思惑
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王宮を抜け出して王都へ出た私とフィンなんだけど、たどり着くまでに私の呼び方で一悶着したわ。
「い!? 自分……あ、俺が姫様を名前で呼ぶんですか?」
「当たり前じゃない。 姫様なんて言われたら御忍びも何もないでしょ?」
フィンはいやだのしかしだの言って、立場のことばかり言ってるのよ。
「それでは呼び捨てはさすがに抵抗あるんで、ララノアさん……」
「ララノアじゃあバレバレよ!」
「そうでした。 ララさんで……いいですか?」
「あとはもう少しその硬い口調を治してね。 マクシミリアンともそんな話し方なの?」
「それはさすがにないですよ」
「ならマクシミリアンと話すようにしてみて」
ぎこちないもののフィンなりに努力してくれているみたい。
それで王都に辿り着くのだけど、いつもよりもすごくたくさん人がいるの。
もちろんそれは歌姫ブリーズ=アルジャントリーのコンサートが近づいているからなのだけど、そうなれば当然町中にも警備の兵士の姿があちこちに見られたわ。
いくら格好を変えたと言っても兵士たちに見つかれば一目できがつかれちゃうから、必然と大通りを避けて移動する事も少なくなかったの。
「ひめ……ララさん、あまり裏通りは治安も良いとは言えないから通らないほうが……」
「兵士に見つかっちゃうよりはいいでしょ?」
それにしてもここは何処かしら? サーラともこんなところには来た事が無かったわよね?
「ねぇフィン、ここは一体何処なの? なんか周りにたくさんはだけた女の人がいるみたいだけど?」
「こ、こここ、ここは……んっんん! ララさんふざけて言ってるんすよね?」
「ふざけてなんかいないわよ。 ここにはサーラとも来た事がないもの」
フィンは結局教えてくれることは無かったのだけど、ここがどういったところなのかは数日後に私に生理が始まった時にアルナイル先生が教えてくれたわ。 どういうわけか、生理とかのお話になったらサーラが逃げ出すようにその場を離れたのはなんでかわからないけど、アルナイル先生はその様子をクスクス楽しそうに笑っていたわ。
っと、それはさておき、その日フィンと喋りながら、今までサーラとは行かない場所を歩いて回ったんだ。
「様子はどうだ?」
「仲良さそうに歩いているようには見えましたニャア」
「それは良かった。 それとあっちの方はどうだ?」
「なんとかチケット2枚確保しましたニャン。 場所はあまり良くニャいけど……」
「まぁチケットが取れただけ良しとしよう。
あとはこいつをフィンに渡すだけだな」
「僕もコンサート行きたかったニャア……」
「何か言ったかね?」
「ニャンでもニャイニャッ!!」
なんだかちょっと猫の女獣人が可哀想……
さてさて、サーラの所要の方はなんだったのかしら?
1人王宮を出ていったサーラは王都のある場所に向かって行ったんだけど……
「すいませんがこっから先は関係者以外立ち入り禁止ですよ」
「ではアルを……ブリーズ=アルジャントリーを呼んでいただけますか?」
「歌姫のお知り合いの方ですか?」
「ええ、サーラが来ていると伝えて貰えばすぐに来てもらえると思います」
不思議そうにコンサート関係の人が首をかしげて建物の中へ入って行って、しばらくすると中から慌ただしい音が聞こえてきて、それがだんだん近づいてーー
「サハラ様!」
「久しぶりですね、アル。 それと今はサーラですからね」
建物から銀髪の美少女が姿を見せたの。サーラはアルって呼んでるところから2人は知り合い程度の間柄ではなさそう。
「またナニか起こるんでありんすか? もう未来視が出来なくなりんしたからわっちにはなもわかりんせんよ?」
「それも含めて少しお話ししませんか?」
「それでは時間を止めんすね」
「いえ、せっかくなのであの時の約束を果たしましょう」
何のことか思い出すように歌姫が首を傾げて、少しするとアッと声を上げて顔を赤らめたんだけど、一体あの時の約束って何だろう?
「でありんすが、ぬし、わっち と歩くと目立ちんすよ?」
「ですからこの姿のままですよ」
少し残念そうな顔を見せたけど、歌姫がサーラにくっつきながら王都を歩いて行ったわ。
当然町中騒ぎになったのは言うまでもないけれどね。
お店を見て回ったり、甘味を楽しむお店に入ったりもして、いいなぁ美味しそう……
「そろそろ話してくんなまし。わっちにできることならお手伝いしんすよ」
「そう言ってくれると助かります。 実はアルにお願いがありまして……」
サーラはアルに王宮でコンサートをお願いしたの。 それはフィンが誰の招致にも応じないと言っていたはずよね?
「それぐらいなら構いんせんよ? サハラ様のお願い何ていうから、もつとものたいそうことを頼まれるのかと思っていんしたよ」
「頼まれてくれますか、助かります」
こんな感じで王宮でコンサートを開催することになったみたいなんだけど……必死にチケットを取ったマクシミリアンはどうするんだろう?




