【7】5月21日+②
“苦手”
ひと言で言えば、そうかもしれない。
でも、私にとっては…。
『おまえ達、本当に双子?』
それは、きっと何気無い言葉。なのに、いつまでも気にしてしまう。
小学校に入学したばかりの頃、一人の男の子に光星と一緒に居る所で、そう言われた。
『双子って、男の男、女と女のそっくりな人の事だろ?』
そんな事言われても、私と光星は双子。性別が違うから二卵性双生児。
今なら、ちゃんと説明だって出来る。だけど、その頃はそんな言葉すら知らなくて…。
きっと、その男の子は双子というものは、そっくりな兄弟または姉妹、つまり一卵性双生児の事を思っていたんだろう。
そして、最後には――。
『おまえ達、似てないよな』
何故か、無性に悔しかった。
家に帰って、ハサミを持ち出して自分の髪を短く切った。
服だって光星のタンスから引っ張り出してきて…。
鏡の前で自分の姿を映す。
(うん!これで、もう“似てない”なんて言わせない!)
その後、母さんには滅茶苦茶怒られた。父さんは呆れてた。
光星は――「その服、好きな時に着ていいよ」と言ってくれた。
それ以来、私は男の子の格好をするようになった。
男の子の格好と言うけど、私にしてみれば弟と同じになりたかった。
勉強も出来て、スポーツも何事も器用で、優しくて人当たりも良かった光星。
だから、私も頑張って勉強もしたし、スポーツだって!
まぁ、単に性格が災いしてる?
性別は違っても双子は双子。比べられて育ってきたせいかもしれない。
すっかり、負けず嫌いの意地っ張りな私になってしまった。
そして、高学年になったある日。
相変わらず、光星の服を借りては毎日のように出掛けてた場所があった――少し遠い児童公園。
公園で仲良くなった男の子とサッカーをするのが日課になっていた。
その日も、いつもと同じように男の子達と一緒に遊ぶ。
その中の誰かが言った。
『おまえ、女みたいだな』
――!!
ショックだった!私、その子からずっと男の子だと思われていたんだ。
男の癖に、女みたいなヤツだって!!
確かに格好は男の子なんだけど…。
それっきり、その公園には足を運ぶ事はなくなった。
服装は変わらず光星と兼用だったけど、髪は少し伸ばし始めた。
“苦手”
今でも、この記憶が胸の奥で燻っている。
もしかしたら、また何か言われるんじゃないかとビクビクしているのかもしれない。