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貴方の秘書として

それは、とある裏社会のお話。

『I』

死刑を執行され死んだ者や、刑務所で自殺したものなど。いずれかの不幸を持って亡くなった人々の死体からある部分だけを取り出し、研究に使う。その研究の場となっているのが、刑務所の裏にある会社『I』である。そしてある体の一部とは「目」のことで、ここでは目のことに関しての様々な研究を行っている。しかしそれは、一般人の立ち入ることの無い世界であり、一般の人にはほとんど知られていないという。まさに裏社会なのである。  

 


「……最初は、愛のほうかと思いました」

坂久保の後ろについて歩いている途中、仁美は何気に呟いた。

社長の秘書だからって堅苦しくする必要はないのよ、言いたいことがあればいってしょうだい。そう坂久保に言われたので、遠慮なく発言してみたのだ。

「冗談じゃないわ、ジャンルが違いすぎる」

もっと優しい返事が返ってくるのかと思ったら、期待以下のキツイ言葉が返ってくる。

「………そ、そうですよね!」

正直言って今の状態はかなりきつい。さっきからこんなのばかりで、まともに会話も続かなかった。仁美から話しかければすべて会話の最後の言葉で返されてしまうため、すぐに終わってしまうのだ。というよ

り、坂久保はまるで会話を続けたくないようにしか返事を返してくれないのだ。


「此処が社内よ」


仁美が深く考え込んでる間に、Iの本社へと到着した。

「き、綺麗…」

社内は全体が白をベースとした大理石で造られており、壁にはたくさんの部屋がると思われるドアが幾つもあり、植物など無駄なものは一切なくキラキラ輝いていた。それどころか、人は1人も見つからない。


「社長、あの。社員さんたちは一体どこにいらっしゃって…?」

「社員は各部屋に数名いるわ。皆此処では研究を行っているから。ね、静かでしょう」

「確かに…」

「ボーっとしてないで、こっちよ」


坂久保はサクサクと歩いて、一番奥の少し大きな部屋に向かった。胸ポケットから鍵をひとつ取り出し、3つの鍵穴に差し込んでドアを開けた。同じ鍵穴とはいえ結構厳重である。

「私がいつも居る…ここが社長室」

そこは先ほどの白い空間とは違い、暗めの茶色い木でできた壁や、ディスク、テーブル。そして大きな植物が1つ飾られていた。いかにも社長室というかんじだ。

それにしてもやたら広い。

ディスクの上には何枚も資料と思われる紙が積み重ねられていた。

「それから…」

「なんでしょう?」

坂久保はディスクの引き出しから連なった3つの鍵を取り出し、仁美に手渡した。

「鍵ですか」

「ええ、その『I』の文字が刻まれているのが此処の部屋の鍵。他のは後で説明するわ…後、」

「社長」

「?」

仁美は鍵をぎゅっと握り締め、坂久保の目を見て言った。

「本当に…私でよろしいんでしょうか?」

「と、言うと」

「私なんかで、秘書が務まるでしょうか?」

仁美は真剣だった。というより此処に来て、少し怖くなっていたのだ。自分は本当にここで働くのか、いきなりこんなところに連れて来られて不安でいっぱいだった。

坂久保はフッと肩で笑って、にっこりと言った。

「私が貴方を選んだのよ」

「社長…」

「私の目に狂いはないわ。そして現に私は貴方を今必要としている。…そうでしょう?」

貴方が私を必要としてくれている。

私は貴方に必要とされている。

「はい…!」

まだ、私を必要としてくれる人が居る。

まだ、私の人生は、終わってない。むしろこれが新しい私の人生の始まりなのだ。

今日からここで坂久保の秘書として働く。仁美は今までにない新鮮な気持ちに包まれていた。

これから待ち構えまだ見ぬ世界を前にして……。















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