【61】10月13日+⑤
お茶碗を持った男どもが、一列に並んでいる。
しゃもじを持つ私は、一人ずつ炊き立てのご飯をよそる。
「はい、次!」
そして、今度はおたまに持ち替えて、味噌汁をお椀に入れていく。
「はい、次!」
気分は、すっかり寮母さん。
最後に、ハンバーグにサラダ、ポテトフライが乗ったお皿を順番に渡していく。
その横で、光星があのファンシーな湯飲みとお揃いの急須でお茶を淹れている。
いただきます!
と、みんな一斉に食べ始める。
ガヤガヤと賑やかな食事は、まるで合宿に来てる感じがして楽しい。
「千星子も光星も美人じゃあ~!メシも美人じゃあ~!!」
大河さん、それって、美味しいって言いたい訳?
「千星ちゃん、毎日、玉ねぎ料理を作ってくれないかな?」
マサミチさん、玉ねぎと一緒にスライスしてやる!
「千星チャン、今度は千星チャンの耳をパクっと――」
マサトモさん、今度は濡れタオルで口と鼻を塞ぐよ!!
「全員、そこまで!――じゃないと、姉さんが良からぬ事考えてるよ」
と、またまた光星が私の心を読んだのか、全く他人事ですって感じの抑揚の無い口調で淡々と喋る。
さらに、「病院送りになるから、先に救急車でも呼ぶ?」とか「即、入院手続きが出来るように、各自保険証持参するように」とか、食べながら平静に話す。
一気に静まり返る姫野家の食卓。
「千星子が、可愛過ぎなんじゃよ」
「千星ちゃんの泣き顔が可愛くて」
「千星チャン、小さくて可愛い!」
口をもぐもぐしばがら、3人がぼそぼそっと、そんな事を言う。
「…わ、私、――可愛くないから…」
と言うと、3人は同時に、ふるふると首を横に振る。
「か、可愛いの?」
と訊くと、今度はこくこくと、首を縦に頷く。
「……どこが?」
大河さんもマサミチさんもマサトモさんも、背が高くて大きな男の人。
だから、私のような平均より背の高い女の子も彼らから見れば、小さな女の子なの?
「いつも、一生懸命で頑張りやな所じゃ。そんな千星子が、ワガママ言ったり甘えたりしたら、もう最高じゃーーーっ!!!」
「………」
ワガママ?
甘える?
(――そんな事、言ったりしていいの?)
ココは、居心地が良い。
ワガママ言っても、許される。
甘えてみせても、受け入れて貰える。
だから、ココはいつの間にか――私の特別な場所。




