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第二話 死神失格

次から本編へ入りますと宣言したにも関わらず、キリのいいところで切ると結局まだ導入部分のままでした、、、

次こそ本当に本編突入です!たぶん。

 タナトスがシシュフォスの屋敷に監禁されてから丸3日が過ぎた。今日も何をするでもなく窓から街の様子を眺めている。

 しかし、そこで異変に気が付いた。街路を歩いていた小さな男児が不運にも飛び出してきた馬車に轢かれ、頭から大量の血を流して倒れている。

 本来であれば、タナトスがその場で魂を回収して冥界に運ぶ。だが今、死神はこの部屋から外に出られない。このまま"お迎え"が来ない男児の遺体はどうなるのかーー

 男児は何事もなかったかのように起き上がり、大泣きしながらその場を走り去っていってしまったのだ。あの怪我で死なないはずがない。目を疑うような光景に、さすがのタナトスも唖然としている。


「僕が魂を回収しなかったら人間は死ねないのか…」


 この3日間、死神としての務めを果たせていないが故に、寿命を迎えたにも関わらず冥界に行くことができなかった人間たちが今も地上を跋扈しているかと思うと、タナトスは青ざめた。急ぎ部屋の扉近くへ行き、外に向かって声を掛けた。


「今すぐ僕をここから出せ。でないと、巷が死者で溢れ返るぞ」


 しかし、部屋の外に誰もいないのか反応がない。どうすればいいか分からず落ち着かない様子で部屋をぐるぐると歩きながら考えてみる。

 この数百年、冥府に魂が来ない日など一度もなかった。それが3日も続いているなど前代未聞である。だとすれば、地上で何かあったのではないかと、冥王ハデスも気付くのではないだろうか。

 もしかすると、そろそろ助けが来るのではないかとタナトスは少し期待することにした。だが、ここを出たら冥界に呼び出されて、きっとハデスにひどく叱られるかもしれない。そんなことを想像しながら床に寝そべって憂鬱になっていると瞼が重くなってきた。


 ふと目を開ける。眠ってしまっていたようで、どれくらいの時間が経ったのか窓の外に視線をやると、外はもう真っ暗だった。


「また1日過ぎてしまう。ヒュプノス、どうしてるかな…」


 眠る前に抱いていた憂鬱が再び胸に込み上げてくる。監禁されてから初めてタナトスはため息を漏らした。しかし、その憂鬱を吹き飛ばすかのように、その時は来た。

 下の階から何やら激しい破壊音が聞こえてきたのだ。屋敷の使用人たちの慌てているような声も聞こえる。


「もしかして…」


 タナトスは期待に胸を膨らませて起き上がり、耳を澄ませた。何者かが暴れているようで、悲鳴が聞こえる。しばらくすると静かになり、耳鳴りがするほどの大きな声が屋敷中に響いた。


「タナトス!!どこだああぁぁぁぁっ!!」


 そして床が減り込む軋んだ音と共に力強い足音が階段を駆け上がってくる。


「結界…ここか!!扉から離れてろよ!!」


 扉の奥から聞こえる声に従ってタナトスは部屋の壁際に身を寄せると、扉周辺が爆発したように吹き飛び、木片が散らばって魔法障壁が粉々に砕け散った。とても人間業とは思えない破壊力である。

 土煙が舞う中、タナトスは恐る恐る扉のほうを覗き込んだ。そこには上半身が剥き出しでスパルタ軍の兵士のような屈強な肉体、紅いヒマトン(上着)を羽織り革製のスカートに甲冑の兜をかぶった身長190cmほどの男が剣を片手に持ち立っていた。


「やあ、軍神アレス。助かったよ」


「む?おお!タナトス!!無事だったか!!……ではない!このバカ者が!!」


「え……」


「ゼウス様の厳命でお前を迎えに来たんだよ!地上がとんでもないことになっている!今すぐオリュンポスまで来てもらうぞ!!」


 タナトスは腕を掴まれると、開いた転移ゲートに放り込まれた。何が起きたのか全くわからない慌てふためく使用人たちと半壊した屋敷を残して2人は地上から姿を消した。


 ーー天界オリュンポス。地上オルテシアの遥か上空、雲の上に広がる多くの神々が住まう世界。いくつもの島が雲の上に浮いており、島の様子は住んでいる神によって様々であった。樹海に覆われた島、田園風景の島などが存在しているが、その中でもひときわ目を引くのが大神殿がそびえたつゼウスのいる島だった。

 タナトスたちが転移してきた島にはアレスが用意していたペガサスが待っていた。アレスはペガサスに跨り、タナトスを後ろに乗せてその大神殿へと飛び立つ。


「地上がとんでもないって、どういうこと?」


「お前がサボってたせいで、人間が死ななくなっている!それだけならまだ問題はないのだが…詳しくはゼウス様に聞け!」


 大神殿のある島に到着し、2人は神殿に続く長い階段を登っていく。ドーリア式の円柱が建ち並ぶ神殿に入ると、神殿の最奥の玉座にゼウスが鎮座していた。

 2人はゼウスの前で跪き、普段は語気が強めのアレスが粛々と言葉を述べた。


「ゼウス様。ご依頼のシシュフォスに囚われていたタナトスを連れて参りました」


「アレス、ご苦労であった。帰還して早々にすまないが、外してくれるか」


 ゼウスの言葉を聞き入れ、アレスは立ち上がって一礼すると神殿を去っていった。


「タナトスよ。すでに地上の人間が不死となっていることは聞き及んでおるな?」


「はい。申し訳ありません」


「だが、人間の生死などはもはや些末ごとに過ぎぬ。それよりもこの異変に目を付けた者たちがおる」


「……?」


「……悪魔だ」


 悪魔ーー原初の神と言われるカオスの時代、カオスに仕えていた72体の天使たちがそれである。

 のちにカオスはタナトスたちの母でもあるニュクスを含めた5人の神を生み出した。その5神の1人である大地の女神ガイアの夫である天空神ウラノスが世界を支配し初代最高神となった際にウラノスは天使たちの特異な力"呪法"を恐れ、この世界とは違う別の次元、異界"ソロモン"に幽閉した。

 天使たちは異形の者から人型の者まで様々な個体が存在していたが、皆一様に美しき白い翼を持っていた。しかし、自分たちを幽閉したウラノスへの憎しみからやがて、翼は黒く染まり姿を禍々しく変化させ、いつしかこの世界へ復讐するために虎視眈々とその機会を窺っていた。


「悪魔…ですか。一体どういう…」


「本来であれば、奴らは別次元の異界にいる為この世界に干渉する事が出来ない。そこで魂のみをこの世界に転移させ、死ねなくなった人間たちの身体を憑代にすることでこの地上に現れたのだ」


 憑依された人間の身体は、取り憑いた悪魔の特徴を大きく反映させ姿を変えた。しかし、72体の悪魔はそれぞれで協力体制を築いている訳ではなく、個々の思惑で動き始めているという。

 こうして、地上オルテシアに現れたソロモンの72体の悪魔は世界各地に潜み、神々への復讐の準備を始めた。


「悪魔は呪法と呼ばれる力で、この世界の生物を魔獣に変えていっておる。悪魔の侵攻を許してしまったのはタナトス、お前の不徳によるものだ。よって厳罰を下す!」


 ゼウスは手にしていた錫杖を天に掲げると空が急に暗くなり、そこから稲妻が一直線にタナトスへと落ちた。身を裂いて焼かれるような激しい痛みに襲われ続け、力がどんどん抜けていく。やがて、タナトスはそのまま意識を失った。

神話に加え、伝承や伝記など詰め込みすぎた感が、、、

神サマに加え、悪魔の存在まで出てきちゃいました。

次回は早めに更新できるよう頑張ります〜

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