僕達は我に返る(5)
今回は書記さんのお話です。
はたしてチャラ男属性になったのだろうか?
それは晴れた日の事。
偶々、渡り廊下を歩いていた時、何か話し声が聞こえて、立ち止まった事が、今からしてみたら、オレの運命の分かれ道。
「あのねー、新しい乙女ゲームのキャラで上手く攻略出来ない奴がいてさー」
「えー! あのあずちんが!? どうしたの!?」
「いつも〜、一番早く〜攻略するのに〜、めずらしいね〜?」
何の話しだ? 窓から下を見れば、中庭にてお弁当を広げる、三人の少女達。ここからだと、学年等は全く分からなかったが。
「今回、手を出した乙女ゲームなんだけどー、チャラ男が中々攻略出来なくてさー」
乙女ゲーム? チャラ男? 一体なんの話をしてるんだ?? 思わずスマホを取出し、意味を検索していく。
何時の間にか、オレは立ち去る事も忘れて、彼女達の言葉に聞き入っていた。何故か分からないけれど、動けなかったんだ、この時のオレは。
「チャラ男がさー、捕まんないんだよー! 攻略法見たら、ランダムに出現するらしくてさー!! もう! 女たらしは、一ヶ所に場所しぼれーってーの!!」
「うわ〜!? あずちん、珍しくご機嫌斜めだね〜」
「確かにチャラ男は攻略するのに時間かかりますもんね」
一番最初、あずちんと呼ばれた少女の言葉が、胸の一番柔らかい所にグサッァァァと突き刺さった。
「あたしはねぇ! 婚約者みたいに、一途な奴がいいのよ! こいつみたいなチャラ男を見てると、イライラしてくんの!」
「確かにね〜、私も〜婚約者みたいに〜、私だけを見てくれる人がいいなぁ〜」
「普通はそうですよ! 遊びででも、女性をはべらせるような男性は、最低ですね」
何だろう、オレ、何か悪い事した? そう思うレベルの、すんごい攻撃が来たのだ。
「あ、検索終わった」
何時の間にか検索が終わっていたスマホを見て……………泣きたくなった。本当にオレ、何かした? 恋愛シミュレーションゲーム、通称乙女ゲーム。それはいい、それは。次に検索したチャラ男…………。それが問題だった。もう、マジで泣きたい。あ、涙出てきた。
「女たらし、尻軽なんて………ない、ないだろう!!」
確かに、確かにオレは、女性に優しいのが信条である。まあ、家訓的な物だと思う。が、これは、これはないだろう!?
「そういえば、うちの生徒会にもいたわね…………チャラ男」
「あー、いましたね、チャラ男」
「書記だよね〜、チャラ男く〜ん、女に手が早いって有名だよね〜」
………………え? 我が耳を疑った。最後、のんびりした子が、凄い事いったよね!? オレが手が早い!? ありえないから!! オレ、ちゃんと線引きするから!! 簡単にキスとか流石にしないからぁぁぁ!!!
「でも、書記の方は、誰とも付き合わないんですよね?」
「そこは評価出来るけど、女たらしは女性の敵でしょ」
「あずちん〜? やけにチャラ男キャラに厳しいね〜?」
ふんわりした子に聞かれた、あずちんと呼ばれた少女は、何故か拳を握り締めていた。
え!? な、何!? 何でそんな凶悪そうなわけ!?
「ああいう奴見てるとさ、こう、怒りが燃え上がるっていうか………モテルのは別にいいけど、女性をとっかえひっかえするのは、最低な奴がする事だ! って昔、親に言われてから、何か無理なんだよねぇー」
確かにオレはモテル。鼻にかけた事もある。ゲームの方は知らないが、それでもオレはオレなりに誠実な態度を取っていたつもりだった。別に女性をとっかえひっかえするわけではなく、付き合っているわけでもない。ただ仲良くするだけだったんだ。
「しかしさー、彼らが夢中になってたはずの女子生徒さん、今じゃ、書記くんとラブラブなんでしょ? ある意味、良かったのかもねー」
「え〜? そうかな〜? だって、あと生徒会に来てないの〜、彼だけなんでしょ〜?」
「生徒会の仕事、何だと思ってるのかしら?」
………………そういえば、生徒会にはしばらく行ってない。姫には寂しい思いをさせたくないし、奴らより姫を奪えた的な、優越感があったから。
「恋をするのは勝手ですが、仕事を片付けてからして下さいと言いたいです」
………………グサッ。
「どうせ、婚約者達がいない分、独り占め出来るーとか思って、優越感とかに浸ってるんじゃない? ホント、男って馬鹿よねー、まあ、うちの婚約者は別だけど☆」
………………グサッグサッ。
「あはは〜、ごちそうさま」
「でも彼、気付いてるんですかね?」
「何が〜?」
「皆が彼を冷たい目で見てる事に」
え? 急に言われた事が、オレの中に入ってくる。冷たい目で見てる? 思い当たる節は…………あった。昔から男とは仲が余り良くはなかったが、それでも仲が良い奴らはいたんだ。そいつらが最近、オレを避けるようになった。最初は気のせいかと思ったが、実は違うのではないのだろうか。
「友達に嫌われた…………?」
いや、嫌うとかそんな生易しい物じゃなかったかも。嫌悪………それが一番近い気がする。
「そりゃあそうよねー、自分の責任も取らないで、楽な方に逃げてばかりの奴なんて、仲良くしてたら共倒れになるもの」
「いい加減〜、気付けばいいのにね〜?」
「うちのお手伝いさんが言ってたのですが、こういう男性を落とす女性は“毒婦”と言うらしいです」
「「ぶっ!?」」
どうやら、二人が吹き出したらしい。多分だが、オレも純粋なお嬢様が言ったら、吹き出す自信があるよ? というかお手伝いさんよ、自分家の仕えるお嬢様に、何を教えてるんだよ!?
「ちょっ、みほりん!? 何いってるの!」
「そうだよ〜!? みほりんは純粋でいいんだよ〜!? そんな〜、汚い言葉を覚えちゃダメだよ〜!?」
友達二人に言われても実感がないのか、首をかしげている少女。鈍感、いや天然なのかもしれない。
「そういえば、書記の家って確か、踊りの御三家なんでしょ?」
「あ〜、わたしも習ってたよ〜」
「確か、婚約者の方がいるんですよね?」
「婚約者の方、凄い頑張って、舞の練習してたんだってー」
「うわ〜、最悪じゃん!」
それ、オレも初耳です。つーか、オレに婚約者いたの!? 年下とか初めて知ったんだけど!?
「これで知らなかったら、只の馬鹿よね」
…………………もうオレ、泣いていい? 何か婚約者の話を聞いたら、姫に会うの、何かなぁ。
そうだ! 生徒会室に行こう! 姫の自慢でもしてやるか!!
……………なんて、思っていたオレは馬鹿でした。
「………………えっ?」
固まりましたよ、さすがのオレも。何なの? このヤバイ量の紙は。
「………………やろう」
多分、今までのツケが回ってきたんだ。今やらなきゃ、来た意味がなくなってしまうじゃないか。
黙々と作業を始めて、ふと誰も来ない違和感を感じた。まあ、集中出来るしいいか。
「ふぅ〜」
1日でかなりの量を終わらせたが、まだまだまだ残っているのだ。頑張れ、オレ!
次の日も、朝とお昼、放課後まで使って片付けていく。放課後は、定時の時間で辞めて、姫と帰ったけど。最近の姫は元気ない。会長とか皆が一人、また一人と姫から離れて婚約した。最初は裏切りみたいに感じたけど、優越感もあったんだよね。姫を独り占め出来るって。でも最近は何か違和感を感じてる。
そんな日々も今日で終わりだ!
やっと書類の整理が終わり、昨日来た補助の子に頼んで、終わった書類を片付けてもらう。さぁて、姫とデートだ!
と、電話が鳴った。見れば自宅から。あれ? 何かあったっけ?
「もしもし」
『当主命令だ、緊急事態だ、すぐに帰ってこい、迎えは既に校門前にいる』
言うだけ言って、爺さんは電話を切った。って、緊急事態!?
「すまん、オレ先に帰るわ!」
このまま急いで車に乗り、自宅に帰ると、頭を抱えた親父がいた。え? 脳天気な親父が何やってんだ!?
「あぁ、お前か………」
「何があったんだよ!」
「あ! 雅さま!」
聞く前に遮られた。知らない若い女性の声に。見れば、まるで大和撫子のような美少女がいた。まるでオレの好み、ドストライクな少女が。
「君は………?」
恐らくオレは、この瞬間、随分な間抜け顔をしていただろう。なのに、彼女は全く気にしていないようで、華やかに笑った。
ドックンと胸が鳴った。あ、これ一目惚れだ。
「わたくし、片桐 静乃と申します」
「お前の婚約者になる人だ」
あれ? 前から婚約してたんじゃないの?
「はじめまして…………、えっと?」
駄目だ、意味が分からない。
「雅さまに相応しくなるまで、婚約は待って頂いていたのです、ふつつか者ですが宜しくお願いします」
「あ、はい、此方こそ」
この後、爺さんのややこしい説明を聞いて、ようやく実感した。静乃さんと婚約した事を。姫? 既に空の彼方に飛んでったよ! だって、姫とは友達であって、恋人ではないから。
「雅さま、後で雅さまの舞を見せて下さいますか?」
「勿論! 静乃さんの舞も楽しみにしています!」
あぁ、年下だけど可愛い過ぎる! 他の奴になんて渡したくない!!
◇◇◇◇◇
次の日、学校に行くと、既に噂になってたのか、無遠慮な視線がバシバシ来た。勿論、オレは受けて立とう! それだけ機嫌が良かったんだ。昨日、我が家に泊まっていった片桐家の方の中には、オレを睨み付けたり、不安そうに見ている人もいた。つまり今のオレを知っている人がいたんだ。親父も頭を抱えるはずだ。だからこそ、オレはやり直そうと決めた。オレの為にも必死で頑張ってくれた、年下の婚約者の為にも。
「おはよう、生徒会長」
「ん? 書記か? 最近、生徒会室に来て頑張ってるんだってな?」
「お耳が早い事で…………たまった書類は全部、片付けましたよ」
そういうと、会長は目を見開いて驚いていた。
「そ、そうか」
やけにホッとしたような姿が、何故か印象的だった。
うん、さあーて、静乃さんの為にも頑張るぞ☆
◇◇◇◇◇
再び学園が震撼した。何と、最後まで件の女子生徒に夢中になっていた書記の方が、この度、晴れて婚約なされたのだ。これには件の女子生徒だけに止まらず、学園中の女子生徒が発狂したと言われるほど。お相手は年下で室町時代から続く旧家のお家柄で、現在は華道の総本家をしている由緒ある立派なお嬢様である。なんでも、婚約するまでに立派な女性になろうと、健気に頑張ってきた一途な方だとか。
勿論、件の女子生徒は書記を取り戻すべく、あらゆる手段を講じようとしたが、婚約者に夢中な書記の方は、全く相手にすらしなかったという。
こうして件の女子生徒は、全てを失ったかに見えた。
それからすぐに、ある転入してきた人物が現れる迄は…………。
こんにちは(・∀・)ノ
初めましての方も、また来たよーな方も、お久し振りです。
秋月煉です!
無事にお約束通り、今月中に最新話出せました! 間に合って良かった〜。
さて、本日はチャラ男………になったんですが、果たしてこれはチャラ男だろうか? 絶対、違う属性が入った気がします。なにやってんだ、自分。
えー、このシリーズも、予定では後2話のつもりでしたが、ちょっと厳しくなりまして、次回で終了にしようかと。
大変申し訳ないのですが、秋月がこれから忙しくなるため、天と白の勇者達が優先になります。あらかじめご了承下さいませ。
ではまた出来ましたら、お会いしましょう!
感想、ご意見、誤字脱字、いつでもお待ちしております。なお、秋月はメンタル弱いので、お手柔らかに願いますm(__)m




