精霊との出会い
5歳になって少しだけおませさんになった私は、このころから王宮を1人で遊び歩くようになったの。
それじゃあここからは5歳の私にバトンタッチするね。
ある日いつものようにアルナイル先生のお勉強が終わって、王宮をお散歩していると、ふわふわぁ?、ぽわぽわぁって何か見えたからついていったら、ヘンテコなおじさんが現れたんだ。
“おやおやおやー? 俺っちもしかして見えちゃってる?”
「ごめんね、私あなたのこと見えたらいけなかったのかな?」
そのおじさんは私が声をかけたら、口をアングリ開けて白目むいちゃって意識が飛んじゃったみたいだよ。
“よぉよぉよぉ、お嬢ちゃんもしかしてドルイドだったりしちゃうわけ?”
と思っていたら今度は突然近くまで来て耳元で囁いてきたからびっくりしたんだけど、妙に明るいテンションだしなんだか悪い人じゃなさそう?
「ドルイド? なぁにそれ、私ちょっとわからないな」
私がそう答えると、なんだかいかにも考えているポーズをとって困ってるみたいなの。
父様がいつも言っていたよね。困っている人がいたら助けてあげないとダメだよって。
「ねぇおじさん、何か困ったことがあるのかな? もしも私に何かお手伝いできるなら手伝うよ!」
そうしたら今度は “なんていい子なんだぁぁ” って涙をボロボロこぼし始めちゃった。 やっぱり何か困ったことがあったんだね。
難しい言葉が多くてよくわからなかったけど、おじさんは前に契約というのをしていた人と別れて、途方に暮れながら当てのない旅をしていたみたいなんだけど、飽きてする事もなくなって懐かしむようにここに戻ってみたんだって。
「ふーん、そうなんだね。
ねぇ、ところで契約ってなぁに?」
“そうだなぁ、俺っちと友達になるってことかなぁ”
「そうなんだ、じゃあ私がお友達になるよ。 だからもう悲しまないで?」
“わお! マジで!マジスカ? じゃあ、契約しちゃうよぉ〜。
……でも俺っちの事は誰にも喋っちゃダメだぜ。 もしバレたら命狙われちまうからよ!”
「うん! おじさんの言ってること私よくわからないけど、みんなには内緒のお友達っていうことだよね。
よろしくね、おじ……えっとお友達になったんだからおじさんじゃおかしいよね?」
そうしたらおじさん、ビシッとポーズを決めて名前を教えてくれたよ。
“イフリーーート! そう、それが俺っちの名前さぁぁぁぁ”
「イフリート? うん、よろしくね、イフリート。 でもその姿のままだとちょっと困っちゃうな」
だってイフリートは上半身裸の赤黒い肌をした男の人で、父様がそんなイフリートを見たらきっとビックリさせちゃうもんね。
そうしたらイフリートが手のひらサイズのずんぐりした赤いトカゲになって、私の肩に飛び乗ってきたからビックリしたんだけど、変身も出来るみたいだしこれなら安心なのかな?
その日のお夕飯の時に父様と母様に私の肩にいる火蜥蜴の事を聞かれたんだけど、お友達だよって言ったら微笑みながら「そうか」って言って一緒に暮らせる事になったんだ。
ただ母様は驚いた顔をしていたけど、なにも言われなかったからきっと大丈夫だよね。
「ここが私のお部屋だから、もう喋っても大丈夫だよ」
“オッケー! ここがララっちの部屋かぁ”
「うん、火蜥蜴はトカゲの姿のままで大丈夫なの?」
“俺っち精霊だから決まった姿なんてないのさぁ”
「そうなんだね。 じゃあ火蜥蜴はここで眠るといいよ」
クッションを組み合わせて置いた場所に火蜥蜴を置いてあげると不思議そうに私の事を見たんだけど、すぐに目を閉じて眠ったみたい。
「おやすみ火蜥蜴。 私ももう寝るね」
返事がなかったからもう眠っちゃったんだね。
私がもっと大きくなった時にわかったんだけど、火蜥蜴は炎の精霊だから眠る必要はなかったみたい。 それでこれが私と火蜥蜴の出会いだったんだ。
このころ、私の知らないところでは大変な事があったみたい。
私が3歳のころに街道で悪いことする人達を冒険者っていう人達が捕まえてたりしていたみたいなんだけど、その悪い人達も元々兵士とか冒険者だったりで、私が5歳になった今もなかなか減らなかったんだって。
「野盗のせいで最近では交易もままならないようでやがります。 冒険者ギルドからの報告では野盗も組織だってやがるようです」
「これまた面倒な……
ローラんとことセーラム女帝国はどうしてるんだ?」
「ウィンストン公国のローラ女公は国内の治安と内政を優先させてやがると、ウィンストン宮廷魔術師のルベズリーブから伺ってやがります。
セーラム女帝国は元々兵力がそこまで多くないため放置してやがるようです。 何より……当の女帝が不在でやがりますしね」
「クソッ! そうなると7つ星の騎士団はメビウス連邦共和国復興に付きっ切りだから頼れねぇ。
ここはやはり軍を総動員するしか……」
「それはお辞めになった方がいいですぞ、陛下」
「何故だ、マクシミリアン」
「捕らえた野盗を奪い返しにくる危険があります。そうなったら被害は甚大になりかねません」
「じゃあみすみすこのまま指くわえて見ていろとでも言うのか!?」
「今のところ交易は冒険者共の護衛の仕事となって盛況のようですから、彼等に任せておくのが得策でしょうな。
それよりも捕らえた野盗の処断を早くした方がよろしいと思われますぞ。
もし脱走でもされて奥方様やララノア姫に危害でも加えられたらどうするおつもりですか」
「馬鹿野郎、そうさせないのがお前の仕事だろ」
「……これは一本取られましたな。 それでは牢屋の警護をもっと厳しくしておくとしましょう」
なんだかとっても物騒な雰囲気だけど、もちろんこれは私の知らないところの出来事だよ。
そんなことをつゆとも知らない私は、アルナイル先生との勉強を終えると、決まって火蜥蜴と王宮内の探検が楽しみになっていたの。
「あれ? 火蜥蜴、こんなところに通路があるよ!」
“あわわわわ……ララっちそこは行かない方がいい。 あっちへ行こう、あっちの方が何か見つかるさ、な?”
なんだか火蜥蜴が慌ててるみたい。 きっとこの先に何かあるんだね。
「大丈夫だよ、だって火蜥蜴がついていてくれるんでしょ?」
“そうだけどよぉ……”
うーん、火蜥蜴がこんなに嫌がるのなら止めておいた方がいいのかな?
「わかったよ火蜥蜴、ここは今度にして今日は他のところを探検しよう」
“オッケー! それがいい、そうしよ〜う!”
でも気になるな。 そのうち、もう少し私が大きくなってからなら大丈夫だよね?




