逃げてきたよ
いつも読んでくれてありがとうございます。
フィンとアルバロは私が攫われたであろう場所に向かったのだけど、ずっと追いかけていたわけじゃないからどうにもならなくなっていたの。
「クソォどうする……」
「落ち着いてフィン、誘拐ならすぐに殺されたりはしないし、要求を必ずしてくるから」
「それなら一度王宮に戻るべきか?」
「そうだね、それにもし猫の女獣人がマクシミリアン将軍の部下というのが嘘だったら、プリンセス救出が更に遅れるかもしれないよ」
そういうわけでフィンとアルバロは急いで王宮に戻ることにしたみたいだわ。
気になるサーラなんだけど、実は冒険者ギルドには行かないで私の事を追跡していたみたいだったの。
もちろんサーラのままではなくて、変身を解いてサハラとしてね。
最初はやっぱり猫の女獣人を怪しんでいたみたいなのだけど、私が攫われた一部始終を見て猫の女獣人は後回しにすることにして、私の後を追ってきたみたいなのだけれど……
「これは俺が出たら戦いは必至になるな。
さて、ララはこのピンチをどう切り抜けてくるかな?」
兎の女獣人の特性からサーラも下手に接近できないみたいで、私の生命に危険が迫るまでは静観することにしたようだわ。
それでもって私はというと、グリフィンとの空中からの散歩で見た風景とサーラとの地上からの外周を見たおかげで、おおよその位置が把握できたの。
悔しいけどサーラの言った通り、空からだけだったら今いる場所がどの辺りかなんてわからなかったわ。
このすぐ近くには下に川が流れる谷がある場所。 私はシャムシールを抜き放って道を切り開いて崖のある方めがけて走りだしたわ。
私の突然の行動に遅れをとった20人ほどの野盗たちが一斉に追いかけてこようとしたんだけど、兎の女獣人がそれを止めたの。
「この先は谷さ! すぐに捕まえられるから慌てる必要なんてないよ!」
崖の側までたどり着くと、野盗たちはニヤニヤしながら左右に広がって私に迫ってきたわ。
「残念だったねぇ、世間知らずだった事を後悔しな!」
兎の女獣人が一番後から来て、私に勝ち誇ったように言ってきたわ。 でも残念なのはあなたたちよ!
「それはどうかしらね? 私を甘く見たあなたたちの負けよ!」
そう言って私は崖から飛び降りたわ。
もちろん自殺なんかじゃなくて、いつも王都に行くときに、鷲の目を持つグリフィンが遥か遠くから私を捕捉している事を知っていたからなのよ。
だから今もきっと駆けつけられる距離で見ているはずで、私の指示を待っているはず!
「グリフィン! 来てーー!」
ピーーーーーーッ!
甲高い鳴き声とともにものすごい速さでグリフィンが飛んできて、私を背中で受け止めてくれる。 そのまま上昇して行って、下から喚く野盗たちにあっかんべーをしてから王宮まで悠々と戻っていったの。
その頃やっとマクシミリアンの元にたどり着いた猫の女獣人なんだけど、王都のコンサート会場から王宮までの距離はかなりあって、マクシミリアンの元にたどり着いたころは既に私は王宮目指して空を移動中の時だったわ。
「将軍! 大変ニャ! お姫様が誘拐されたニャ!」
「なんだと! お前は一体何をしていたのだ」
そこで私を誘拐した相手が猫の女獣人の手を切り刻んだ、兎の女獣人だった事を説明して、恐怖でいっぱいだった事を必死に話していたわ。
マクシミリアンも急いで兵を率いる準備に取り掛かろうと王宮の庭に出たところで私がグリフィンと戻ってきたの。
「お、王女!? 攫われたと聞きましたが……」
「うん、逃げてきたよ」
ポカーンとした顔でマクシミリアンに見られちゃった、えへっ。
そこへ……
「お、親父ーー! 大変だ、お姫様が誘拐され……た……ない」
「フィン、プリンセス無事みたいだね……」
みんな心配してくれたのね。 ありがとう。
ここからが大変で、マクシミリアンは兵を率いて王都周辺の一斉捜索が始まったわ。 それは3日間寝ずの捜索だったにも関わらず、兎の女獣人たちの姿は忽然と姿を消したらしいわ。
そしてサーラはというと……
「冒険者ギルドに行くって言っていたわよね? どこに行ってたのかしら?」
さすがのサーラも今回は苦笑いを浮かべて、フードを被った人物を突き出して逃げるように立ち去ってしまったわ。
よくわからないけど、このフードを被った人物が謎を解くカギとなるはずよね。
「今日から3日間お世話になりんす、プリンセス」
「ブ、ブリーズ!?」
驚いたことに歌姫ことブリーズ=アルジャントリーをサーラはまた連れてきて、今日から3日間ずっと一緒にいてくれるんだって。 やったね。
でもなんか騙された気分よね……
ちなみにフィンはマクシミリアンに連れられて3日間の捜索に強制的に手伝わされたそうよ。
「なんで僕まで!?」
「貴様らが王女を守れなかった罰だ!」
アルバロも連帯責任だと捜索に連れ出されていたわ。
「ならサーラさんはどうしたんだよ、親父!」
そしてフィンに言われると遠い目をしながら、サーラは付き人だから無理に決まっているだろうと答えたそうよ。
「貴様、付き人兼護衛の任を果たせなかった罰は受けてもら……」
「ミュラー夫人はコンサートのお話は好きでしたか?」
「……しっかり付き人をやるように!」
「かしこまりました」
……さすがサーラね。




