【51】9月23日+④
プツっと携帯電話を切って、私は目の前に居る親友二人と弟に顔を向ける。
マコトの声は大きかったから、話の内容は理解出来ていると思う。
「まっ、そういう事だから。五十鈴もつかさも朝からお疲れ」
「千星ちゃん…」
「折角だから、この服とか有り難く貰うよ」
「千星さん、――あのね…」
「今日は、ありがとう」
二人の言葉、今は聞きたくなくて、会話を断ち切るように喋ってしまう。
“じゃあ、またね。千星ちゃん”と“明日、学校でお会いしましょう”という言葉だけを残して二人は帰って行く。
そして、私は光星と向き合う。
「またまた、私の事からかって遊んでいるの?」
その私の言葉に、光星はかなりムスっとした表情になる。
「俺、いくら何でも、そこまでしない」
「…うん、そうだね。――ごめん」
最後の“ごめん”は溜め息と一緒に出てしまう。
「姉さん」
「ん?」
「写メ、撮って良い?」
「は?」
「ガンガン撮って、ガンガン送り付けてやる」
「だ、誰に?」
「マコトに」
「なっ?!」
「こんな可愛い姉さんよりも、バスケを選んだ事、後悔させてやる」
「ちょっと、止めなさいよ!!」
阻止する私と、遂行する光星。
もみ合いながらも、どちらも本気で喧嘩という訳でもない。
こんな気分じゃ、気力が削がれて力なんて出やしない。
傍から見れば、じゃれ合っている仲の良い姉弟にしか見えないだろう。
結局、阻止出来ず、私の“可愛い姿”は流出してしまった――。




