第六話 ハデスの憂鬱
変なこだわりで毎回、タイトルに死神と付けていましたが、限界が来ました。
久々に神さまたち登場回です。
、、、略して神回!!←すみません
別世界からの転生者と思われる麻生 迅が編入してきた翌朝ーー
「セシル!!なぁ!セシルって!!聞いてくれよ!!」
「朝から暑苦しいな…」
教室に入ってくるなりセシルの元に駆け寄ってきた麻生は目を血走らせながら話しかけてきた。
「俺、なんかすげえチカラに目覚めたくさい!!」
「は?くさい?何が?」
知り合って2日目にして、すでに麻生への対応が雑になっていたセシルだった。後ろの席ではワッツが苦笑いをしている。
「ザ・ワールドだよ!!ジョジョの!あれ!!いやスタンドは出ねぇんだけど!!時は再び動き出す…的なアレだよ!!わっかんねぇかな〜」
「いや、落ち着こ。まったく意味がわからん」
セシルに深呼吸をさせられ、呼吸と伝えたいことを整えてから話すようなだめられた麻生はヒッヒッフーッ!ヒッヒッフーッ!と早いテンポで息を整えていく。
ーそれ妊婦のやつだし。この人、やっぱバカなのかな。
「すまん。寝てねぇから朝から興奮しすぎた」
「へぇ…トレーニングに没頭しすぎたとか?」
「セ、セシル君…さすがにそれはないんじゃ…」
「そうなんだよ!!使い方とか弱点とか色々考えながらトレーニングしてたらよぉ…朝だった」
「……え」
冗談半分で言ったセシルと、それはさすがに馬鹿にしすぎだよと慮ったワッツ。2人の唖然とした声がユニゾンした。
「とにかく!なんかわかんねぇけど、1〜3秒くらい時間が止められるようになったんだって!」
「……え、えええぇぇぇっ!?」
思っていたトレーニング内容と違ったセシルの驚きと、純粋に強能力への驚きのワッツの声がユニゾンした。
「んで!上手く使いこなせるようにトレーニングして、なんとかモノになってきたっからよぉ!見せてやるよ!」
麻生は目を閉じて集中し始めた。次の瞬間、目の前から麻生の姿が消えていた。そして、教壇の前から麻生が声をかけてきた。まるで瞬間移動したかのように動いた形跡も何も感じることができなかった2人は呆然としていた。教壇から自分の席に戻ってきた麻生は"ドヤ"が溢れ出んばかりのドヤ顔だった。
「なっ??すごくね?!」
「それは魔法なのか?」
「いや、わからん!」
ワッツが昔、図書室で読んだ文献で古代魔法には時を止める魔法があったらしいが、詠唱もなしに発動していたところを見ると、魔法ではない可能性が高い。
麻生が目覚めた能力は結局、謎のまま授業が始まった。数秒とはいえ時を止める能力ーーいくらでも悪用できそうなこの能力にセシルは一抹の不安を覚えながらも授業に集中した。
その頃、地上の遥か底の世界、冥界メガリスーーここの王、ハデスは近頃、あることで頭を悩ませていた。
"ゼウスよ、タナトスの後継の死神モルスはちゃんと働いておるのか?このところ、死者の魂がまったく冥府に訪れん。どうなっておるのだ"
"悪魔に先を越されている。モルスが人間の死を感じ取って現場に向かうと、すでに魂を喰われ、不死者が悪魔の眷属に変えられておるのだ。地上の悪魔をどうにかせねば、この状況は悪化し続けるであろう"
天界のオリュンポスにいるゼウスと念話で話し合うも、解決の糸口が見つからない状況にハデスは苛立っていた。最高神であるゼウスは強大な力ゆえ、地上に干渉できない。そのため、ゼウスは打開策として使いであるヘルメスを地上に潜入させ、さらには召喚術で全く別の次元からも優れた人間に覚醒能力の0.5割を与え、地上に召喚したという。
「ヘルメスなどただの運搬屋ではないか。運搬屋に悪魔が滅ぼせるものか!異世界の人間とやらも役に立つのか怪しいとこだ。ゼウスのやつめ、生ぬるいことを。そもそもタナトスの奴めがしくじりさえしなければ、こんなことにはなっておらんかったのだ。こうなれば……」
苛立ちを抑えきれないハデスは目を閉じて瞑想を始めた。
4限目、魔法の実技授業を行なうということで、生徒たちはグラウンドに集められていた。担当教師が急な病欠のため代理の教師の提案で模擬戦を開くことになったのだ。
「模擬戦って…大丈夫なのかよ?下手したら大怪我じゃ済まねぇだろ」
「うん、こんなことは一度もなかった。あの教師、マルバスって言ったっけ?何か嫌な感じがする」
マルバスは適当に生徒を指名し、魔法による模擬戦を始めるよう指示した。
実戦経験ゼロの学生がいきなり模擬戦をするよう指示され、どちらの生徒も困惑しているようだったが、マルバスは鋭い目つきで睨みつけているため辞退できるような雰囲気ではなかった。覚悟を決めたのか一方の生徒が氷結魔法を放ち、地面を這うように氷柱が相手に向かって走っていく。もう一方の生徒も仕方なく炎魔法でそれを相殺する。
「そんな甘い攻撃、戦場に出たら死ぬぞ!!相手を殺す気でやれ!!」
マルバスが檄を飛ばす。追い詰められるように互いの生徒は魔法を放っていく。そして、片方が隙をつかれ相手の雷撃魔法が一直線に生徒を貫こうとした。
しかし、わずかなところでセシルが張った魔法障壁により雷撃は止められた。
「貴様!なぜ止めた。これは実戦形式。命をかけてやるからこそ意味があるんだぞ!!」
「いや、おかしいでしょ。僕ら学生ですよ。命までかける意味がどこに……うっ!?」
反論するセシルを急に激しい頭痛が襲う。そして頭の中に声が鳴り響いた。
"お前は責任を果たさねばならぬ。僅かばかりだが、力を授ける。見えざる脅威を前にした時、こう唱えるのだ…『ファントム・メナス』と。力はそれに応え潜む魔を見つけ出せる。これを以て悪魔をすべて討ち滅ぼせ"
声が聞こえなくなると、頭痛は止んだ。幻聴だったのだろうか。一瞬の出来事だった。セシルは確認するように呟いた。
「……ファントム・メナス」
その瞬間、セシルの左目がアクアマリン色に輝きだし、視界に変化が起きた。
なんと、目の前のマルバスが立っていたはずの場所に禍々しい獅子の姿をした魔獣がいるのである。
「これは…な、何が…」
左目を閉じて右目で見ると、人間のマルバスの姿をしている。今度は右目を閉じて左目で見ると、獅子のような魔獣がいる。
ーー誰だか知らないけど、これがチカラなのか?出来れば両目にして欲しかった。左右で違うものを見ていると目がおかしくなりそうだ。
「おい!貴様!!何なんだ!試合の邪魔をするな!さっさと下がれ!!」
"潜む魔を見つけ出すことが出来る"ーー頭に響いた声の言うことが本当ならば、目の前にいるこのマルバスという男は獅子の悪魔ということになる。
セシルは意を決してマルバスに向けて魔法を放った。
「トルブレード!」
魔法が発動し、つむじ風がマルバスを包む。真空の刃が風の中でマルバスの身体に傷を付けた。教師に攻撃を仕掛けるという異常な行動に出たセシルに、模擬戦中だった生徒たちは完全に手を止め立ち尽くしている。
周りの生徒たちもある者は悲鳴をあげ、ある者は口が開いたまま呆然とその様子を見つめている。些細なことは気にしない麻生ですらも、これには表情を強張らせていた。
「お、おい…セシル。お前、さすがにそれはマジィだろ…」
全身に切り傷を負ったマルバスは怒り狂ったかのように咆哮をあげると、人の姿が弾け飛び皆の目にもセシルが左目で見ていた獅子の魔獣の姿を曝け出した。
「ぅおぉぉぉぉぉっ!!!貴様っ!!殺してやるっ!!」
マルバスの咆哮は音の衝撃波を生み出し、生徒たちを吹き飛ばした。衝撃に耐え立っていたのは腰を落として踏ん張ったセシルと麻生だった。
「なんなんだよ…あれ。二足歩行のライオンのバケモン?背中から人間の腕みたいなのが生えてやがる。4本腕とか…セシル、どうすんだよ?」
表情は引き攣っているが、意外と冷静に尋ねてきた麻生にセシルは一言答えた。
「……やろう」
「っしゃあ!!俺たちでみんな守ってやろーぜ!!」
頬を両手で叩き気合いを入れると麻生は両手を前に構えた。セシルも手に魔力を込め詠唱を始める。
「人間風情がこのマルバスに勝てる訳がないだろうがぁっっっ!!」
マルバスの怒号で再び衝撃波が2人を襲う。それを耐え凌いで麻生がまず攻撃に転じた。一気に距離を詰めてボディに中段蹴りを放つ。しかし、マルバスの身体は岩のように硬く、ダメージが通ったような感じは皆無だった。麻生はすぐさま後方へ飛び退いた。
「セシル!あいつ、めっちゃくちゃ硬ぇ!!俺の攻撃じゃ歯が立たねぇ!お前の魔法でいけるか?」
「どうだろ…前やった時はノーダメだった。ランスレイ!!」
マルバスの周りから光の槍状のものが5本現れ、一気にマルバスを突き刺そうと襲い掛かる。しかし、マルバスは4本の腕で光の槍を掴み、命中したのは脇腹を掠った1本のみだった。
「……終わりか?ぬるい!その程度とは。皆殺しだ!!」
光の槍を握り潰すと、マルバスはセシルに向かって特攻を仕掛けてきた。肩を突き出すようにしてセシルの腹部に激突すると、セシルの肋骨が折れたのか鈍い音とともに吐血しながら突き飛ばされた。
「なっ!?セシル!!クソが!!」
麻生はマルバスに正拳突きから蹴りに繋げる連撃を間髪入れずマルバスに叩き込むが、先ほどと同じくマルバスの硬い皮膚によって阻害された。
「じゃれているのか?この弱者が!!」
マルバスも同じく4本の腕による連打を麻生に浴びせてくる。ヒトの2倍の攻撃量を捌ききれず、麻生はタコ殴りにされ、その場に倒れるのだった。
気になるところで終わってしまいました。
アニメのワンピースみたいなことしてごめんなさい。
キリのいいところが見つからなかったので、、、
近いうちに更新しますので、ご容赦を!




