人魚
いつも読んでくれてありがとうございます。
お母様が人魚に何かを話しかけると、人魚の女の子も言葉が通じて落ち着いたみたいで、いろいろと話し始めたみたい。
「……この子がララにゴメンなさいって」
「凄い! お母様話ができるの?」
「……魔法には全ての言葉を理解する魔法があるのよ」
そういえばアルナイル先生にも少しだけ魔法のこと教わった時にきいたことがあったかしら。
とにかくお母様は人魚の女の子と話を一通りしてから、状況を教えてくれたわ。
それによると、地上の世界に憧れた人魚の女の子が、この浜辺の方に来た時にサメに襲われたらしいんだって。
「なんか何処かで聞いたような話ですね」
そうしたらサーラがそんな事を呟いていたけど、そんな話あったかしら?
お母様が通訳をしていろいろと話をしていくと、海の世界には人魚の世界があってそこで暮らしているらしいわ。
「それで実際に地上に来てどうだったって言ってるの、お母様?」
「……えっと、友達がたくさん捕まえられているって……」
そういってお母様がお父様の持つ網に入ったものを指差してきたわ。
「う!? そ、そうか、人魚からすればコレは仲間になるのか……
そんな事を聞かされるとさすがに食う気になれないな」
「……今回は諦めましょう、あなた」
「だな」
お父様はそう言うと網に入っている魚や貝なんかを海に返しに行ったわ。
その間にサーラが質問をお母様にお願いしているのだけど、「あなたはお姫様ですか?」だって。 おかしな質問に思わず吹き出しそうになるんだけど、お母様から帰ってきた言葉は驚くことに「そうです」だったの!
「……7人の末娘の末姫だそうですけど、サーラは何か知っているんですか?」
お母様が尋ねるとサーラが眉間にしわを寄せて、ブツブツ何か言ったと思うと、網に入った魚や貝を放流して戻ってこようとしているお父様に急いでここから離れる事を提案してきたわ。
「俺は今いなかったからよくわからないんだが、一体慌ててどうしたんだサーラ」
「あの子の父親が襲いかかってくるかもしれません」
「別に何もしてないのにか?」
サーラがチラッと私のことを見てから、お父様をもう一度見ると諦め顔でバーベキューのセットをかたずけ出したのだけど、お父様もお母様もなんでサーラの言うことは素直に聞き入れるんだろう?
そしてサーラはお母様にもその人魚に海に帰るように伝えてもらっているの。
「ねぇサーラ、どうしてそんなに慌ててかたずけをして、人魚にも帰ってもらおうとしているの?」
お父様がかたずけをブリーズお姉様としていて、お母様が人魚に話をしているのを確認すると、私に理由を教えてくれたわ。
「どういった理由であろうと、一国の姫が見知らぬ、しかも異種族の手にいるとなれば奪い返そうとしにくる可能性がなくもありません。
言葉が王妃様しかわからない以上、そうなると最悪戦いにならないとも限りませんからね」
「そんな……」
人魚の方を見るとお母様に首を振っていたの。
「……嫌だって言っているのだけど、サーラ、どうしましょう?」
すると驚いたことにサーラが魔法を使ってお母様のように人魚の言葉を話し始めたわ。
『君の父親は君がここで俺たちといることなんて知らないんだよな?』
サーラが何か話しかけると人魚は驚いた顔を見せたけれど、首を振っていたわ。
『なら悪いが俺たちがこの場から去ってから、君の好きにしてもらえないか?』
『なぜ?』
『もし君の父親に勘違いでもされでもしたら、俺たちに攻撃をしてきかねないだろう。 そうなれば俺たちも身を守るために戦わなくちゃならなくなる』
サーラと人魚が何を話しているのかはわからないけど、人魚が悲しそうな顔をしているのは見て取れたわ。
「サーラが何を言ったのかわからないけど、悲しませるようなことを言ったらダメだと思うの」
そうしたらお母様が私の方を向いて首を振ってきたの。 それはつまりサーラは間違ったこと言っていないということなのだろうけど、私はそれでも許せなかったわ。
だからサーラに言い返そうとしたんだけど、当のサーラは海の方を向いて「遅かった」って私にはわからないことをつぶやいていたの。
「ヴォーグ様、急いで撤退かそれとも会話を試すか決めてください」
まだかたずけを終わっていないお父様は、サーラに言われて一瞬だけ考え込んでから答えたの。
「逃げれば交渉の余地もなくなる。 ここは会話を試そう」
言い終わると同時に海面に次々と何人もの人の姿が浮かび上がったわ。 もちろんそれが全員、人魚という事はいうまでもないわよね。
そしてそのたくさんの人魚たちは手にクロスボウを私たちに向けて構えていて、その中に一際大きく威厳のあるたっぷりと白ひげをたくわえて王冠を被って三叉の矛を持った人魚が私たちをギロリと見回してきたの。
この時になって私はサーラが慌てた理由がわかって、私の愚かさを思い知ることになったの。
この人魚姫の名前を予想できた方もいるかもしれないですね。
もっとも名前は変えていますし、設定も私の世界観に合うように変えていますので、似せているだけになりますが……




