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第十九話 クリムゾンムーン

修練窟に突如現れた三魔将ルナ・ディアス。

セシルたち3人は果たしてこの危機を潜り抜けることができるのか、、、


 灯りのない修練窟で光源のために魔力で作り出した指先の光の玉を壁の燭台へと移すと、セシルは魔剣を抜かずに手に魔力を込め始めた。


「接近戦はなるべく避けよう。僕とグレイスが隙を作るから、そしたらジンが攻撃。これでいこう」


「あいよ!」


「了解です」


 セシルは込めた魔力を下から掬い上げるように手を振り上げると、その直線上に氷柱がルナに向かって地を這うように立ち上がっていく。それに合わせてグレイスが3本の矢を同時に放ち放物線状に飛ばす。範囲攻撃にルナは笑いながら長い爪で氷柱を粉々にしつつ、軽やかな動きで矢を交わしていく。


「ねえ、セシるん!さっきあたしのこと"好き"って言った?言ったよね!?両想いとかアガっちゃうじゃん!」


「言ってない」


「セシル、あいつヤベェぞ…超ポジティブだ」


「戦いに集中してください!」


 間髪入れずにグレイスが斜め上に矢を放つと、山を描くように矢が降り注ぐ。それをルナは爪の先から炎の魔法を放ち焼失させた。そこにセシルが放った光のブーメランが飛来する。口づけをするように軽く息を吹きかけると、光のブーメランは霧散しルナに届く前に消え去った。


「もっと情熱的に攻めてよ〜セシるん!あたし、こんなんじゃ物足りなぁい」


 絶え間なく攻撃を仕掛けるが、どの手も通用せず一向に隙を作ることが出来ない。このまま無策に攻め続けても体力と魔力を消耗するだけと感じたのか、セシルたちの攻撃の手が止まった。


「実力差がありすぎる…突破口が全く見えないよ」


「ですね…悪魔とはこれほどまでに強大なのですか」


「いや、こいつは悪魔の中でも別格だと思うぜ。俺たちとの相性も悪い。近接メインの俺とセシルが近づいて攻撃しづらい時点でかなり不利だしな」


 息が荒くなってきているセシルとグレイスに比べ、ルナはまだ攻撃すら仕掛けてきていない。実力突破が難しいなら、考えられる手はもはや1つーー進むしかない。


「合図を出したら、一気に下の階層を目指して走ろう。奴の侵攻を妨げるくらいなら魔法でも出来るから」



「ねーえ、そっちでこそこそ話されてると、あたし寂しいんですけど〜。そろそろそっち行ってもいいかなあ?」


 ーー3、2、1…今だ!


 3人はルナから逃げるように一斉に走り出した。ため息を漏らしてルナも後を追い始める。セシルは振り返ってルナが追ってくるのを確認すると、両手を胸の前で交差させた。


「フリージングウォール!!」


通路を塞ぐように分厚い氷が張られていく。相手が相手なだけに気休め程度の時間稼ぎにしかならない。しかし、ほんの一瞬の隙は生むことができる。氷を破ってきたところを魔剣の魔力で攻撃すれば必中させることは可能なはず。セシルは魔剣に魔力を込め始めた。後方ではグレイスが弓を構え、麻生は目を閉じて精神を集中させている。

 セシルの張った氷壁はただ静かに道を塞いでいる。ルナとセシルたちの距離はそこまで開いていなかった。すぐに追いつけるはずなのに、未だ何の反応もない。諦めて去ったのだろうか。

 沈黙に耐えきれず麻生が口を開き、先へ進まないかと提案したその時だったーー麻生の肩を何者かが掴んだ。声を上げて驚き、皆が振り返ると、麻生の肩を掴んだルナが瞳を妖しく輝かせていた。


「あたしのカワイイ奴隷ちゃん。君の敵はあのイケメンだよ〜顔がイイ男が憎いでしょ〜?堕ちろ、クリムゾンムーン」


 ルナは手を放し、少し離れて腕を組みながら壁にもたれかかるとセシルに向けて満面の笑みを浮かべた。


「ジ、ジン?」


「セシルさん…様子が変です。警戒を」


 何の呪文を掛けられたのかわからないが、麻生はただ呆然と突っ立っている。そしてセシルの方を見ると顔つきが変わった。


「イケメン…コロス…」


 麻生は一気にセシルの前へと距離を詰め拳を突き出してきた。魔剣を盾にして何とかガードしたが、氷壁に背をぶつける強さで飛ばされた。


「セシルさん!魅了の魔法です!」


 グレイスはすぐに麻生を牽制するため当てないように矢を飛ばすが、麻生は当たらないように矢が放たれているのをわかっているのか、回避行動を取らずセシルへの攻撃に専念している。


「あはは!その子はあたしの奴隷になったから、あたしが魔法を解くか死なない限りセシるんを狙い続けるの〜。あたしのためにガンバって、ダーリン❤︎」


 それを聞いたグレイスは構えていた弓を麻生からルナの方へと向きを変え放つ。しかし、ルナの前に張られた魔法障壁によって矢は届かない。

 セシルは麻生の猛攻を回避するので精一杯の様子でルナの話が耳に入っていない。もはやセシルたちに勝ち目はないように思われた。

 その時、通路を塞いでいた氷壁が粉々に砕け散り、その奥から放たれた光線が麻生を直撃した。


「アーク・ディスペル!!」


 セシルに向けられていた麻生の拳が止まる。聞き覚えのある声と魔法の名にセシルはハッとした。


「……え?なんだこれ、え?俺、セシルと戦っ…え、ごめん!訳わかんねぇ!」


 光に打たれた麻生はルナの魅了の魔法から醒めたのか、混乱している。その様子にセシルは安堵し、氷壁があった先に視線を移した。


「間に合ったようね。加勢するわ」


 砕けた氷の残骸を跨いで姿を現したのは白い甲冑を纏ったラグナス王国騎士団、副団長のリエリカであった。麻生への魅了を解かれ一気に4対1という不利な形勢になったにも関わらず、ルナはまだ余裕なのか壁にもたれたままだ。


「おや、珍しいお客さん。オリュンポス以外にも支援者がいるなんて、セシるんもスミに置けないねぇ〜。も少しセシるんの活躍が見たかったんだけどなぁ…ま、顔が見れただけで満足ってコトで!今日はとりあえず帰ろっかな〜じゃね〜」


 ルナは壁の中に吸い込まれるようにそのまま消えてしまった。ヴァサーゴに続き、またしても三魔将に敵わなかったセシルたち。リエリカが来なければどうなっていたことかと己の無力さに肩を落とした。

 疲労からその場に座り込み息を切らすセシルにリエリカが治癒魔法をかける。


「ありがとう、リエリカ。また助けられた」


「て、ていうかよ…リエリカさん、腹に穴開く重傷だったのに大丈夫なのかよ!?」


「ええ、問題ないわ。私、治癒魔法が得意だから」


 話についていけない様子のグレイスにリエリカは治癒魔法をかけ、自己紹介を簡単に済ませた。3人が全快したところで、まだリエリカ出会ったばかりのグレイスが忖度なしの質問を投げかけた。


「あの…さっきの悪魔が言っていたオリュンポス以外の支援者というのは…どういう意味なんでしょうか?」


「……そうね。話しておかねばならないわね。私がここに来た理由も含めて」


お決まりの意味深な終わり方〜

リエリカの正体とは!?

忘れられているかもしれないので、あえてもう一度言います。

リエリカは隠れ巨乳です。←この情報必要か?


今回のお話のポイントは魅了にかかった麻生くんが"セシル"ではなく、"イケメン"を殺すと言うところです。

やはり深層心理ではイケメンを目の敵にしていたんですねぇ、、、フクザツ。

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