天賦の才
6歳になったある日、アルナイル先生と勉強が終わった私は、父様に呼ばれて連れて行かれるまま一緒に王宮のお庭に出ると、母様もそこで待っていたの。
「父様、母様、どうしたの?」
「今日はね、そろそろララが何が得意か調べようと思ったんだよ」
得意ってなんの事だろう? 駆けっこの事とかかな?
なんて思っていたら父様が木剣を渡してくるからビックリしちゃった。
「いいかいララ、マルボロ王家は代々剣術が優れている。 ララもいずれは女王になるんだし、きっと素質はあると思うから、父様に木剣で殴ってきてごらん」
父様も木剣を構えて和かにおいでって言うんだけど、木剣なんて初めて持つのに上手になんか扱えるわけないよね。
「母様私できない、無理だよ」
「大丈夫……ララは父様と英雄マルス様の血を受け継いでいるのよ。 自信を持って遊びだと思って気軽に父様に向かってごらんなさい……」
母様にまで言われちゃったらやるしかないのかな。 よーし、なら一生懸命やらなきゃダメだよね。
「じゃあ、父様行くよ!」
「よーし、いいぞ! 来いララ!」
あれ、どうしたんだろう? 父様が私の振った木剣を受けて倒れちゃった。 ワザと……だよね?
「ねぇ父様、父様大丈夫!?」
「あなた! ヴォーグ様!」
「くぅおおぉぉぉお、イテテテテテテテテテテテテ……っと、大丈夫、大丈夫だ。 なんともないぞララ、父様はちょっと漲っただけだ」
よかったぁ。 でもどうしたんだろう? 父様と母様がヒソヒソ話し始めちゃったよ。 それと漲ったってなんだろう?
その日はそれで終わりになっちゃって、暇になった私は王宮のお庭をお散歩することにしたんだ。
「ねぇ父様大丈夫かな?」
“死んじゃいないんだしララっちがそこまで心配することないさ”
トカゲの姿で私の肩に乗っている火蜥蜴が私の事を慰めてくれるよ。
「うんー、そうなんだけどね、でもやっぱり心配だよ」
“よーし、じゃあ俺っちが見てあげるから、もう一度やってみるといいさぁ”
「嫌だよ、火蜥蜴まで怪我したら私悲しいもん」
“チッチッチッ、俺っちら精霊は魔法の武器じゃなきゃ怪我しないから平気だぜ! 安心してララっちは俺っちに向かってバッチコーイ”
どうしよう。 いくら大丈夫っていってもお友達を殴るなんてできないよ。
迷っている間におじさんの姿になった火蜥蜴が、木剣を手渡してきてヘイカモンモンってやってる。
“もしかしたら俺っちが何かわかるかもしれない。 ……だから遠慮しないでやっちまってくれていいんだぜ?”
「うん、じゃあ火蜥蜴ゴメンね」
私が木剣を掴んで構えて火蜥蜴に振りかかったら、ワァオって叫んで真っ二つになっちゃったよ! どうしよう!?
「大丈夫、火蜥蜴!」
“びっくらしたけどへっちゃらさぁ”
元どおりくっついてくれてよかったぁ。
話を聞いてみたらなんかララっち凄いって連呼してるの。
“ララっちどこかで習ったこと……あるわきゃないよなぁ?”
「うん、今日が初めてだよ。 ただなんていうのかな? どうやって使うのかわかる気がする……なんでだろう?」
火蜥蜴が何かを言おうとしたところで、母様の呼ぶ声が聞こえて慌ててトカゲの姿に戻っちゃった。
私と喋れるのも内緒だからね。
「ララ、ここにいたのね……
父様が訓練場まで来るようにって、すぐに行きなさい……」
「うん、わかったよ母様」
「それと火蜥蜴は連れて行けないから……母様が預かっておくわ」
うーん、仕方がないよね。
「それじゃあ母様、火蜥蜴をよろしくね、行ってくるね」
私は母様に火蜥蜴を渡して訓練場に向かったんだ。
「お久しぶり……最上位精霊のイフリート」
“やっぱバレてたぁ? だよねだよねだよねー”
「一応……ドルイドでもありますからね」
“最後にあった頃と随分変わったんじゃないかい? 立場とかママになったからってとこかねぇ?”
「そうね……それよりララノアとはどうして?」
“俺っちにもよくわかんないんだけどよ、あの子、うろついてた俺っちのこと見えちゃったんだわさ。
そんでもって傷心だった俺っちにあの子、友達になってくれるなんていうもんだからヨォ。
け、い、や、く、しちまったぁ! ひゃっほ〜ぅ!”
「我が子ながら最上位精霊と契約だなんて羨ましい……
でもララはドルイドじゃないのに良かったのかしら?」
“無理なら契約はできないさぁ”
「そう……ララの事……お願いします」
“んーそいつは問題だわさ。 俺っちどっちかといえばオフェンスタイプなんだよなぁ。
ま、出来るだけ守ってみせるから……
大船に乗ったつもりでいな”
そんな事を知らない私は、父様の待つ訓練場にたどり着いたの。 そうしたら苦手なマクシミリアンも一緒にいたから驚いちゃった。
「よーしララ来たな」
「父様ここで何をするの?」
そしたらマクシミリアンが父様の代わりに答えてきたの。
「陛下にお聞きしまして、少しばかり姫君の事を調べたいと思いましてな」
「調べる? 何を?」
「口で説明するより実際にやった方が早いと思いますので、まずはこれを持っていただけますかな?」
そう言ってマクシミリアンは私に本物の剣を脇に挟んで渡そうとしてきたの。 父様を見たら頷いてるから仕方がなく引き抜こうと思ったんだけど、重くて落っことしそうになっちゃった。
「父様重いよ、私には無理だよ」
「うーん、やはり真剣はまだ無理かなぁ」
「言ってることが全然わかんないよ! 私まだ6歳だし女の子なんだよ!?」
「年齢は関係ありませんな、長剣が無理でしたら、小剣で試しましょう」
そう言ってマクシミリアンは今度は脇に挟んだ小剣を持たせようとしてくるんだよ。
「もうっ! なんで私にこんなもの持たせようとするの! 別に今じゃなくてもっと大きくなってからでもいいじゃない」
怒ってそっぽを向いたら父様とマクシミリアンが困ったような顔をしていたんだけど知らないもん!
「じゃあララ、練習用の木剣ならいいかい? 今後は嫌でも剣の扱いは慣れておかないといけないんだよ」
ふーんだ!
「じゃあ言うこと聞いてくれたら、王都に遊びに連れて行ってあげよう」
「本当!?」
父様とマクシミリアンがにんまりしながらアイコンタクトしていたみたいだったけれど、私は生まれてから一度も王宮から出たことがなかったから浮かれちゃってて全然気がつかなかったんだ。
「じゃあまずは木剣からだよ」
「うん!」
父様とマクシミリアンに言われた通り、的に木剣を振ってみせたら2人共驚いた顔をしていたけど、まだ木剣なんて振ったのこれで3度目なんだから下手なのは仕方ないと思うんだけどなぁ?
「そ、それでは……」
マクシミリアンが今度はYの時の木にゴムが止めてあるのと、石っころを渡してきたの。
「これであの的に当ててみてください」
「うん、わかった。 やってみるね」
狙いを定めてピシュっと飛ばして命中させて振り返ると、また父様とマクシミリアンが顔を見合わせていたの。
「ララ、スリングショットの使い方なんて誰かに教わったことがあるのかい?」
「スリングショット? なぁにそれ」
「姫君に今某が渡したものです」
へぇ〜、これスリングショットって言うんだ。
そのあとも色々なものを渡されて的に当てるのを繰り返したんだ。
「マクシミリアン!」
「陛下!」
なんだか2人が見つめ合っていてちょっぴり怖いな……
もう飽きてきたからコッソリ抜け出そうとしたんだけど、父様に呼び止められちゃった。
「ララ喜べ、お前には天賦の才があるぞ!」
「ふーん」
「それだけか!?」
「なんと!?」
よくわからないけれど、私には天賦の才っていうのがあるんだって。
母様にもあとで凄いわねって褒められたけど何がそんなに凄いのかな?
でもこれで父様と王都にお出掛けできるんだから楽しみ、やったね!




