line1 明記されし事実
これは転校先で出会った少女、天花咲唯が僕、相場利幸を(勝手に)下僕にして平凡と平和な生活を壊して行く、無理難題な活動記録である。
僕は目の前に広がる、蛍光灯と白い天井を仰ぎ見ながら思う。
「……どうしてこうなった」
と。
僕が今いるのは学校の保健室のベッドの上。
なぜ僕はここにいるのか、ここ小一時間前後の記憶があやふやで理解していない。
「あ、起きた?」
首を横に向かせると、そこには見知った女の子がいた。
てか、こうなった原因の張本人だった。
「……起きたじゃないよ。天花咲さん」
彼女の名前は天花咲唯。自分が世界の中心にいると思って疑わないゴーイングマイウェイな女の子だ。
「にはは。人のせいにするなんて、下僕のくせに生意気だね」
笑って誤魔化す天花咲さん。
ちなみに下僕とは僕のことだ。それも、彼女勝手に公言してるだけだけど。
「それでなんでこうなったんだっけ?天花咲さん」
「なんでだっけね。忘れちゃった。にはは」
この人は知っていてすっとぼけるんだから。
段々と頭がクリアになり記憶が鮮明される。
こと細かではないけれど、こうなった理由が思い出しつつあった。
「……てか、爆発物の実験とか、止めてよね。危ないから」
「え~。別にいいじゃん。別に迷惑かけるわけでもなし」
かけるよ?めっちゃかけるよ?むしろかけてない方がありえないよ?
「それに、楽しければなんでもいいじゃん」
うわ、ぶっちゃけたよこの人。まるで悪魔のようだ。
理科の授業。その時に試験管に火薬入りの癇癪玉を『実験だよ、実験~』とか言って楽しそうに入れた天花咲さん。
その時入っていたのは化合された科学物質。それに反応して物の見事に癇癪玉は爆発し、試験管ごと破裂した。
そして近くにいた僕は被害に合い、気を失ったという分けで……。
「……僕、めっさ被害者じゃん」
理解はしたが、納得がいかない。
「にはは。それは不幸だったねぇ」
あんたが他人ごとのように言うなや。
「んじゃ、あたし、教室戻るわ。我が下僕よ、さっさと体調をよくし、あたしの前で跪け」
そんな自分勝手なことを言い残し、返す言葉を与える暇なく出て行く。
…………。
「……現実は非情なり」
そんな言葉を吐いた僕は、異様に虚しさを感じていた。