第十二話 死神と悪魔
久々に死神タイトル〜!←死神タイトルとは
国境で対峙するセシルとアスタロト。
シリアスな展開続きで、我慢できずに少しだけ小ボケを入れてみました←関西人のサガ
岩山に挟まれた渓谷から風が吹き荒び、雲が太陽を覆い隠していく。天候は今にも崩れそうな空模様だった。ザイオン砦が崩壊し瓦礫や兵士たちの亡骸が横たわる戦地となった場所で、セシルとアスタロトは互いに睨み合っている。
互いに出方を見計らっているのか、武器を構えたまま場は硬直していた。麻生はダンを馬車に連れていき手当てしながらセシルを心配そうに見つめている。
「セシル…頼んだぜ…」
空から一滴、地面に突き刺さった剣の柄に落ちた瞬間、2人は同時に飛び出した。上から叩き伏せるような大振りの戦斧に対して魔剣の薙ぎ払いでそれを弾く。力負けこそしなかったものの、魔剣を持つ手に強い衝撃が走る。互いが互いの死角に回り込もうと走りながら、戦斧の乱打、魔剣の連撃による打ち合いが始まった。
魔剣からはまだマルバスを斬り裂いた時のような剣閃は見られない。火花を散らし戦斧と魔剣がぶつかり合う様は激しさの中にも美しさがあり、2人はまるでダンスホールで舞踏を踏んでいるようだった。
「一撃で仕留めるって言わなかったっけ?」
「ああ、前言撤回だ。こんなに楽しい戦いは久々なんでな。すぐに終わらせるのは勿体ない」
ぶつかり合いは次第に速度を上げていく。さらには魔法による追撃まで加わり、もはや目で追うのがやっとの速さだった。どちらかが隙を見せればすぐに決着がつく。それほどまでに鬼気迫る打ち合いだった。
そんなセシルの姿を見て麻生は思ったーー過酷だったとはいえ、ただの1日素振りに明け暮れただけで、あれほどの剣捌きが身につくのだろうか、と。自身もダンとの稽古で格闘技術が多少は向上したと思っていたが、セシルのそれは度を超していた。
「あいつ、成長のスピード早すぎんだろ…今も戦いながら、数秒前までより上達していってる。セシルお前…どうなってんだ…」
麻生がセシルの成長の微妙な差に気が付いたのは、アスタロトが次第に押され始めたからである。アスタロトの動きが決して鈍ってきた訳ではない。拮抗していた実力をセシルが戦闘中に上回り始めたと考えるのが妥当だろう。アスタロトの顔にも焦りの色が見える。
「小僧…貴様、何者だ…」
「セシル・アーヴァイン、学生だ」
ーーどこぞの名探偵かよ。
麻生が心の中でツッコミをいれているとも知らずにセシルの攻撃は更に激しさを増していった。そして、ついに魔剣の刃が肩を掠めアスタロトが一瞬怯んだ。その瞬間、セシルは敵を斬り伏せるイメージを頭の中で固めた。魔剣は光に包まれ、その光を投げ飛ばすように振り抜いた。しかし、同時にアスタロトは一気に力を解放し、バリアのように自身の周りに魔法障壁を張った。だが、アスタロトに迫る剣閃は障壁を破り、右肩から大胸筋の上部にかけて大きく斬り裂いて通り抜けていった。
「ぐぼぁっ!!お、おのれ…危なかったぞ…今のは肝を冷やした」
大量の血を流し深手を負わせたものの、致命傷にまでは至らなかった。セシルも今の一撃でかなり魔力と体力を消耗したのか、息を切らし追撃に出ることが出来ないでいる。
「魔法障壁で軌道を…ぐっ、身体が重い…」
互いに限界を迎え、動けなくなった2人を見て麻生が走り出した。
「今しかねぇ!!みんな!!アイツを討つぞ!!」
ただ見守ることしかできなかった兵士たちにも声を掛けてラグナス王国の残兵がアスタロトに向かっていく。
「ここで来るか。姑息な…やむを得ん。今日のところは引き下がる!セシル・アーヴァイン!!次は必ず俺が勝つ」
麻生率いる兵士たちが辿り着く前に、アスタロトは転移魔法でその場から姿を消した。
「あ!くそっ!!逃げやがった!!」
アスタロトが撤退したことで緊張の糸が切れたのか、セシルはその場に倒れた。特に負傷した訳ではなかったが、尋常ならざる動きによる体力の消耗と、魔剣の力を自身の限界近くまで引き出したことによる魔力の枯渇。セシルが倒れたことに気づいた麻生は急いでセシルのほうに進路を変えて駆け寄り、兵士から受け取っていた薬草を煎じた物を飲ませた。
「げほっげほっ!うえっ、不味いね、これ…」
「贅沢言うんじゃねーよ。それにしても、セシル…お前…いや、なんでもねえ」
あと僅かのところで逃げられはしたが、セシルの活躍によりウルド帝国軍を退けたことに兵士たちは歓喜し次々にセシルの名を叫んだ。そこにダンに支えられながらリエリカがやってきた。団長と副団長の登場に兵士たちはセシルコールを止め背筋を伸ばす。
「ああ、構わない。みんな楽にしてくれ」
「セシル君、まずはありがとう。途中から見ていたわ。やっぱり貴方には剣技の才能があるみたいね。今後は保有魔力量の底上げと剣技の熟練度を伸ばしていきましょ」
「俺からも礼を言う。砦が破壊され、一時はどうなることかと肝を冷やしたが、君たちが来てくれて本当に助かった!ありがとう!」
騎士団のトップ1、2に賞賛され再びセシルコールが始まり、兵士たちの手によって胴上げされるセシル。麻生はそんな様子を何とも言えない面持ちで見つめていた。
ウルド帝国ーー転移魔法によってドグラウス城砦の自室に血塗れで帰還したアスタロトはベッドに座り込み、深く息を吐いた。
「体力を消耗しすぎたか…再生が遅い。セシル…アーヴァインか。あの男、本当に人間か…あの魔力…」
先の戦いを思い返し、深手を負いながらも自分を退けるほどの実力者に出会えたことにどこか喜びを感じていた。しかし、人間離れした魔力、ましてや学生という信じがたい事実に思うところがなくもなかった。
そこに扉が勢いよく開いて宰相のディアマンテが1人、入ってきた。
「アスタロト、何をしている。ラグナスは落としてきたのか?」
「ディアマンテ…俺が帰還してるとよく分かったな。いや、すまん…砦は破壊したが予想外の妨害を受け失敗した」
「ほう…それで惨めに傷を負わされ逃げ帰った、と。予想外の妨害とは何だ。私の見立てでは、そんなイレギュラーが起きるはずはないのだが?」
「セシルという学生がいた。人間とは思えない魔力量、身のこなし…そんな情報は聞いていない。お前には"見え"なかったのか?」
アスタロトの話にディアマンテは考え込んだ。占星術で予め戦況を予測し、それをアスタロトに伝えて向かわせた。しかし、何処の馬の骨ともわからない学生によってそれを邪魔されたとなれば、彼のプライドに傷をつけたことになる。
「詳しく話せ。私にもその学生の存在は見えていなかった」
アスタロトは戦闘で感じたままの内容を話した。魔剣を所持していたこと、魔力が異質であったことなど思いつく限りを話した。
「……貴様、なぜ我々が地上に顕現できたかわかっているな?」
「あ?ああ、死ぬことの出来ない不死者となった人間が地上に溢れ、その不死者の肉体が俺たちの依代に最適だったからだろ?」
「その不死者はどうやって現れた?」
「はあ?知らねーよ、そんなもん」
「死を司る神が堕天した影響らしい。死神が不在になったことで死んだ人間の魂を刈り取れなくなった。だから肉体が死しても尚、魂は定着したままの不死者となった」
「堕天…俺たちと同じ…だと?」
「馬鹿を言え。神が堕天したのだぞ。我々より格上だ。だが、もしそうだとすれば、その堕天した死神は今どこにいる?」
アスタロトは目を見開いた。その話が事実であれば、自身の敗北にも合点がいく。
「非常に厄介だ…そんなイレギュラーが紛れ込んでいたとは。これは見通すことの出来なかった私の失態でもある。今回の貴様の大敗は不問としておくが、対策は練らねばなるまい。三魔将にも報告しておく。貴様はしばし傷を癒して次に備えておけ」
「ああ。それにしても死神か…フン、面白い」
三魔将って何のひねりもない月並みなネーミング、、、何かもっとステキなネーミングないでしょうか?
3人の悪魔の将軍、略して三魔将。
トライ・デビル・リーダー、略してTDLだとアウトですもんね。東⚫︎ディ⚫︎ニーリゾー⚫︎だもん。
いや何の話よ。




