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白馬の王子様

 朝食を済ませた私たちはヴォルフ領主の屋敷を逃げ出すように出て、次の町ヴェニデへと旅路についたわ。



「最悪だったわ」


「ありえないよね」


「わっちの指が汚れんした」


 ブリーズお姉様とクローロテースと一緒に愚痴をこぼしながら街道を歩く私たちを、フィンとアルバロは訳も分からないようだけど、触らぬ神になんちゃらとばかりに理由も尋ねず大人しく黙ってついてきていて、サーラはこういう時は我関せずとでも言わんばかりに黙々と歩くだけ。



「それでフィン、次の町まではどれぐらいかかるのよ」


「え、いや、自分はここから先は詳しく無いんで……アルバロどれぐらいかかるんだ?」


「えっとヴォルフからヴェニデまでは一番距離があって、道中も危険な道のりで野盗や……その、魔物との遭遇もこの国の中では一番多い場所になります。 そのせいか、宿場町も少ないので野宿は必須になると思います」


 魔物というところでアルバロはクローロテースを気遣って言いにくそうだったけど、クローロテースはあまり気にしていないように見えるわ。 そして何より……


 という事は道端で眠るという事かしら?



「姫様には申し訳ないですが、野宿も覚悟して……」


「草むらに横になって、夜空を見上げながら眠るなんて素敵じゃない! 私一度経験してみたかったのよね」


 ロマンチックだよね?

 嬉しさが込み上げてきて、先程のことを忘れてくるくるまわってみせるわ。



「ねぇララノア、さっきアルバロが野盗や魔物も出るって言ってたの聞いていた?」


 も、もちろん聞いていたわよ?

 クローロテースったら意地悪なんだから! あれ? でもクローロテース、自分から魔物って言ったわよね。



「下手に草むらに横になんてなると虫に刺されたりして大変な事になりますからね?」


 そこへサーラまで嫌なことを言い出して、私の一度経験して見たかったことが音を立てて崩れていくわ。





 そんなこんなでアルバロが言っていたほど道中は危険もなく、野営も見張りを買って出てくれたフィンとアルバロのおかげでなんの問題もなく、更にはアルバロの冒険者の知恵のおかげで虫も寄り付く事なく、ヴェニデの町に夕方には着く予定の日になったわ。



「やっとベッドで寝られるのね」


 喜ぶ私にみんなが笑ってくるの。



「ララノアが野営を楽しんだのって結局初日だけだったよね?」


「だって起きたら体痛いんだもん! クローロテースは平気だったの?」


 クローロテースは海では大きな貝殻に寝ていたから平気だったみたい。 むしろ人種の寝床は柔らかすぎるぐらいなのだそうよ。





「それで次の町の領主ってどんな人なのよ?」


 またあんな領主の息子みたいなのが居たら、宿屋で泊まった方がいいわ。



「次の町の領主は……」


 フィンが言おうとした時、ヴェニデの町の方角から何頭もの馬を走らせる音がこちらに近づいてきて、その姿が見えて来るとフィンとアルバロが私の前に立って身構え出したわ。



「姫様は下がっていてください」




 で……



「そちらにおられるのはプリンセス ララノアで間違いありませんか?」


 白馬に乗って颯爽と現れたこの男性、どうやら部下を引き連れて私の事を迎えに来たヴェニデの領主の息子さんらしいわ。

 容姿端麗でまるで王子様のようなその出で立ちに、クローロテースも目を奪われていたわ。

 もちろんフィンも容姿端麗だけど、どちらかといえば男らしい感じで、ヴェニデの領主の息子は中性的な綺麗な男の人かしら?



「わ、私がララノアです」


「クローロテースよ」


 私の確認をしたのにクローロテースも名乗り出したわ。 目をキラキラさせながらね。


 するとヴェニデの領主の息子は白馬から素早く下馬をして、片膝をついて頭を下げてきたわ。



「私はヴェニデ領主エーリヒ・ヘイへの子、ジークフリートと申します」


 そのあまりに礼儀正しく容姿端麗で流れるような動作に……うん、思わず見惚れちゃったわ。




 用意周到にジークフリートが用意してきた馬車に乗って、私たちはヴェニデの町に昼過ぎ頃には到着したわ。


 ヴェニデの町に着くなりそのままヴェニデ領主の屋敷に連れて行かれた私たちは、領主のエーリヒに会ってそこで一泊する事になるの。



「これは姫君よくおいでくださいました。 ちとばかり身体が不自由なものでこの様な形で申し訳ありません」


「いいえ、わざわざの出迎えまで出してくれてありがとう。 助かったわエーリヒ」


 そういうヴェニデ領主のエーリヒはベッドに横たわっていて、先の大戦で重傷を負って自力では立てないのだそうよ。 治療の魔法も時間が経ちすぎていたため治せなくなってしまったらしいわ。

 そしてヴォルフの領主とは違って対応も丁寧だけれど、どこか武人のように見えたと思ったら、マクシミリアン=ミュラーとは友人関係だったの。



「それで君がマクシミリアンの息子か」


「はい! フィンと言います。 エーリヒ様の事は親父……いえ、父から伺っています」


「ふむ、どうしてなかなか立派な若者ではないか、なぁジークフリートよ」


「はい、後ほど是非手合わせをお願いしたいと思います」


 ヴォルフでの事があって不安だったけどほっと一安心したわ。



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