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ヴィローム領主

 3日目、今日でヴィロームに到着する予定の日、昼前には街道に沿うように大湿原が見え出したわ。


 決して喜べるような場所ではなくて、どこか禍々しさを感じる湿原で、理由でもなければ立ち入りたいとは思わない、そういう場所だったわ。


 クローロテースも少し怯えた表情を浮かべていて、私同様湿原から禍々しさを感じるっていって、少しでも湿原から離れた場所を歩いていたわ。


 フィンもアルバロも警戒して歩く中、平然と会話を楽しみながら歩くサーラとアリエルが異常に見えるのと同時にまるで恋人同士の様にも見えるわ。



「プリンセスの侍女と代行者様は随分と親しい様ですね」


 不意にジークフリートに声をかけられて、慌てる自分がちょっぴり恥ずかしい。



「ジークフリートはそんな容姿で本当に恋人とか好きな人はいないの?」


 うわ、自爆したかも。 ジーっと私を見てくるよ。



「私が好きな人は今目の前にいる方です」


 あー……やっぱり……

 それでたぶん困った顔をしたんだと思う。



「ですが、プリンセスには心に決めた方がいる様ですね」


「い! いないいない、そんな人いません!」


「なら私にもチャンスはありますか?」


 うひゃーーー! ジークフリートって凄く積極的な人だったんだ。


 私が返答に困っていると、気がついたフィンとアルバロが近寄ってきて、フィンは私を口説いている暇があったらしっかり護衛する様に言ってきて、アルバロもそれに同意して見せてくるわ。



「これは失礼した。 ではしっかり役割を果たすことにしよう」


 ジークフリートも私から距離を取って警戒しはじめると、ブリーズお姉様が私のところにニヤつきながら寄ってきたわ。



「ララちゃんはモテモテぇ。 どなたが好みだぇ?」


 耳元にこっそり聞いてくるの。



「まだそういうの私わからないよ」


 そこでブリーズお姉様が真面目な顔になって、プリンセスである以上、私が15歳になって戴冠式を迎えると各地各国から求婚が来る様になるよって言ってくるの。

 はぁ……自由なブリーズお姉様が羨ましいわ。





 そんな話をしながら歩いていけば、知らず知らずのうちに無事にヴィロームの町にたどり着いて、アリエルと別れた後、早速ヴィローム領主の屋敷へ向かったわ。



「また結婚の話出るのかなぁ……」


「ここの領主は大丈夫でしょう」


 サーラがそんな事を口にしたんだけど、理由は実際に会ってみたことでわかったわ。


 ヴィロームの領主はまだ子供のいない奥さんを娶ったばかりの人で、仲が良さそうな夫婦だったわ。



「これはプリンセスよく来てくださいました……」


 まぁそんな感じで自己紹介をされて、奥さんも朗らかな優しい人だわ。


 時刻的には既に夕方だったため、食事の前にドラウの話になるの。



「……つまりドラウをしっかりと確認が取れた人はいなくて、被害も今のところはないのよね? それでなんでこんなことになったの?」


 どうにもふに落ちないことに、ドラウらしき者を見たという程度で今回これだけの騒ぎになっているみたいだったわ。


 ただヴィロームでは昔からドラウとオークの存在を僅かでも感じたら、報告する義務があるんですって。



「じゃあ見間違いの可能性もあるのね?」


「そうであれば嬉しいことです」


 そこで一冊の古い本を出されて、オーク進軍の時の事が書かれたものを渡されたわ。

 そこにはオークが現れた直後からこの町が占領されるまで書かれた当時の領主の書き残したものらしくて、攻め込まれた時に現れたオークの数は押し寄せる波の様ってあったわ。



「湿原は冒険者が狩場としてかなり多くいるので、発見が遅れることはそうそうないとは思います」


 要するにヴィロームの領主をやるということは、常にこの危険が隣り合わせにあるそうで、心労尽きないらしいわ。


 私は今回ドラウの件をお父様に任されていることを説明して、もしドラウやオークが現れたら、無理に防衛をしないでヴァリュームに逃げる様に言うの。



「この地を手放してもいいのですか?」


「国民の命の方が優先よ。 報せさえ入れてくれれば、ヴェニデからすぐに兵が来てくれるようになっているし、王都からも全ての兵士と同盟国の援軍も駆けつけてくれるようになっているわ」


 これについてヴィローム領主は今のうちに兵を集めておくことはできないか尋ねられたのだけど、噂だけで兵士を動かすわけにはいかないことと、ヴィロームを飛び越えてヴェニデなどに現れた場合を話すと気を落とされてしまったわ。


 なので今回の領地視察は名目であって、ドラウ調査も含まれている事を説明して、明日ヴァリュームに向かい、ヴィロームに戻ったら調査をする約束をしたら少しだけ元気になってくれて良かった。



「僕に提案があるんですが」


 活気のないこの状況で、アルバロが手を上げてきたわ。



「なに? アルバロ」


「なんでヴィロームの町はそこまでわかっていて町を壁で覆わなかったんですか?」


 これには領主が答えてくれて、湿原が近いため地盤が緩いことと、湿原で食料を得て暮らしているものもいるため、全てを覆うのは不可能だそうよ。 それにアルバロは頷いてはきたけど、それなら避難場所になる所を設置してはどうかと提案してきたわ。



「避難……場所?」


 避難場所というのをアルバロが説明してくれて、それだ! とでも言うようにヴィローム領主が早速着手する方向で検討するようになったわ。

 誰も避難場所という事を知らなかったところから、アルバロの元の世界の考えなんだろうね。




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