救出と賊の暗躍
建物から逃げ出した私は、長いドレスの裾をつかんで一生懸命に走ったの。
そんなに遠くないところから私を探す声が聞こえて、その声から逃げるように一生懸命走ったんだけど、道のわからない私はついに見つかっちゃった。
「み〜つ〜け〜た〜ぞ〜!」
「嫌っ! 来ないで!」
後ずさりしながらどこかに逃げる場所がないか探していたら、背中に何か柔らかいものが当たったから驚いて振り返ると、髪の毛は老人のように白いけど凛とした女の人が立っていたんだ。
「お願い、助けて!」
すがる思いでその女の人に助けを求めると、ニッコリと微笑んでくれたんだ。 だけどよく見たらそのお姉さんのお腹が大きかったから、きっと赤ちゃんがいるんだと思ったの。
「おい、女! そのガキをこっちによこしやがれ」
気がつくと追いかけてきた悪い人が3人共集まってきちゃっていて、このままだとお姉さんにまで迷惑がかかっちゃう。
「ゴメンなさい、やっぱりお姉さんに迷惑かけちゃうから私行くよ」
「君は私に助けを求めたのではなかったのか?」
「そうだけど……」
「なら私に任せてくれればいい」
そういうとお姉さんは側にあったホウキを手に取って私を守るように立ちふさがってくれるんだけど、それを見た悪い人達は本物の剣を抜いてきたの。
「よぉネェちゃん、剣相手にそんな腹とホウキ持ってどうするつもりだ?」
「貴様ら程度、このホウキで十分だ」
どうしよう、3対1なんてズルいよ。 私もただ見てるだけじゃダメだよね。
何か武器になりそうなものを探していると、悪い人達がお姉さんに向かってきたの。
「危ない!」
私がそう叫ぶのと同時にお姉さんは1人をあっという間にホウキで倒しちゃったんだ。 残る2人のうち、もう1人も倒したところでお姉さんが吐き気をもよおしてホウキを落としちゃった。
チャンスとばかりに残った1人がお姉さんに迫ってきたから、咄嗟に私がホウキを拾って振り回したんだ。
バシッていい音がして、悪い人に上手に当たったみたい。
「ヤッタネ! あ、お姉さん大丈夫?」
「う……あ、あぁ大丈夫だ。 少し落ち着いた」
「お姉さん、今のうちに逃げよう」
お姉さんを支えながら逃げようとした時、騒ぎを聞きつけてマクシミリアンが兵士を引き連れて現れてくれたんだ。
「姫様ご無事でしたか。 賊は……む、その女性は」
「この人は違うよマクシミリアン、このお姉さんは私を助けてくれたんだよ。 あそこで倒れている人が悪い人達だよ」
「なるほど、かしこまりました。
おい! あいつらをひっ捕らえろ! お前は陛下に報らせに迎え!」
「……マクシミリアン? 姫様? という事はまさか君は……貴女はプリンセスララノアか?」
「うん、そうだよ」
「ハ、ハハ……ドレスなんて着ているからどこぞの良いところのお嬢さんだろうとは思っていたが、そうか……そういうことだったのか。
私は飛んだ大物を救ったわけだな」
お姉さんが突然笑い出したけど、私には何が面白いのかさっぱりわからないよ。
「マクシミリアン将軍、ヴォーグ王によろしく伝えておいてくれ」
「お会いになられないのですか?」
あれ、マクシミリアンがお姉さんに敬語を使って話をしているよ。 父様の事も知っているみたいだし、2人は知り合いだったのかな?
「こんな腹を見せたくはないからな。
それじゃあ私は行くよ。
プリンセスララノア、今後は十分気をつけるんだ」
「うん、わかったよ。 お姉さんも助けてくれてありがとう」
「結果的に私も助けられたのだからおあいこだ」
お姉さんが去るのを見た後、マクシミリアンの馬に乗せられて王宮に戻ると父様と母様が外で待っていたの。
「父様ゴメンなさい!」
父様と母様に怒られると思ったけど、父様が駆け寄ってきて優しく抱きしめてくれたんだ。
「無事でよかった。 心配したんだぞ」
「ゴメンなさい父様〜」
父様に抱きしめられてホッとしたのか涙が止まらなくなって、気がついたらそのまま眠っちゃったんだ。
「そうか、シリウスがララを助けてくれたのか」
「はい、ですがアジトではなく路地裏でしたので、姫君がなんらかの方法でアジトを逃げ出したのだろうと思います」
「なんらかのってララが自力で逃げ出したっていうのか?」
「はい……としか。
それと賊の1人が所持していたのでこちらもお返ししておきます」
「ララのティアラか。
それにしてもあいつは一体どんな手品を使ったっていうんだか……婆様はあれ以来姿見せないから違うよな」
「なんにせよご無事でよかったですな」
「ああ、マクシミリアンもよくやってくれた。 後ほどシリウスにも何か礼をしないといけないな」
「ハッ!
それと今回の一件で賊が王都に潜入しているのは間違いありますまい。 早急に対策を練らねばいけませんな」
「ああそうだな……」
翌朝目が覚めるといつの間にかベッドで寝ていて、枕元には私のティアラも置いてあったんだ。




