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光ある国  作者: 深縁
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第19話 探しものは





全ては巡る




     悠久のときを




            しかし全てのことわりは




紛うことなく




                        道を示し




      ただそこにたゆたう








草地を削るように書かれた円陣。


円の中には複雑な紋様が輪に沿うように刻まれている。


そしてそこに立つは1人の少年。


少年を中心に、光は集まり、纏わりつく。


光は一定の量より増えることは無く、明滅を繰り返す。


少年は瞳を閉じていた。

時折、眉間に皺がよる。

何かを手探るかのように手が空を動く。


少年は探索の魔法の真最中だった。








「苦戦しているな」

「ああ…」


少し離れたところから周囲を警戒しつつ、リーとローは少年―フェイの様子に深刻な顔になる。

この場所を訪れてからもう2刻ほどが経つ。


当初、探索はすぐにでも終わるものと思われていた。

しかし、簡略化された探索の魔法では目当ての人物は見つけることが出来なかった。


見つけることが出来ない―それは、フェイたちの探している人物を隠している人物の側にそれなりの力を持った魔法使いが居ることを示していた。

何度か探索の魔法を試してみたが、一向に見つけることが出来なかった。


そして今に至る。


簡略化された探索の魔法が利かないのであればと、フェイは古から伝わる魔法に切り替えたのだ。


手ずから地面に円陣―魔法陣を書き、長い詠唱にはいる。


簡略化された魔法とは違って、手ごたえはあったのか、フェイが閉じた瞳を開くことは無い。

しかし、それでもそのまま時は無常にも過ぎていっている。



「主の手を煩わせる者などすべてこの世から消え去ってしまえばいいのに」

「をい…物騒な台詞を吐くな」


フェイの様子を見ながらだんだんと鋭さを増す双子の片割れの台詞に、冷たい汗が背中を流れていくのをローは感じる。


「見つけた暁には朝日はもう拝めないようにしてやる」

「…勘弁してくれ」


ローを無視してリーはギリギリと自分の左手を右手で握り締める。

リーのどす黒いオーラにそっと側を離れようとする。

しかしそれは失敗に終わる。


ガシッ!


「リ、リー?!」

「ローも手伝ってくれるよな?」

「ぐっ!?」


にっこりと恐ろしいまでの笑みが迫るのにローは血の気が引いていくような気がした。



「忌々しいッ!!」


離れた場所から聞こえたフェイの声に、2人はハッとして視線を戻す。

フェイの瞳は閉じたままだ。

しかし眉間の皺は先ほどよりしっかりと刻まれていた。


声と共に一定の量を保っていた光がいっきに輝きを増す。


「フェイ様っ!」

「主っ!?」


とっさに、2人は叫ぶようにフェイを呼ぶ。

しかしフェイはそんな2人を無視して口を開いた。


「―我、リオーレの血を引く者なり。我が誓いは血の誓い―…」


フェイの言葉と共に光は粒子となり、フェイの身体を中心にして縦横無尽に暴れまわる。

傍から見ると小さな台風のようだった。

さしずめフェイは台風の目と呼ばれる場所に立っていた。


「…―我が前を阻むものを排斥せよ!」


言葉が終わると同時に粒子と化した光の粒は魔法陣に吸い込まれるように消える。

反対に、魔法陣が強い光を発する。

気付けば最初の魔法陣から形がだいぶ変化していた。



「無茶苦茶だ…」

「こんなの主くらいしかしないわね…」


変化した魔法陣の上に立ち、光を下から浴びながらフェイは探索に戻ったようだった。

リーは毒気が抜けたのか、どす黒いオーラが消えていた。


「ねえ…」

「…ん」

「これはもう私が手を下すところ無いわよね」

「やめてやれ…そんなことしたら死ぬしかなくなるだろう」

「だわね…」


フェイは最後に『排斥せよ』と言った。

フェイの邪魔をした魔法使いの末路はもう決まったようなものだった。





「よし」


その後、それほど時間もかからず、探索の魔法は終了した。

満足そうに口元に笑みを湛えてフェイが瞼を開ける。



「何処です?」


端的にローが聞く。

言葉は最低限でいい。

フェイの気分が高揚しているのだから。

リーも黙ってフェイの次の言葉を待つ。


日の光を反射して瞳がキラキラと輝く。

その瞳を眩しそうに2人は目を細める。

フェイの口が開く。




「ザラウェイ」





行く場所は決まった。







読んでくださった方、ありがとうございます!

楽しんでいただけたら、幸いです。

そろそろ再会しそうな2人。…とかいいながら、簡単にはいかないんだろうなと思いつつ…。

早く会えるように頑張ります!

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