第7話 怒り
視界も頭の中も真っ白になった。
次いで視界は真っ赤に染まった。
現実的に視界が色を判別したわけではない。
後から考えてみるに、あれは『怒り』によってだったのだろうと理解する。
突然の接触。
ファースト・○○だなんて言いたくない。
たとえそれが事実だとしても。
あれがファースト・キ○だなんて認めない。
小さいころから夢みてた。
父と母の運命的な出会い。
出会ってすぐ2人は恋に落ちた。
いろいろと障害があったけど、その障害を突破し、結ばれて私と弟が生まれた。
自我が生まれたときには、もう母からその話を聞かされていたように思う。
寝る前におとぎ話を聞かせるように。
何回も強請って聞かせてらった。
いつか自分も2人みたいな運命的な出会いをして、恋をする。
そう思ってた。
中学にあがって、いろんな男の子に告白された。
私は全て断った。
高校生になっても同じ。
告白は嬉しかった。
でも…彼らは違った。
私の『運命の人』じゃない。
何かが叫ぶように伝えてくる。
『違う』って―
16歳の誕生日が来た時に母に言われた。
『16歳になったあなただから―』
驚いて、そしてすとんと胸にその言葉が落ちてきた。
『もうすぐ会える』
「だからってこれは無いでしょ―――っっ!!」
茫然自失になっているうちに連れて行かれた宿らしき建物の1室で、ベッドの上で丸まって、由岐は叫んでいた。
ジンジンと熱を持ったような右手がこれは現実だと伝えてくる。
思いっきり人をひっぱったいた代償だ。
「う〜〜〜〜」
ボスッと枕に頭を静めて後はうなるばかり。
泣くだけ泣いた。
泣いた後には怒りが身体を支配し、そして母の言葉やあの少年のことなど色んなことが頭を巡る。
時間は過ぎていくが、由岐の身体の中は嵐が吹き荒れるばかりで静まらない。
しかしその吹き荒れるばかりの嵐も唐突に収まる。
「あった事実は変わらない…よね」
ごろりとベットの上を転がる。
枕の中に埋めていた顔は上を向く。
「ていうか、ここって明らかに日本じゃないわよね…」
混乱した頭で歩いた通りを思い出す。
色鮮やかな髪の色。
そして瞳の色。
日本人は基本黒目だ。
カラーコンタクトを入れれば別だが。
しかし、ここにいた人の全てがカラーコンタクトを入れているはずが無い。
「…仮装大会じゃあるまいし」
乾いた笑い声が口から漏れる。
また身体の向きを変えて窓から見える空を眺めた。
空の色は一緒。
しかし建物は日本建築には程遠い。
「…もしかして異世界?―…な〜んちゃって」
瞼を閉じて見える世界をシャットアウトした。
急速に全身が重くなる。
これは夢への誘い。
その誘いを拒まず、由岐は意識を手放した。
読んでくださった方、ありがとうございます!
今回は短めでした。やっと由岐のターンかと思いきや、現在進行形で混乱中です。
読んでくださっている方がいると思うと、筆が進んだり…。
少しの間の奇跡かもしれませんが、頑張りますので、よろしくお願いします!!