人魚との交友
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「サーラ! よかった無事だったのね!」
「ララは私の事は嫌っているとばかり思っていましたが?」
「サーラは怖いけど、嫌いなんかじゃないわよ!」
泣きながら抱きついた私をサーラは優しく微笑みながら抱きしめてくれるの。
そして心配して待っていた私たちに、トリートーンが謝罪と感謝を伝えたいって言ってきたらしいわ。
「良い機会だ、マルボロ王国の東は全て海に面しているから、人魚とお近づきになっておけば心強い味方になってくれるかもしれないな」
お父様が笑いながら浜辺に向かいだして、その後を私たちもついていくのだけど、私はなぜかこの時サーラにずっとしがみついたままだったわ。
『先ほどは大変失礼をした、心から謝罪する』
トリートーンや他の人魚たちが頭を下げてくるの。
当然言葉がわからないのだけど、謝っているのはわかるわ。
それに気がついたトリートーンは、私たちと同じ言葉を使って話し始めるわ。
「済まぬが、儂以外は共通語と言われる人の言葉は話せぬゆえ許してほしい」
お父様もやっと言葉がわかるようになって、トリートーンにわたしたちの自己紹介を始めるわ。
「俺はこの一帯を治めているマルボロ王国の国王ヴォーグだ。 そして王妃のベネトナシュ、娘のララノア。
ララノアの義理の姉で歌姫のブリーズ=アルジャントリー、最後に……」
そこでお父様が口をつぐむと代わりにサーラが答えるの。
「マルボロ王国次期女王となられるララノア様の付き人をしているサーラと申します」
トリートーンは紹介を受けて、今度は自身の紹介を始めるわ。
「儂はトリートーン、この一帯の海を支配している海神だ。 そしてコイツは儂の7人いる娘の末娘のクローロテース。
この度は娘を助けてくれたというのに、本当に済まないことをした」
お父様とトリートーンはしばらく2人だけで国交の話を始めてたみたいなんだけど、人魚との交友は王族とそのごく一部とだけ互いにしていこうとなったみたい。
こうなってくると今度は言葉がわからないクローロテースがトリートーンに色々と聞き出し始めるの。
「まるでララのようですね」
言葉を理解できるサーラが苦笑いを浮かべながら私の事を見てくるわ。
『私、外の世界を見てみたいの。 お願いパパ』
『ダメだ! いくら交友を結んだとはいえお前を人の住む町になど行かせられん!』
2人の喋っている会話がわかるサーラとお母様は話を聞きながら、どうなるか心配そうに事の成り行きを見守っているようだわ。
『どうしてパパはいつもそうやって私たちを束縛するの!』
『全てお前たちを守るためなのだ』
『パパがそうやって束縛しても私は何度だって抜け出して見せるんだから!』
終わりが見えない親子喧嘩に飽き始めた頃、サーラがクローロテースとトリートーンのそばまで近づいて2人の会話に加わるわ。
『拉致があかない。 クローロテース、君は人の町を見たいというが、その足でどうするつもりだ? それとトリートーン、人魚はどうか知らないが人は一度興味を持った事をそう簡単に諦められるものじゃないぞ』
サーラが何かを言うと2人は急に黙り込んだわ。
『確かに……世界の守護者の言う通りかもしれんな』
『パパ!? それじゃあ!』
でもそこでトリートーンは白くたっぷりとしたヒゲを撫でながら悪い顔をサーラに向けてくるわ。
『世界の守護者よ、お前が言い出したのだ。 当然クローロテースをしっかりと守ってもらうからな』
それでもって今度はサーラがしまったと言わんばかりの嫌そうな顔を見せたわ。
トリートーンが三叉の矛を振ると、クローロテースの下半身が人の足に変わっていって、一糸纏わぬ人の姿になると自分の尾ひれだった足を見ながら嬉しそうに立ち上がろうとするのだけど、そんな様子を見ようとするお父様の目をお母様が手で覆っていたわ……
サーラは鞄からローブを取り出してクローロテースに着るように渡すんだけど、なぜか見ないように顔を背けて手渡しているの。
「ヴォーグ王よ、済まぬがクローロテースの事を頼む」
「頼まれるのは構わないんだが、一体いつまで滞在するつもりだ?」
すると驚いた顔をしながらも、クローロテースが共通語で答えてくるわ。
「パパがが許してくれるのなら、このままずっと地上で私暮らしていきたい」
トリートーンが悲しげな表情を見せてきたけれど、それがクローロテースが望むことならって言おうとするのだけど、サーラがそれは無理だって止めるわ。
「人魚の世界は知らないけど、人の世界は生きるためにはお金などが必要になってきます。 人の世界を全く知らないクローロテースが生きていけるとは思いません」
「そうだな、サーラの言う通り賓客としてなら俺も招けるが、残りの余生となると俺たちも人魚のことはよくわからないし、クローロテースは女だ。 結婚とかも考えると厳しいと思う」
それを聞いてトリートーンもなるほどって頷いて、とりあえず1年だけとお父様に頼むとそれならって引き受けたわ。
クローロテースもそれで納得したみたい。 話が決まるとトリートーンたちは海に帰って行こうとするのだけど……
「人の世界の金というのはわからぬが、娘が世話になる間の礼としてこんなものはどうか?」
そう言って取り出して見せたのは、とんでもない大きさの真珠よ!
その大きさはお母様が耳にピアスとしてつけているものとは比べ物にならないほどで、王冠の中央につけても十分に目立つほどの大きさはあるわ。
「コイツは凄いな。 間違いなく国宝級だ」
お父様の驚く顔に十分なものだったと判断したトリートーンは手を振って海へ消えていったの。
家族旅行は続けられたのだけど、食事は魚介類は使わない事になったのは言うまでもないわよね。 それでも初めての家族旅行はとても楽しく過ごせたわ。
どうやらセバスチャンはいないようですね。
クローロテースはララノアに多少似ているので、気をつけないと間違われてしまいそう……




