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光ある国  作者: 深縁
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第12話 意見の相違は多々あることで…

気づくのが遅くなりましたが、この小説を評価してくださった方がいらっしゃいました。

ありがとうございます!とても嬉しかったです!

嬉しい気持ちを糧に、頑張っていきたいと思います!!






湯船の中でのぼせそうになり、慌てて湯船を後にした。

碌な抵抗も出来ぬうちに、スタンバイしていた侍女に服を着せられる。

着せられた服は、由岐が普段着るようなものではなかったが、ワンピースのような形の服だった。

部屋着なのであろう。

由岐はこっそり息をついた。


(あの人が着ていたみたいな服でなくてよかった…)


着替え終わり、お肌の手入れを丹念にされる。

その後、また侍女の誘導で部屋に戻った。


「お食事をお持ちいたしますので、少々お待ちください」


礼をして、侍女が部屋を出て行った。


食事を用意してくれるのは助かる。

いろんなことが起こって忘れていたが、半日以上口に物を入れていなかったのである。


「さてと」


言葉を零して、窓際に置かれる椅子に座る。

外はもうかなり暗い。


(まずは腹ごしらえからよね)


湯船の中で落ち着いた気持ちのまま、今後の予定を立てる――と、いってもまずは今にも鳴ってしまいそうなお腹を満足させることが先決であるが。


(スタンリーとか言ったあの男の人は、プティリスの町で私を見つけたと言っていた)


鳴りそうなお腹を満足させてくれる料理はまだ来ないので、仕方無しに少ない情報を整理することにした。


(でも、ここはザラウェイという町。…常識として、助けた人を違う町まで運ぶもの?どんなところだって、警察に似た機関はあると思うのよね)


喋りもせず窓の外を眺める由岐の姿は傍目から見たらひとつの絵のようだった。

きっと由岐を見ている人物がいたとしたら、彼女を見てうっとりとため息を零したことだろう。


(プティリスとザラウェイがどれくらい離れているのかは分からないけど、それを教えてくれる人は今のところいない…)


由岐の脳内情報整理は進む。


(周りの人が教えてくれないのなら、自分で情報を得るしかない)


結論は出た。

由岐は心を決める。



コンコン


ちょうどいいタイミングで扉を叩く音が聞こえた。


「はい」

「失礼致します。お食事をお持ちしました」


由岐の返事が聞こえると同時に部屋に入ってきたのは先ほどの侍女。

身体の前には食事の乗ったワゴンがあった。


「テーブルに並べてもよろしいですか?」

「お願いします」


テーブル横までワゴンを押して止まる。

テーブルの上にさっと白いテーブルクロスが広がる。

その上に次々に色とりどりの料理が置かれる。

そっとお腹が鳴らないように手でお腹を押さえながら、何食わぬ顔で待つ。


「それではお食事が終わったころに参ります」

「ありがとうございます」


一礼して部屋を出て行く侍女をそのまま送り出してまたひとつ息をつく。

食事している間、側についてられたらどうしようと思っていたので、由岐はほっとしたのである。


ほっとしたのも束の間、また扉を叩く音がした。

食事が出されてまだ数分。

侍女が来るには早すぎる。

由岐は首をかしげながら返事をした。

返事を返した後、扉を開けて入ってきたのは執事と呼ぶにふさわしい装いのおじいさんだった。


「お食事中に失礼致します」

「!…いえ」


深々と頭を下げる男に由岐は慌てて椅子から立ち上がろうとするが、男に視線で止められる。


「わたくしスタンリー様に仕える執事のセイドと申します」


(やっぱりセバスチャンとかいう名ではないのね…)


名乗りを聞きながらどうでもいいことを思い浮かべる。


「身体の調子はいかがでございますか?」

「は、はい。これといって気持ち悪いとかどこかが痛むということもありません」

「それはよろしゅうございました」


口元に笑みを刻む。

スタンリーの執事にしては品のいい人だと失礼なことを思う。

しかし、執事―セイドがこの部屋を訪れた理由が分からなかった。


「それで…何の御用ですか?」


単刀直入に聞く。

はっきりいってお腹が限界だ。

まだ少ししか口にしていない。

いや、少しお腹に入れたせいで余計にお腹が不満を漏らしているような気さえする。


「―スタンリー様のことなのですが」

「はい」

「どう思われますか?」


何を聞かれているのか少々…全然分からなかった。

しかし、聞かれたのに答えないわけにもいかず、口を開く。


「―倒れていた私を助けてくださった上に、こうして休む場所まで用意してくださって、お優しい方だと思います」


(倒れていたのを助けてくれたことには感謝してもいいと思うけど、連れがいるかもしれないのに、違う町まで連れてくるなんてちょっと常識がない人だと思います)


「その後も気遣ってくださいまして、お話やらお風呂に食事など…至れり尽くせりで、申し訳ないです」


(無駄に美辞麗句を並べ立てて、今後どうするかの話もしてくれないとういか…。お風呂と食事に関してはとてもありがたいと思うけど、タダほど高いものは無いって言うし、この後どうなるのかがとっても心配です)


心の声と口から出る言葉はどうしても違う。

言っていいことと悪いことってあるよね?と微笑みに全てを隠した。


「そうでございますか。…お聞きづらいことなのですが、外見的には?」

「は?…はいっ!…―貴公子のような方です…ね?」


(整った顔をしているとは思うけど、どこぞのお金にものをいわせた感じの典型的なお坊ちゃんって感じですよね…)


なかなか心の中は手厳しい。

そろそろ引きつってしまいそうな口の端を気にしながら、由岐は答える。


くぅ


「!」


お腹がとうとう不満の声を上げてしまった。

恥ずかしくなって俯いてしまう。


「おお!これは大変お邪魔をしてしまったようです。申し訳ございません」

「い、いえ」


申し訳なさそうな声にもう部屋を退室してくれるのかと思いきや、セイドはなかなか立ち去らない。

ソロソロと顔を上げると、由岐をじっと見る視線とぶつかってしまった。


「あの?」

「…失礼ですが、お年は?」

「―この前16になりました」


(こんな状態で聞くことなの?)


「そうですか…スタンリー様は御年21になられるのです」

「はぁ…」


(それぐらいでしょうね…とういか、それがどうしたのかしら???)


「ちょうどよいくらいだと思いませんか?」

「?そ、そうですね」


わけが分からないながらも、強い視線と共に返事を促されて、意味も分からず返事をする。

すると、由岐の返事に満足したのか、とてもよい笑顔をセイドが顔に浮かべた。


「お食事の途中にかなり長居してしまいました。わたくしはこれにて失礼させていただきます。今日はごゆっくりこの部屋でお休みくださいませ」

「ありがとうございます。お言葉に甘えまして、お部屋を使わせていただきます」


また深々と礼をして、セイドがやっと退出していく。

十分な時間が経ってから、由岐は盛大なため息をついた。


「本当にわけが分からないわ」


結構な時間が経ってしまって、冷えてしまった食事を前にもう一度ため息をつくのだった。







読んでくださった方、ありがとうございます!

楽しんでいただけたら、幸いです。

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