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【3】4月16日+②


あのまま教室に居ても仕方が無い。


下駄箱まで行く事にする。私の後ろには、さっきの男の子。


付かず離れず一定の距離を保ちながら付いてくる。


そこには、会話も何も無い。


ただ、私は早くこの状況から解放されたいだけ。


下駄箱に着いて上履きから革靴に履き替えてると、背後からタタタっと軽い足音、そして――



「千星ちゃ~~~ん!!!」



私の名を呼びながら、胸に飛び込んでくる私の最愛の少女。


むぎゅうっと抱き合い、まさに至福の時。



「五十鈴、先に帰ってたんじゃ…」

「千星ちゃん、どうだった?」



この噛み合わない会話。五十鈴らしくて嬉しいような悲しいような…。



「どうだった?って、何が?」

「あ!上手くいった?」



だから、“何が?”と訊き返したいけど、五十鈴の気はすっかり私にではなく別の所にある。


五十鈴の瞳は私以外のもう一人の姿を映している。


そのもう一人とは――姫野。


「上手くいった?」と、もう一度同じ質問を姫野にしている。


初めからあの言葉は、姫野に言った言葉?



「匂坂先輩…、一応“先輩後輩”からと麻生先輩が…」

「そうなんだ!良かったね~~!」



と言って五十鈴は姫野に抱き付いている。


「うわっ!」と驚いて、何とか転ばないように抱き留めている姫野。


それ以上に驚いているのが、この私!



「ひぃ~~~~~~~っ!!!」



な、ななな、何!何してるのよ~~~~っ!!!


こういう時って、頭で考えるより身体が勝手に動くよね。


五十鈴と姫野の襟首をガシっと掴み、二人を引き離す。



「あ、あんた達ーー!○◆▽×★ーーーー!!!」



もう、何が何だか、自分でも何を言ってるのか、分かんな~~い!!



「千星ちゃん、何言ってるの?ちっとも分かんない」



と五十鈴は言ってくるけど、だ、大丈夫!自覚してるから!!



「千星先輩、少し落ち着いて」



と姫野は言ってるくるけど、お、落ち着いてだと?これが落ち付いていられますか~~!


――って言うか、な、何?この二人!!


しかも、この私の前で抱き合ったりしてるのよ~~~!!



「い、五十鈴!言っておくけど、誰にでも抱き付いたりなんかしてないよね?」

「ん?――あ、それより、千星ちゃん!」



え?わ、私の問いには答えてくれないの?



「マコトくんと仲良くね」

「…?マ、マコト…?くん?」



もう、飽和状態の頭の中で考えてみる。


家族、友人、クラスメート、親戚、ご近所…、ありとあらゆる身近な人物を思い浮かべてみるけど、そんな名前の人は知り合いに居ない――居ないはず!!



「あ、あの…、それ、オレの事です」

「はっ?」


姫野真実((ひめの まこと)、オレの名前です」



申し訳無さそうに名を名乗る少年。



(………)



今、有りっ丈の記憶という記憶をフル回転してまで、考えたのに~~~っ!!


この男は~~っ!!


あんたの名前なら、さっさと名乗りなさいよ~~っ!!


フルフルと震える握った拳。



「お~い!千星ちゃ~ん、早く、帰ろうよ~~!」



五十鈴の呼び声で我に返ると、五十鈴と姫野は二人並んで正門の方へ向かっている。



「ちょ、ちょっと、待ちな…――」



ちょっと、待って!


五十鈴が居る所、必ず居るヤツが居ないなんて有り得る?



「し、白澤…、どこ…?」

「ここに居るけど」


「ひ、ひぃ~~~~~~っ!!!」



ふ、ふざけるな!死角に!背後に立つんじゃない!!


しかも、気配を消すな~~~!!!


今の今までどこに居たーーっ?



「千星?」

「あ、ああああ、あ、あれ!!いいの?」



五十鈴がおまえ以外の男(外見はともかく)と並んで歩いているんだぞ!


世界は五十鈴中心に回っていると豪語してもおかしくないおまえが平気でいられるなんてーーっ!!



「千星」

「な、何よ?」

「おまえが手懐ければ済む話だろ?」

「?!」



て、手懐ける?私が?姫野を?


遠くから五十鈴が「千星ちゃ~ん、透~!早く~~、先に帰っちゃうよ~~!!」と手を振っている。



「だ、だから…、待ちなさ~~い!!」



私は、一歩踏み出した。


この一歩がどこへ向かうかなんて、この時は気にも留めてなかった…。


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