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乙女ゲーム⁉いいえ、これは生死を掛けたパワーゲームです。

作者: 月樹
掲載日:2026/09/23

「ロザリア。婚約者であり幼馴染でもある君にこんなことを告げるのは私も苦渋の決断だが…

 君が公爵家の権力と財力を笠に着て、聖女ユウナを虐げているとの報告が入った…。 

 聖女は世界にとっても貴重で尊い存在だ。

 もしそれが本当ならば…私は君との婚約を考え直さなければならない…」


 いかにも沈痛な面持ちでその美しい顔を歪ませ遠回しに婚約の解消を告げているのは、ハーミア王国の第一王子ロナルド。

 驚愕の表情でそれを受け止めるのは筆頭公爵家長女ロザリア。王命で定められた彼の婚約者だ。

 ロナルドの腕の中には怯えたフ(・)リ(・)をしているが、その欲望のにじみ出た顔が隠せていない聖女ユウナがいる。

 そしてその周りには、ユウナに心酔した男達…

 中には留学生で隣国アルハバラの第二王子ユリウス、ロナルドの側近で宰相の長男ギレム、騎士団長の次男のアレクシス、ロナルドの異母弟で第二王子のマリウスもいた。


 ★✩★✩★✩★


 聖女ユウナは、500年ぶりに召(・)喚(・)という儀式を行い、わざわざ異世界から連れて来られた娘だ。

 召喚には天文学的な数値の魔力を必要とするため、大量の良質な魔石や魔術師の力が必要となる。

 それにかかる費用は大国の国家予算に匹敵するほどで…必然的に行うのは未曾有の脅威が迫っている時のみとされている。

 ちなみに前回に行われたのは魔王が復活した時と伝えられている。

 各国が協力して費用を負担し、世界中から優秀な魔術師が集められ、至高の聖女が召喚されたので、見事魔王は倒され平安な世界が取り戻された。


 では今回はどんな目的で聖女召喚が行われたかというと…


 教会のドン底まで失墜した権威を取り戻すための広告塔としてだった…。


 教会の上層部による献金の横領、幼女買春、敵対国への機密情報の漏洩など次々に暴かれ、教会は設立以来初の教団消滅の危機に瀕していた。

 元々はそれぞれの派閥の権力争いが切っ掛けでお互い暴露して足を引っ張り合っていたのが、やり過ぎて人々の信頼を失い教団存続が危ぶまれる状況にまで至り、やっと潰し合っている場合じゃないと力を合わせて考え出した苦肉の策が聖女召喚による民の人気取りだった。

 でも世界滅亡の危機を回避するため各国が協力して行う召喚とは異なり、教会がなけなしの金を集めて行った召喚はショボく…




 呼び出せた聖女もそ(・)れ(・)な(・)り(・)だった…。




『聖女って…もっと神々しい存在なのでは…?

 髪色が珍しいだけでその辺にいる町娘にしか見えませんが…』

『聖女様はどんな神業が使えるのですか?

 えっ…擦り傷を治せる…しかも一日一回だけ…』

『いやいや、特別な能力がなくても異世界から来られた聖女様なら素晴らしい知識をもたらしてくれますよね!!

 …ネット繋がってないから無理…?

 聖女様…ネットとは何でしょうか…?』

『でも聖女ユウナはあんなに何の才能も持たないのに、「自分は乙女ゲームのヒロインだから大丈夫!!」と自信満々に豪語しておられます。オトメゲーム…??とは何なのか存じ上げませんが、きっと我々には理解できない神の御業を授かられているのでしょう…。

 とりあえずはユウナ様が望まれた通りの贈り物をして、ご希望通り王立学園に通えるように手配しましょう…』

『聖女様が望まれた贈り物って…?

 ああ…あの怪しげなピンクの露店で売っているクッキーと香水のことか…。

 冗談だと思うが“恋に効く秘密のアイテムよ♡”なんておっしゃられていたな…あんな如何にも胡散臭い老婆が売るものを召し上がられて本当に大丈夫なのか…?』


 こうして王立学園に通いはじめた聖女ユウナは、本当にどんな力を使ったのかは不明だが隣国の王子を皮切りに高位貴族達を次々と虜にし、ついには第一王子まで陥落して…冒頭に至る。


 今は学園の卒業パーティーの真っ最中で、会場には生徒達だけでなくその保護者である王族、高位貴族、異国からの招待客も揃うなかでの出来事であった。


 ★✩★✩★✩★


「ロナルド様。このような大切な席でそんな根も葉もない話をされるなんて…

 優秀なあなた様がいったいどうなされたの?

 それに…聖女様を虐げたとは…?

 このわたくしが何をしたとおっしゃるのかしら?」

 ロザリアは大好きな婚約者の乱心を本当に心配している…といった慈愛に満ちた眼差しで見つめながら、自分に掛けられた謂れなき嫌疑を憂いて見せた。

 天使のように光り輝く金色の髪にこぼれ落ちそうに大きなサファイアの瞳、小柄で妖精のように愛らしいロザリアが『困ったわ』と少し小首を傾げるだけで、周りにいる者たちは感嘆を漏らす。

 婚約者である第一王子に人前でこのような非道な行いをされても動じることなく、相手を気遣い対応できる公爵令嬢にみんなが見惚れていた。



 もちろん全て計算ずくである。



 支配層に生まれた者ならば、人心掌握のために美しい見た目を活かし、人々を惹きつける言動に気を配ることは当然である。

 ロザリアも王太子妃教育はもちろん、子供の頃から公爵令嬢として相応しい教育を受けている。

 特権階級など表向き華やかで美しく見えるが、その裏で権謀術数をめぐらし互いに足の引っ張り合いをするのが常だ。油断すればいつ引きずり降ろさせるか分からない。

 例え婚姻で縁を結んだとしてもそれは変わらず、いつ寝首を掻かれるか分からない…。

 それは王族といえど例外ではなかった。


 ロナルドは自らの能力を高く認めているが、もし敵対するようなことがあったとしたら一番脅威になるのはロザリアだと心得ていた。

 確かに予定通り妻となって協力してくれたらこんなに頼もしい相手はいないが… 

 もし万が一ロザリアが心変わりして異母弟マリウスの陣営についたら…?

 我が国とあまり関係が良好とは言えない帝国の王子と通じていたら?


 筆頭公爵家であるカサンドラ公爵家と縁を結ばず、他の者を婚約者に選ぶなどあり得ないのでロザリアと婚約してはいるが…

 婚約しても尚、ロナルドの懸念が払拭されることはなかった…。


 そのロナルドの不安を更に煽ったのは、二人が学園に入学してから第二王子陣営の動きが活発化したことにもよる。

 第二王子の後援者であるサニア男爵が密かにカサンドラ公爵に接触しているという情報も入り…それがロナルドの疑心暗鬼に拍車をかけた。


 ★✩★✩★✩★


 正妃であるロナルドの母の生家がオルコット公爵家なのに対して、第二王子の母である側妃の生家はサニア男爵家。


 サニア男爵家は元々商人あがりで、飢饉の際にその財を投げ売って王国民を助けたことで現当主の祖父が叙爵されたことに始まる。

 爵位こそ低いが…その卓越した商才で築いた資産、各国に通じた情報力は侮れない。


 正妃が嫁いで三年経っても子供が出来なかったため側妃の選定が行われ、隣国への留学経験もある才媛の誉れが高いサニア男爵令嬢リリアーヌが迎えられた。

 当時、王国内に公爵令嬢は正妃となったマルガリータ一人だったため、中々子供が出来なくても特に焦ることはなく自分の地位を脅かす者などいないと侮っていた。

 しかし利発で美しい側妃が輿入れしてすぐに王を虜にし、日を空けずリリアーヌの元に通うようになったことは、王妃であるマルガリータに今までなかった危機感を抱かせた。

 意地でもリリアーヌより先に第一王子を産む!!と今までは怠惰であった生活を改め、子供を授かりやすい食生活にしたり運動をしたり…と努力した結果、何とかその願いは成し遂げられたのだが…

 すぐに寵姫であるリリアーヌにも第二王子が生まれたため、マルガリータの心は穏やかにならなかった…。

 今まで何でも思い通りになったマルガリータにとって、そんな状況など我慢できるはずもなく…


 対する側妃もさすが策士と謳われるサニア男爵の娘。黙って殺(や)られたりはしなかった。


 それから水面下では正妃と側妃の生死をかけた攻防戦が繰り広げられるようになる…。


 ★✩★✩★✩★


 そんな全てが拮抗した状態の中、突如現れた聖女ユウナ。


 彼女は歴代の聖女達のような美しさも能力も持たないのに、何故か学園の高位貴族の令息や隣国の王子、さらには第二王子までをホイホイ虜にしていった。


 何でも彼ら曰く、悩みを聞いてくれ解決してくれた優しさに惚れたそうだ…。


(王族や高位貴族が、なぜ聖女とはいえ身元のはっきりしない娘にペラペラと弱みを見せたのかはとても理解できないが…)


 ユウナは第一王子であるロナルドにもやたらと手作りのクッキーを勧めてきたり、過度なスキンシップをとろうとしたり、許可なく名前を呼んできたり…と不審な行動が多く、護衛の者に咎められていた。

 本来なら側近の二人もこれを諌めないといけない立場だが、聖女に骨抜きにされた彼らでは役立たなかった。 


 (この問題が片付いたら、側近はクビだな…)


 ロナルドはこの騒動で婚約者を交代しよう…なんてことはもちろん考えていない。

 どう見積もっても国で一番王妃となるのに相応しいのはロザリアなのだから…。


 ただ瑕疵をつけることで、第二王子の陣営がロザリアに興味をなくすようにしたかっただけ…

 そしていつも澄ましたロザリアにちょっとマウントを取りたい…という密かな願いがあるだけだった。


 第二王子のマリウス自体は面倒くさがって王位になど興味はないが、チョイチョイ美少女のロザリアを口説いてくるし…

 マリウスの母である側妃は虎視眈々と第二王子を王太子に立てることを狙っている。


(まあ…元々野心のないリリアーヌ様にそこまで思わせたのは、母がマリウスに何度も暗殺を仕掛けたせいなのだが…)


 ★✩★✩★✩★


 第二王子マリウスは祖父であるサニア男爵と側妃である母の期待のもと、王太子になるための英才教育を受けて育った。

 祖父や母の血を受け継ぎ、それなりに優秀なので勉強すること自体は何の苦もないが…

 王や王太子なんて窮屈な立場は自分の性に合わないと思っていた。

 確かに王太子となって、幼い頃から何度も暗殺を仕掛けてきた王妃に一泡吹かせてやりたい気持ちもあるが…

 そんな一時の愉悦のために、自分の人生を縛られるのは嫌だった。

 そもそもお互い意地を張り合っているが、ロナルドとロザリアはどう見ても両片思い。

 そんな中に割って入るつもりはない。

 兄の反応が面白いから、わざと二人の間に入ってちょっかいを掛けてみたりするけれど…ロザリアにはそんな幼い行動に呆れられていた。


 今はそれよりも、祖父の交易を通じて知り合った幼馴染の隣国の第二王子ユリウスを救う方が大切だ。

 ユリウスとマリウスはお互い身分の低い側妃から生まれた王子で、境遇が似ていることからすぐに意気投合した。


 幼い頃から度々毒を盛られるマリウスを救うため、祖父のサニア男爵は希少な薬草の産地として有名な隣国のナイール男爵家と直接取り引きをしていた。

 ナイール男爵領はハーミア王国に隣接する自然豊かな地にあったため、マリウスも静養のため度々祖父に連れられてナイール男爵領を訪れていた。

 そこで同じく祖父の領地で夏を過ごしていたユリウスと出会ったのだ。


 身分の低い側妃から生まれた第二王子であること。

 度々王妃に命を狙われること。

 乗馬が好きなこと。

 勉強するより冒険譚を読む方が楽しいこと。


 共通点が多い二人が仲良くなるのは必然で、気がつけばお互い最も心の許せる無二の友となっていた。


 その親友が今、本当に窮地に立たされている。


 助けるためにマリウスは動いた。 


 隣国では昨年、王が崩御してから王妃に権力が集中し、側妃とその王子であるユリウスは命を狙われることになった。 

 隣国アルハバラは実力主義の国のため、生まれた順や正妃、側妃の生んだ子に関係なく優秀な王子が王太子に選ばれあとを継ぐ。

 ユリウスの兄であり、正妃の王子であるノーマンは度々問題を起こす痴れ者として有名であった。

 そのため次の王太子には優秀な第二王子ユリウスが選ばれるだろうと誰もが予想したのだが…

 二人の学園卒業後に行われるだろう王太子選定を前にして王が亡くなった。


 この突然の王の死を怪しく思わぬ者はいない。けれど正妃はその権力で皆を黙らせた。


 側妃は実家に、ユリウスは親友であるマリウスがいるハーミア王国に留学という形で逃亡してきたが…

 この王太子選定の儀のため、学園を卒業したら国に返らなくてはならない。


 いくら王妃といえどいつまでも民の声を抑えつけるのは難しいため、その時に確実に仕留めにくるだろう…。


 能力でいえば確実にユリウスが勝っているが、正妃にはファラルシア公爵家という強い後ろ盾がいる。

 それを覆すほどの強い権力となると…


 《聖騎士団結社》


 それは聖女信仰の強い隣国を中心に世界中にその会員を持ち存在する秘密結社のようなものだ。

 温和な教会とは異なり、狂信的な聖女信者の集まりで、会員は男性のみで組織される。

 それこそ聖女を守るためには犯罪も厭わない集団だ。

 元々は500年前に召喚された聖女の熱狂的な崇拝者達で作られた組織だった。 

 当時の聖女は優秀で美しかったため、今の聖女よりも遥かに多くの取り巻きがいた。

 その中には各国の王族、高位貴族、神官達もいたが、聖女の心を射止めたのは魔王討伐の旅に同行し、一緒に魔王を倒したアルハバラの王太子だった。

 聖女がアルハバラの王妃となってからも、彼女を慕い続ける者は多く、その者達が聖女に生涯忠誠を誓うために作られたのが《聖騎士団結社》だ。

 結社が布教した聖女信仰により聖女は美しく神格化され、多くの若者がその尊い騎士道に憧れ…それは現在まで続く。

 誰が会員かは明らかにされていないが、かなりの高位貴族や大商人、騎士、中には王族もメンバーにいるらしい…。

 明らかでない分どんな大物が潜むか分からず、決して敵に回してはいけないのが、この《聖騎士団結社》であった。


 ユリウスを守るためには、もうこの手しかない…


 聖女ユウナには明らかに特筆すべき点はなく…聖女信仰を持たないマリウスからしたら特に何の魅力もない。

 けれどユウナが異世界から召喚された聖女であることは教会も認めている紛うことなき事実だ。


 例えその容姿がどんなに平凡で能力がショボくても…

 聖騎士団結社(聖女フリーク)の者にとっては、聖女というだけで尊い存在なのだ。


 マリウスはユリウスに聖女ユウナを口説いて連れて帰るように勧めた。

 幸い、ユリウスは昔から美人や優秀な女性には特に惹かれず、少し変わったユニークな者に興味を持つ性格だからいけるだろう…。

 聖女ユウナがユリウスの妻となれば、《聖騎士団結社》はユリウスに味方してくれる。

 正妃の後ろ盾であるファラルシア公爵家といえども《聖騎士団結社》とは対立したくないため、ひとまず引くだろう…。

 まずは王太子となり、そこから徐々に力を付けていけば良い。どちらが王に相応しいかなど火を見るより明らかなのだから…。


 ユリウスだけが近づけば魂胆が見え見えで教会に警戒されるだろう…とマリウスも魅了されたフリをして聖女に侍っていたら、何故か王子たちを虜にする聖女に興味をもったのか他の高位貴族達も近づいてきた。

 中には異母兄の側近までいた…。

 まあ予想外だったのは、興味本位で近づいてきたはずの高位貴族の子息達が本当に聖女の虜になっていたことだ。 

 聖女とはいえ、婚約者でもない女生徒に軽々しく身体を触られ、毒見もしてない怪しげな手作りの菓子を食い、家族にも話さぬような機密事項をペラペラ話して…

 アイツら高位貴族として将来大丈夫か…?と横目で見ていたら…兄も同じ目をして見てたから終わったな…。


 ★✩★✩★✩★


 結果、聖女ユウナはアルハバラ国の王子ユリウスを選び、隣国へと嫁いだ。


 というか…筆頭公爵家令嬢であるロザリアに観衆のいる前で冤罪をかけるという喧嘩を売った聖女は、ジワジワと追い詰められ隣国に逃亡するしか手立てがなくなった…。

 もちろんユリウスは両手を広げウエルカ厶だ。


 なけなしの資産を投げ売って聖女召喚した教会としては、隣国に持って行かれるなんてトンビに油揚げをさらわれるようなものだったが…

 その後聖女ユウナが作った“カワイイ”文化が若い世代を中心に爆発的に流行し、教会は聖女公認の“カワイイ”グッズの販売で何とか教団消滅の危機を乗り越えた…。


 第一王子に誤った情報を与えた側近達は外され、聖女に侍っていた高位貴族達も貴族としての危機感が足りないと、それぞれ家から除籍された。


 ★✩★✩★✩★


「ロナルド様…わたくしが貴方様の婚約者から外れるということがどういうことなのか…分かっておられますの?」

「…ごめんなさい…」

「ごめんなさいでは済みません。

 ど(・)ち(・)ら(・)の(・)王子が立たれるにしても、わたくしが王太子妃となることは確定しておりましたので、すでにわたくし王太子妃教育を終了しております。

 ということは、すでに王家の秘匿情報まで知らされてますので、わたくしが王家の婚約者から外されるということは毒杯を賜ることを意味します」

「そ…そんなつもりは…。私は決してロザリアを廃そうなんて…そんな気は…」


 毒杯なんて物騒な言葉が出てきてロナルドは一気に慌て始めた。


「まあ、そうでしょうね…。

 わたくしなら何とかするだろうと、そこまで考えておられなかったのでしょう?

 あの濁した追及の仕方からも、本気で婚約破棄なぞする気もなかったでしょうし…」


 今日も王宮の庭園では定例のお茶会が開かれている。

 これはロナルドとロザリアの二人が婚約してから毎月欠かさず開かれており、美しい花々が咲き乱れる庭園の東屋で、優雅に行われるものなのだが…

 今日はいつもと様子が違った。


 満開のバラの花を背に、気品高く腰掛け香り高い紅茶とお菓子を楽しむロザリアの前に、そのまま地べたに座らされ謝り続ける第一王子ロナルド。


 さすがにいつも寛容に微笑みを絶やさないロザリアも今回ばかりはご立腹でなかなか許してもらえなかった。


「今回の失態が元で、婚約者が第二王子に変更されていたかもしれませんのよ?」


「ロザリア!!やっぱり君はマリウスの方が良いのか?」


「何を言ってますの?あんな人を駒にして遊ぶ人は絶対嫌だから、貴方の罪をこんな軽いもので済ませてあげてますのよ」


 ロザリアが本気になれば、今回の断罪劇をひっくり返し、裏工作で更に重い罪を捏造しロナルドから王位継承権を奪うことなど容易いことだ…


 けれどそんな自分の得にならないことのために労力を使う気はない。


 ロナルドは自分のことを策士だと思っているが、ロザリアに言わせればワンワン吠えながらもいつもブンブン尻尾を振っているかわいいワンちゃんにすぎない。

 対して、第二王子マリウスはいつもヘラヘラ笑っているくせに、気がつけば人を上手に自分の思うように動かしている性悪キツネ。 


 今回もわざとカサンドラ公爵家に近づいてロナルドを動揺させ、上手く動かした。

 もちろんフリだけでなく、公爵家に用事があって動いていたのだけれど…


 (サニア男爵ならロナルドに気づかれることなく動くことも出来たのに、わざと見えるように動いた。

 本当にそういうところ…あの一族はたちが悪い…)


 サニア男爵がカサンドラ公爵家に働きかけたのは、うちが《聖騎士団結社》に何かしらのパイプを持つと嗅ぎつけてきたからだった。


 (そう、まだそこまでしか悟られていないようだけど…

 実はカサンドラ公爵家当主である父こそ、現在の《聖騎士団結社》の最高幹部を務めている…。

 本当…あんな怖そうな顔して、少年時代から物語の中の騎士に憧れ、とうとうその富と権力を使って最高幹部にまでなってしまうなんて…

 お母様は知らない。ロザリアは自身の情報網を通じてそれを知った時、呆れて顎が外れかけた。

 とりあえず父の公爵としての尊厳を保つために、その情報は永久保管庫にしまってある。

 何かしらどうしても父を脅さなければならなくなる時までは封印しておくつもりだ。

 出来れば開ける機会などなければ良いと思う…)




「ロザリアちゃん、今日もカワイイね〜。

 これあげるから今度デートしない?」

「マリウス!!私の婚約者を口説くな!!」

「え〜っ!?兄さん、こんなところで這いつくばって何してるの?新しい遊び?」

「まぁ!!それは限定品でなかなか手に入らないというブサかわ聖女ユウナちゃん人形じゃないですか〜!!どうして手に入れましたの?」

「聖女との結婚を後押し(国外追放)してくれたお礼にって…ユリウスからロザリアちゃんにだよ」

「わたくしは大したことはしておりませんが…では遠慮なく♡」



 それからもアチラコチラで生死を掛けたパワーゲームは続いていますが…

 ハーミア王国とアルハバラ国ではカサンドラ公爵が主導して積極的にカワイイ文化を取り入れ、末永く友好関係が続いたそうです。


 〜おしまい〜


お読みいただきありがとうございます。


少し聖女の説明が不足していると思いましたので、神官達のおしゃべりを少し追加しております。

修整前に読まれた方には申し訳ございませんm(_ _)m

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