【43】9月16日+②
ちょっと大人しくしてると、元気が無いって、どうなのよ?私って!!
「考えるより、先に行動するのが千星さんらしくてよ」
「そう言えば、マコトくん、最近ココに来てないよね」
はぁ~?どうして、マコトの名前が出てくるの?
私の反応なんて気にする様子も無く、二人は微妙に噛み合わない会話を続けてる。
「姫野くん、バイトでお忙しのよ。きっと」
「部活もあるから、さらに忙しさ倍増だね」
「バスケ部ですもの、朝錬もあるから大変ね」
「知り合いの酒屋さんもバイトも大変だよね」
(………)
バイトって、酒屋さんなの?
バスケ部って、あいつ、入部なんてしてたっけ?
「昨日、バイト中の姫野くんとお会いしたのよ」
「私も、体育館でバスケしてるマコトくん見たよ」
(………)
「後で、私の携帯に“一応、知り合いの店だけど、バイト禁止だから内緒にして下さい”ってお願いされたわ」
「私も“しばらくバスケしてなかったから、見られると恥ずかしいです”ってメールが来たよ」
(…携帯で会話、メールのやり取り)
モヤモヤしていた気分が、ムカムカしてくる。
そして、それがイライラに変わっていく。
そうよ!!
あの日、始業式以来、マコトに会ってない!!
夏休みには、あんなに嫌っていうほど、ほぼ毎日会っていたのに!!
何なの!2学期になった途端、この疎遠さは!!
はぁ?携帯だぁ?メールぅ~?
私には、何一つ寄越さないって、どういう訳~?
私だけ?本当に私だけなのーーっ??
それって、おかしいでしょうが!!
ガタンっと大きな音を立てて、私は椅子から立ち上がる。
「つかさ!五十鈴!――ちょっと、行ってくる」
廊下を出て、スカートのポケットから携帯電話を取り出した。
夏休みにマコトと赤外線で登録してもらった番号。
発信ボタンをグイっと押す。
『…あ、あの…、もしもし…、せ、先輩?』
と、男のくせに弱々しい小さな声が聞こえてくる。
だからなのか、私の声がいつも以上に大きくなってしまう。
「マコト!何処に居るのっ?」
『…が、学校です……』
あ、あのバカ!!分かりきってる事を!!
「学校の何処に居るのかって、聞いてるのっ!!!」
廊下を大股で歩きながら、大声で話す女。
ちらちらと他の生徒の視線を感じるけど、今は気にならない。
『――っ!!しょ、職員室前ですっ!!』
「ふーん、今から行くから、そこから一歩も動くな!!」
ピっという電子音と共に、私は携帯をポケットに突っ込んで駆け出した。




