海神トリートーン
いつも読んでくれてありがとうございます。
たくさんの人魚が武器を構えて現れると、私たちのところにいた人魚が慌てて何かを訴えだしたわ。
『パパやめて! この人たちは私を助けてくれた恩人よ』
『バカモノ! 人種など信用するな! 全てそうやってお前を言葉たくみに陥れる算段だ』
うん、私にはさっぱりわからないや。
『悪いが俺たちはその子に興味もないし無関係だ。 このまま帰らせてもらいたいが構わないか?』
サーラがなんか話に入ったみたい。 何を言ってるのかさっぱりわからないけれど、王冠をかぶった人魚とサーラが睨み合いになっているわ。
『我々の姿を見てしまった以上、おとなしく返すわけにはいかん』
『パパ!!』
『わかっておくれクローロテース、これもお前のためを思ってのことなのだ』
見られたから殺すってまるで暗殺者的発想よね。 もちろん私には何を言っているのかわからないわよ?
『どうあっても引く気はないのか?』
『くどい!』
『パパ! やめて!』
王冠をかぶった人魚が片腕を上げると一斉に人魚たちがクロスボウを射撃準備に入ったわ。
「ヴォーグ! みんなを連れて下がれ! アルは撃ち漏らしがあったら頼んだ!」
「わかった!」
「わかりんした!」
え!? サーラ?
お母様に手を引っ張られてサーラ1人を残して離されてしまったわ。
「お母様! なんで? どうして? サーラが!」
「あの人なら大丈夫……絶対に」
お母様の言っていることがわからず、私はお母様に手を引っ張られながらサーラの名前を叫ぶしかなかったの。
1人残ったサーラは素早く鞄から杖を取り出して変わった呼吸をして身構えると、四方八方から無数に迫るクロスボウの矢をその場からほとんど動くことなく、まるで矢がどこに飛んでくるのかがわかっているかのように最小限の動きで全て叩き落としちゃったわ。
『ほぉ、なかなかやるではないか? ならば儂の……トリートーンの持つ三叉の矛で相手をしてやろう』
『やはり海神トリートーンか。 海の神と会うのはこれが初めてだな』
そこでサーラがわけのわからないことを言い出したの。
『ほぉ、儂が海神と知っているか? 貴様一体何者よ』
そして私の知らないサーラの秘密が明かされるの。
『俺の名はサハラ、この世界の創造神の執行者にして世界の守護者だ』
これにはトリートーンも驚いた顔をみせたわ。 でもすぐに疑わしいとでも言わんばかりの顔をするの。
『お前が世界の守護者だと? フン、それを証明できるのか?』
頭を掻きながらサーラは呆れた顔を浮かべてトリートーンを見つめると、無いなって答えたわ。
サーラに向かって矢が放たれる前に浜辺から離れた私たちは、サーラや人魚たちの姿が見えなくなる近くの林まで移動して一息ついているところなのだけど、サーラ1人を残して逃げ出したという事実に納得がいかないでお父様に問いただすわ。
「お父様なんで! なんでサーラを置き去りになんかしたの!」
お父様とお母様が気まずそうな顔を見合わせているけど何も教えてくれないから、馬車に繋がれたグリフィンの紐を外してサーラを助けに行こうとするのだけど、その手をブリーズお姉様が止めて首を振ってきたの。
「ブリーズお姉様までどうして? サーラとお友達じゃないの?」
「わっちを信じてくんなまし、あの人は大丈夫でありんすぇ。 それよりララちゃんが今ここであの人のところへ行く方が危ないんでありす」
まさかブリーズお姉様までそんな事を言うとは思いにもよらなかった私は、訳が分からなくなって気がついたら目から涙が溢れていたの。
「ララ、確かに俺たちはここまで逃げてきたけど、見捨てたわけじゃないのはここで待っているのでわかってもらえないか?」
「わかんない! わからないよ! もしいつまで待っててもサーラが戻ってこなかったらどうするのよ!」
お父様がお母様を見て困った顔を見せるけど、なんでそんなにサーラを心配しないのか私にはわからないわ。
「いいかいララ、今はまだ話せないけど、この事はララが15歳の戴冠式を迎えたら必ず話す。 だから今は俺たちを信じてくれないか?」
泣き腫らした顔でお父様とお母様、ブリーズお姉様を順に見ていくと3人共頷いてくるの。
そしてサーラのほうなのだけど……
『逆に問う。 どうしたら信じてもらえるんだ? ここに創造神でも連れて来いって言うのなら無理だぞ」
『そのような恐れ多い事は言わぬ』
とは言ったものの確かに世界の守護者を証明する方法なんてトリートーンにもわからなかったりするわ。
フームと考え出すとトリートーンは世界の守護者であれば、何か創造神に賜ったものがあるかを尋ねてきたわ。
『ああ、それならこの指輪と杖が俺のためだけに創造してくれたものだそうだ』
『杖を儂に貸してみせよ』
『俺しか持てないが良いのか?』
なんの警戒もせず海の中にサーラは入っていって、トリートーンに杖を立てて渡そうとしてしまうわ。
トリートーンは含み笑いをしながら杖をひったくったのだけれど、次の瞬間、杖の重さに身体が押しつぶされてしまって必死にもがき始めたわ。
サーラが杖を軽々と片手で拾い上げて見せたときにトリートーンにそっとつぶやいたわ。
『これ以上疑うのであれば……お前の断罪は済んでいる。 贖罪して消滅させる事もできるぞ』
するとトリートーンは起き上がると同時にサーラを敬い出したわ。
『まさにその杖は贖罪の杖です、世界の守護者大変な無礼をどうかお許しください』
サーラは事のあらましをクローロテースと一緒にトリートーンに話して、やっと納得させたわ。 しっかりと自身が世界の守護者だというのは私たちには内密にしてもらうように言って……




