第八話 決意
悪魔2体を討伐。
この更新ペースで残り70体の悪魔を全滅させていくとなると、一体どれくらいかかるのでしょうか、、、
生暖かい目で見守りつつ長くお付き合い頂けると幸いです。
天界から来たという謎の男ヘルメスから渡された魔剣によって、学院に潜んでいた悪魔マルバスに辛勝したセシル。天界に魔剣ーーにわかには信じ難い内容であったが、先日のミグレクト侯や先ほどの教師に扮していた常軌を逸した生物ーー悪魔と対峙してきた以上、もはや空想と断じることも出来なかった。
「天界?鍛冶神?魔剣?はぁ…冗談きついな。あんた色々知ってそうだから教えてくれないか?」
「いいっすよ。とりあえず、そこで倒れてる彼ら…って全員は無理っすから、気絶してるだけの子たちは放置して、そこの裏で気絶してる負傷した君の友人を保健室に運んでから、学院の外で話すっす。ここの食堂じゃ誰が聞いているかわからないっすからね」
ヘルメスの言う通り、麻生を背負って保健室のある学舎に向かう。悪魔が消滅したのを誰がどこで見ていたのか、先ほどまでセシルの通行を拒絶していた結界はすでに解除されていた。
ーー結界がなくなっている?お早い対応だことで。
麻生の手当てを保健医に任せ、ヘルメスとセシルはちょうど昼休みを報せるチャイムとともに学院の敷地から出て、街中のカフェへと入った。
「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」
「ん〜フルーツタルトと紅茶のセットをお願いするっす。セシル君は?」
「セットって…がっつり甘味休憩するつもりなんだね…」
「細かいことを気にしてちゃ立派な大人にはなれないっすよ!ここは俺が奢るっす。さっ、お好きなやつどーぞ」
「じゃあ…ガトーショコラとコーヒーのセット。あ、コーヒーはブラックで」
「渋いチョイスっすね〜。じゃあ、本題。何が聞きたいっすか?」
注文を終えてウェイトレスが去っていくと、ヘルメスは早速話を切り出してきた。聞きたいことは山ほどあるが、セシルはひとまず今一番気になっていることを尋ねた。
「悪魔って何が目的?」
「ほほう、そうきたっすか。悪魔はね〜この地上を支配して自分たちの世界に変えること…じゃないっすかね〜」
「地上を支配?でも、僕が遭遇した悪魔はどちらも人間として社会に潜んでいた。影響があったのはごく身近な人間ばかりだ。そんな草の根活動で支配なんて、出来るかな?」
ミグレクト侯の屋敷で頭の中に蘇った断片的な話の記憶。別次元の生物で、死ぬことが出来なくなった人間の身体を乗っ取って地上に現れたのが悪魔だという。たしかにヘルメスの話と辻褄は合うが、どうにも悪魔の行動は規模が小さい気がする。
「ん〜俺も悪魔と直接話した訳じゃないっすから、正確には分からないっすけどね。実際、悪魔は神々に別次元へと幽閉されて並々ならぬ憎しみを抱いているんすよ。だから、地上の支配を足掛かりに天界へ攻め入ろうと企んでいるらしいっすけどね」
話の中でセシルはもう一つ気になったことを尋ねた。"人が死ねなくなった"という事案である。生あるものはいずれ死が訪れる。そんな世の理を覆す出来事がなぜ起きたのかーーこの問いにヘルメスは少し困惑の表情を見せた。
「あ、えーっとっすね…死を迎えた人間は死を司る神様が魂を回収しに行くんすけど…その神様がちょっと"やらかした"っす……ハハ…」
「やらかした?どうしてそんな苦笑いなんだ?」
尚も痛いところを突いてくるセシル。堪らずヘルメスは質問タイムを打ち切り、その場から逃れようとした。
「そ、そうだ!俺、この後、予定があったっす!セシル君、ごめんっす!俺もう行かなきゃ!!」
慌ただしく会計を済ませ、店を後にするヘルメスにセシルは首を傾げた。魔剣や天界のことも聞こうと思っていたはずが結局2つ目の質問で打ち切られ、シコリが残ったままセシルはガトーショコラを頬張ると店を出た。
ーー悪魔とか神様とか…世の中知らないことだらけだ。悪魔に関しては討伐隊とか編成されてるのかな。一度、リエリカに聞いてみよう。
店を出た足で、セシルはラグナス王国の王や騎士団のいるバルフレア宮殿へと向かった。宮殿前には当然のことながら衛兵が警備している。セシルは物怖じすることなく衛兵に尋ねた。
「あのー騎士団のリエリカに会いたいんだけど、どうすればいい?」
「ん?リエリカ副団長に会いたいだと?何者だ?」
「僕はセシル。リエリカとは…なんだろ。顔見知りなんだけど」
「ふざけてるのか!お前みたいなガキが副団長と顔見知りの訳ないだろ!ファンか?ファンなのか!?副団長、美人だし多いんだよなぁ…お前みたいに押し掛けて来る輩が」
「いや、ちが…」
「何を揉めているの?」
「っ!?リエリカ副団長!?はっ!このガキが副団長のファンで会わせろと宣っておりまして!追い払っていたところです!」
「ファン?あら、セシル君。こんなところに来るなんて、どうしたの?」
ほんの数秒前まで顔を真っ赤にしていた衛兵は、顔から血の気が引いたのか真っ青な顔をしている。ただの学生が王国騎士団の副団長と本当に顔見知りとは誰も思わない。とはいえ、さんざ無礼な態度をとっていたことに対しては追求があるかもしれない。
「私は彼と少し出るわね。もし団長に聞かれたら、"ファンとデート中"とでも言っておいて」
衛兵の顔が更に強張った。兵士たちの間でも人気の副団長が自分たちよりもひと回り下の学生とデートだと言う。唇を噛み締めながら衛兵は敬礼をした。
「リエリカって副団長だったんだ」
「ええ、こう見えてこの国で2番目に強いってことになるわね」
雑談をして街を歩きながら、セシルは学院に悪魔が潜伏していたこと、天界から来たヘルメスという胡散臭い男から魔剣を渡され、その魔剣で悪魔を倒したことなどをリエリカに話した。
「そうなの…それは大変だったわね。身体はもう大丈夫なの?」
「うん、たぶん大丈夫。リエリカは魔剣って聞いたことある?」
「それはよかった。ええ、魔剣は鍛冶を司る神、ヘファイストスが打ったと言われている剣ね。この世界に幾つか存在していて、だいたいは遺跡などの奥深くに眠っているらしいけど、未確認のものがほとんどだわ。そのどれもが不思議な力を持った剣だと聞いたことがあるけど…そんな剣を持っていたってことは、そのヘルメスって人は本当に天界の人で、神の使いなのかもしれないわね」
「神の使い…うーん、そんな風には見えなかったけど。そんなレアアイテムをどうして僕なんかに託してくれたんだろ。僕が持つには荷が重い。リエリカに預けてもいい?」
「いいえ、それは君が持っておいた方がいいと思う。セシル君はこの短期間で2体の悪魔と遭遇している。悪魔は読んで字の如く"悪"しき"魔"力を持つ者。魔法に耐性を持つ者が多いと聞くわ。セシル君は魔法が専門でしょ?もしかすると、今後もまた悪魔に出会す機会があるかもしれない。その時のために魔法だけじゃなく剣技も磨いておいた方がいいと思うの」
「そんな不吉なこと言わないでよ。剣技…学院の授業で基礎的なことくらいは習ってるけど」
考え込むセシルを見ながら、何か思いついたようにリエリカは薄らと笑みを浮かべた。
「それだけじゃ心許ない?私が教えてあげましょうか?」
「うん、頼むよ」
「即答…なのね。フフ、いいわ。しばらく遠征もないし、これから学校が終わったらバルフレア宮殿にいらっしゃい。城門の番兵には話は通しておくから」
街の外の平原かどこかではなく、宮殿に来いとはどういうことなのか。セシルは少し疑問を感じつつ、リエリカに最後の質問をした。
「国の至る所に悪魔が潜伏しているかもしれない。王宮では討伐隊を編成するとか、そういう話は出てない?」
「そうね…編成したいのは山々なんだけど、そこに人手を割く余裕がないのよね。ウルド帝国がいつ攻めてくるかわからない国境の防衛任務があるから」
事態は思っていたより深刻かもしれない。ラグナス王国内の戦いのプロは国境と王宮の防衛で手一杯ということは、ミグレクト侯のように城下で起きた悪魔騒動であれば騎士団が対応出来るかもしれないが、王都ジャニスの外にある街や村で悪魔が出没した場合、誰が対処するのだろう。街や村に腕自慢が1人いたとしても、1人で対処できるほど悪魔は甘くない。
国内にどれほどの悪魔が潜伏しているのかわからないが、外堀から徐々に支配され身体を乗っ取られてしまえば悪魔とその眷属は増殖していき、やがてこの王都に攻めてくるかもしれない。育ての親であるユドラ伯のいるトロワ領も例外ではない。
「王都の外に住む人たちを見殺しには出来ない。僕がやる。本気で鍛えてほしい」
「フフ…ええ、そのつもりよ。死なない程度に頑張って頂戴ね」
二度の悪魔との遭遇を経て、何かに突き動かされるかのようにセシルは決意を固めた。
その後、リエリカは薬草など物資を買ってから王宮に戻ると言って別れた。セシルは寮への帰路の途中、校門から走ってくる麻生の姿を見た。
「セシル!お前どこ行ってたんだよ!探したぜ!」
「元気になったのか」
「おうよ!保健教諭のアリューシア先生にバッチシ治癒魔法をかけてもらったからよぉ!」
ーーバッチシ?なにそれ…
「お前、あの怪我でバケモン倒したんだってな!どうやったんだよ?!」
セシルは麻生が気絶してから起きた出来事と、麻生の言うバケモンが悪魔という存在であること、そしてその悪魔を打倒するために騎士団の副団長に稽古をつけてもらうこと等をかいつまんで話した。
「悪魔ぁ!?ヤベェな…悪魔倒したとか、セシルどんだけだよ!俺はコテンパンにやられちまったからなぁ…その修行、俺も行きてえ!!」
「え、どうだろ…剣技の稽古だから、ジンには必要なくない?」
「お前!そんな寂しいこと言うなよ!とりあえず付いて行くからな!!」
こうして、翌日からセシルと麻生は打倒・悪魔に向けてリエリカの修行を受けることになるのだった。
セシルと麻生、2人ともスキルが地味すぎて盛り上がりに欠けますよね。←いきなりの自虐
私としても本当はド派手なバトルさせたいんですけど、、、設定ミスったかな。
いやいや、これからですよ!次から修行して強くなる、友情・努力・勝利の某少年誌的な展開になっていく!はず!




