』
「……だって」
「って事はなんだ? そのドラウを追って、他のドラウが狙ってるってことか!?」
アルバロが伝えると女のドラウが頷いたわ。
「姫様、これはかなり厄介な事になりそうですけどどうしますか?」
そうだよね、さっき見ていたけどアルバロとフィン2人相手で剣も抜かないで相手にできたほど強いんだから、彼女を追ってくるドラウも相当強いよね。
腕を組みながら考えているとポシェットから何かが飛び出てるの。
……ん? あれ? なんでポシェットから?
引っ張り出したそれは、シャリーに貰ったローブだったわ。
残念ですが、それはララノア王女様が扱うものではないですわぁわぁわぁわぁわぁわぁ……
脳裏にシャリーの顔と言葉が浮かんできたわ。
「これの事だったのぉぉぉ!」
驚く4人を無視して、女のドラウに手にしているローブを渡すの。
「これを着て。 イカサマのローブっていって、姿を偽れるわ」
「姫様そんなものいつの間に?」
「あー……シャリーが必要になるからってくれたの。 しかも私じゃない誰かにってね」
「あの宿屋の主人は一体何者なんですかね」
「気にしない方がいいわよ……」
それで女のドラウはというと、手渡したローブを持ったまま立ち尽くしていて、着ようとしていなかったわ。
『ララノアが着てって』
アルバロが何か言うと、女のドラウが身体に巻き付けていた布を脱ぎ捨てて黒の下着姿のような格好になるわ。
「っな! ちょっとフィン! アルバロ! 2人は回れ右ぃぃぃぃ!!」
慌てて言われた通り後ろを向いて、その間に女のドラウはローブを身につけたわ。
「あ……見てララノア、姿が変わったよ」
クローロテースの言うように、青白かった肌は私たちと同じ様になって、というよりも別人になっていたわ。




