第三話 死神、学生になる
あれ?稲妻に打たれたタナトスは?
すみません、、、今回からいきなり学園モノです。
この空白の期間に何があったのかは徐々に解き明かされていくはず、、、たぶん
(ウソです。ちゃんとやります)
「……ァイン…起き……い……アーヴァイン!!」
「…はっ!?ヒュプノス!?」
「はあ?何を寝ぼけているんだ…まったく。アーヴァイン、この術式の抜けている部分を埋めて完成させてみろ」
考え事をしながら黒板に向かい、書かれた術式をさらっと完成させて考え事をしたまま席に戻る。
ーー家でボードゲームをしていて自分が不利になってくると、すぐに眠らせてくるんだ、アイツは。そして目が覚めると盤上は形勢が逆転しており、いつもこれで負けてしまう。
周りの様子が目に入らない状態のセシルだったが、難題であったはずの術式を容易く解いたことで先生はおろか教室にいた全員が驚嘆していた。
ーーいや待て、僕に弟はいない。夢だよな?
彼の名はセシル・アーヴァイン。ラグナス王国北東部の国境地帯に位置するトロワ地方を治めるユドラ・アーヴァイン辺境伯に引き取られた養子である。
セシルが16歳の時のこと。王都ジャニスから続く街道で帰りの馬車に乗っていたユドラ伯。この時、彼はその街道の先で魔獣に襲われ命を落とす運命だった。しかし、セシルがそれを事前に止めて救ったのだ。
街道のはずれで草を貪り食っていたセシルは、ふと街道を通る馬車を見て、脳内にヴィジョンが浮かんだ。あの馬車がこの先で魔獣に襲われる、と。セシルは走って馬車の前に飛び出した。
「待って。この先に魔獣の群れがいる。迂回したほうがいい」
御者は突然飛び出してきた少年に驚いたが、すぐに危険な行為に激昂して怒鳴りつけた。外が騒がしいと思ったユドラ伯はキャビンから様子を窺うと、馬車の前で叱られている少年に何事かと尋ねた。
話を聞けば、少年は魔獣がいるから危ないと言うが、目視できる範囲に魔獣の姿は1つもなかった。
ある日を境に突如として地上に現れた72体の悪魔たち。その悪魔が地上に生息していた野生の獣を呪法によって凶暴化させ魔獣に変えた。
そもそも街道はそういった魔獣を寄せ付けないよう整備されている。地中に埋め込まれた魔導器によって人間には影響のない程度の微力な結界が張られているのだ。それ故に街道に魔獣が現れることなど、これまでほとんどなかった。
しかし、用心するに越したことはないと半信半疑ながらもユドラ伯は、従者に命じて通る予定であった街道沿いに早馬を走らせた。すると、10分ほど過ぎて戻ってきた従者が数キロメートル先に本当に凶暴な魔獣の群れがいたと報告してきたのである。どうやら魔導器が故障していたようで、その範囲にだけ結界が張られていなかったのだという。
少年は見たところ徒歩だ。そんな少年が数キロメートル先に魔獣がいるかなどわかる訳もなく、ましてや魔導器が故障しているなんて知るはずがない。
ユドラ伯は少年になぜ魔獣の存在を知っていたのか問うと、そういうヴィジョンが見えたとだけ答えた。ユドラ伯は少年の未知なる予言のチカラをいたく気に入り色々話を聞きたいと、行く当てのなかったセシルを館に迎えることにしたのだ。
「セシル君、さっき寝ぼけて言ってた"ヒュプノス"って何?何かの呪文?」
ただの夢なのか過去の朧げな記憶なのかーー頭の中にかかったモヤのせいで正解が導き出せないでいると、後ろの席の男子生徒ワッツが声をかけてきた。
「いや…よくわからないんだ。寝ぼけてたからかな…」
「そんな感じじゃなかったけどなぁ…まぁいいや。今日のランチどうする?よかったら食堂に行こうよ?」
ちなみに、後ろの席というだけで、たいして仲がいいという訳でもないのだが、セシルに何かと絡んでくるのがこのワッツという生徒だった。
赤みを帯びた茶色い髪はくりんくりんにカールしており、眼鏡をかけ背の低いこのワッツという生徒はクラスでは少し浮いた存在だった。しかし、学期中に編入してきたセシルがそんなことを知る由もなく、たまたま前の席になったこともあり、他のクラスメイトと違い普通に接したのがキッカケで懐かれてしまったのだ。
「うん、いいよ」
授業が終わり、昼休みを迎えたセシルが席を立とうとすると席の周りに一気にクラスの女子たちが集まってきた。
「セシル君!さきほどの術式の解答、お見事でしたわ!よろしければご一緒にカフェテリアで勉強方法などをお教えくださらないかしら??」
「あ、あの!私も!」
「ちょっと!セシル君は私が誘おうと思っていましたのに!」
セシルはとにかくモテた。青白い肌に彫像のような整った美しい顔立ち。クセのある艶やかな長い黒髪に加え、口数が少ない彼は同年代の女子からすれば、ミステリアスで興味を引かれる存在なのだろう。
「ごめん。食堂に行く約束をしているから…」
少し顔を赤らめながらセシルは逃げるように教室を出た。それを追いかけるようにワッツも教室を出てくる。
「はぁはぁ…セシル君ほんっとモテるよね。いいの?断ったりなんかして。僕に気を遣ってくれなくても…」
「いや、その…僕、女の子と話すの、慣れてないから…それに彼女たちは圧もすごいし」
2人が他愛もない話をしながら食堂に向かっていると、別のクラスのいかにも素行が悪そうな生徒3人が廊下の前に立ちはだかった。
「よお、ワッツ。ちょっと金貸してくれよ」
「ダ、ダリル君。僕も今手持ちがそんなになくて…」
「ああっ!?俺たちオトモダチだろ?!頼むよ、有り金ぜんぶでいいからさ〜」
「ブハッ!ダリル、頼み方おかしくね?」
「有り金ぜんぶでいいって譲歩になってね〜」
横の2人が笑い合ってる中、真ん中にいた偉そうな生徒ダリルがワッツに手を伸ばしてきた。しかし、その手をセシルが掴んで睨みつけた。
「君、今日の帰り道、気をつけたほうがいい。毒ヘビに咬まれないように」
「はぁっ!?なんだ、こいつ!?なに気持ち悪ぃこと言ってんだ!毒ヘビ?ワケわかんねぇよ!!」
「忠告はした。ワッツ、行こう」
セシルは掴んだ手を放し、ワッツと共にダリルたちの横を通り過ぎようとするとダリルは背後からセシルに向けて急に殴り掛かった。しかし、拳が届く前にセシルはダリルの拳を簡単に撥ね除け、足払いで横転させた。
「喧嘩は好きじゃない。これに懲りたらワッツにも僕にも絡んでこないでくれ。次は容赦しない」
周りで見ていた女子から黄色い歓声が湧く。セシルの華麗な対処にワッツは目を丸くして驚いていたが、セシルがそのまま食堂に向かったので、慌てて後を追いかけた。
「セシル君すごいね。虚弱そうなのに、格闘技でもやっていたのかい?」
ーーん〜虚弱そうは余計だな。
「やってないよ。身体が勝手に動いたってやつ」
転んだダリルは怒りに震え、取り巻きの2人は慌てていたが、そんな3人に構うことなくセシルたちはその場から歩き去っていった。
「そういえばさ、さっき毒ヘビに気をつけろっぽいこと言ってたけど、あれ本当なのかい?」
「え?ああ、いや。出まかせだよ」
ここはイレニア魔導学院。ラグナス王国で唯一の魔導士の育成に特化した高等教育機関である。王都ジャニスにあり、王国中から素養のある若者たちが集まるため、多くの生徒は寮での生活を営んでいる。
成績優秀者はのちに、王国騎士団と双璧を成す王国魔導師団への配属が優遇されることもあり、学費は通常の学校に比べ高額となっている。よって、生徒は名門貴族や商家の出の者がほとんどであった。
王国内でも公爵家に次ぐほど上位の権力者であるユドラ辺境伯。彼に拾われたセシルは、ユドラ伯の半ばゴリ押しの推薦で魔導院へ中途入学することとなった。
国教であり、王国とも深い繋がりのあるイレニア大聖教が運営する機関であるが故、ゴリ押しで入学したなどと知れれば他の貴族たちの反感を買いかねない。そこで、セシルの入学は表向きでは編入ということになっていた。
昼食を済ませたセシル達は教室に戻り、引き続きワッツと話をしていたが、そこに1人の女生徒がセシルの元にやって来た。その顔は明らかにいつも声を掛けてくる女子たちとは違い、焦燥感に満ちていた。
「セシル君…お願い!助けてほしいの…」
今回も拙い内容ですが、最後までお読みいただきありがとうございます。
これから様々な出来事に巻き込まれていくであろうセシル君。
彼の運命はどうなっていくのか、、、




