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「殺される!?」

 翔喜がビックリして言う。

「やめて! あたし殺されたくない!!」

 羽鳥さんが大声で叫ぶ。

「わたしも……」

 萌ちゃんが降りて来て、怖がるように言った。全員が萌ちゃんの方を見る。

 萌ちゃんはダイニングに入るなり、空いている席に着く。

「冗談だろ……」と、翔喜が励を見て訊く。

「いや。僕は健斗くんの言う通りだと思う」と、励は言った。

「どうして?」

「誘拐犯が誘拐して終わり……本当にそれだけだと思う? 僕はそんな単純なものじゃないと思うんだ」と、励は説明する。

 それより、と励は話を続ける。

「皆はここを出たいと思わないの?」

 励は皆を見て訊いた。

「そりゃあ」と口を開いたのは、翔喜だ。「出たいよ。もちろん、でもさ……」

 翔喜はそう言って、一度口を閉じる。

「でも、何?」と、励は訊き返す。

 翔喜は黙っている。

「……多分、皆さん、ここを出たいと思っています」

 口を開いたのは、健斗だった。健斗は話を続ける。

「ですけど、皆、ここを出られないのです。玄関の鍵は外側から掛かっていますし、多分()()()()()()()()()()()()()()だからです。あの男がその鍵を持っている以上、僕たちは一生ここから出られません。……翔喜さんはそう言いたかったのでしょう」

 健斗が代弁するように話した。

「そうなのか?」と、励は翔喜に訊く。

「ああ、そういうことだ」

 翔喜はそう言って頷く。

「なるほど」と、励は頷く。それから、「他に出口はないかな?」と、励は言った。

「さあ?」と、翔喜が首を傾げる。「萌ちゃんは、どこか出口を知ってる?」

 翔喜が萌に訊いた。

「わたしも、入り口以外は分からないです」と、萌は答える。

「だよね……」と、翔喜。

「あ、そっか!」と、健斗が思い出すように言った。「もし他に出口があれば、僕たちはそこから脱出できるという訳ですね!」

 健斗は嬉しそうに言った。

 うん、と励が頷く。

「もしもの話でしょ?」

 羽鳥さんが言った。

「ええ。でも、どっかに脱出できるところがあったら、皆さん、そこから出ますよね?」

 健斗が皆に訊いた。

「そりゃもちろん」と、翔喜が言う。

「どこかに出られる場所がないか、皆で手分けして探してみませんか?」

 健斗が皆に提案するように言った。

「いいね」と、翔喜が笑顔で言う。

 他の皆も頷く。励も頷いた。

 早速、励以外の皆がダイニングキッチンを出て、それぞれが一階や二階を調べる。

 励はそのままダイニングキッチンを調べることにした。

 励は辺りを見回す。そこには、六人掛けのダイニングテーブルと六脚の椅子。キッチンがあり、冷蔵庫があるだけだった。

 冷蔵庫は缶ビールやジュースがあるだけで、空っぽである。

 キッチンには引き出しがある。励はそこを一通り開けて見る。引き出しには箸やお皿、グラスなどが整然と入っていた。シンク下の引き出しを開けて見ると、フライパンやまな板、包丁などの調理道具が綺麗に入っていた。それらはずっと使われていないことが励にも分かった。

 ダイニングキッチンに窓はなかった。つまり、この部屋から脱出するのは不可能だろうと励は思った。

 今度、励は二階へ上がった。自室を調べることにした。

 廊下を歩いて、自室へ入る。励は自室を見回した。そこにはベッドがあり、壁側に備え付けの机と椅子がある。机の横に引き出しタンスもあった。それと、入り口付近に洋服ダンスもあった。

「あ!」

 励は気付く。その部屋には()()()()()。ここから脱出できるのではないかと励は思った。

 すぐに窓の付近へ行く。励はその窓を開けて下を見る。それからすぐにここが二階であることに気付いた。

 ここから飛び降りれば、脱出することもできなくはないだろう。けれど、二階なので下までそこそこの距離があった。男子はよくても、女子は嫌がるだろうなと励は思った。

 自室を一通り見た後、励はダイニングキッチンへ戻った。少しして、他の皆もそこへ戻って来た。

「どうだった?」と、早速、励が皆に訊いた。

「自分の部屋を見たけど、どこにも出られそうなところはなかったよ」と、羽鳥さんが言う。

「同じく……」と、萌ちゃんが言った。

「窓はなかった?」と、励は訊く。

「あ、窓はあった!」と、羽鳥さんが思い出して言う。

「俺も部屋を見たけど、窓以外は出られそうなところはなかったな」と、翔喜が言った。

「そっか。僕の部屋にも窓はあった。けど、そこから出るには飛び降りるしか方法はない」

 励がそう言うと、案の定、女子二人が目を丸くした。

「そっか! それじゃあ、窓から出ればいいのか!」と、翔喜が納得して言う。

「無茶よ!」と、羽鳥さんが言う。

 励が口を開く。

「うん。下を見たけど、二階だから結構高さがあるよ。男子なら飛び降りるくらい平気かもしれないけど、女子にはちょっと危険だね」

 励がそう言うと、「そっか……」と、翔喜は諦めたように言う。

「僕はここ、ダイニングを見た。見ての通り、ここには窓もないし、特段出られるところもなかった」と、励は報告する。

「僕はトイレとお風呂場を見ました。両方とも残念ながら、窓はありませんでした。出られそうなところもありません」と、健斗も報告した。

「それじゃあ、二階の窓以外、出られそうなところはないという訳か……」

 翔喜がまとめるように言った。

「そうだね」と、励は頷いた。「他に脱出経路があるといいんだけど……」

 励は呟き、考える。


「あれ? もう正午ですね」

 時計を見た健斗が驚くように言う。

「お腹空いたなぁ……。そろそろお昼にしませんか?」

 彼は皆にお昼ご飯にしようと提案した。

「そうね。そうしましょ」と、羽鳥さんが頷く。

 皆も頷く。励もそうすることにした。

「お昼といっても、お菓子しかありませんが」

 そう言って、健斗はスーパーの袋からスナック菓子やチョコレート菓子を引っ張り出す。それから、彼は二、三のお菓子をテーブルに広げた。

「皆、何飲む?」

 羽鳥さんが冷蔵庫を開けて皆に訊く。

「俺はオレンジ」と翔喜が嬉しそうに言う。

「わたしはリンゴジュースにします」と、萌ちゃんが言う。

「僕もリンゴでお願いします」と、健斗が言った。

「はいはい」と、羽鳥さんはオレンジジュースとリンゴジュースを取り出す。それから、テーブルにある紙コップにそれぞれのジュースを注いだ。

「小木曽くんは、どっち飲む?」

 羽鳥さんが励に訊く。

「僕は、お水でいいや」と、励は答える。

「え? お水?」と、彼女はビックリして訊き返す。

 励は頷き、紙コップを一つ取って水道の蛇口を捻って水をくむ。

「どうしてお水なの?」

 羽鳥さんが訊く。

「ジュースだと喉渇いちゃうからさ……」

 励が正直にそう話すと、「確かに。小木曽くん、偉いわね」と、彼女が笑った。

 励も実際はジュースの方が好きだが、飲み過ぎると喉が渇いてしまうことがよくあった。それに、母に「水を飲みなさい」と注意されることも度々あった。それで普段から水を飲むようになっていた。

「私もお水にしよう!」

 リンゴジュースを飲もうとしていた羽鳥さんは、それを止めて立ち上がった。それから、水道の蛇口を捻り、紙コップに水を入れた。

 それぞれがお菓子を食べ始めた。励もお菓子を食べる。

「お菓子だけじゃ、物足りないですよね……」

 ふいに、チョコレート菓子を食べていた健斗がやや不満そうに言う。

「アイスもあるぜ!」

 翔喜がにやりと笑って言う。

「いや、そうじゃなくてですね……」と、健斗が呆れて言う。

「うん、分かる」

 羽鳥さんが頷く。

「もし学校にいれば、今頃、給食が食べられたのに……」と、萌ちゃんが残念そうに言う。

「確かに!」と、翔喜。

「そうだね」と、励も頷く。

「でもさ、給食って正直、量少なくない?」と、翔喜が皆に訊く。

「はい。僕もそう思います」と、健斗が言った。

 励も頷く。励も給食の量はやや少ないと思っていた。

「男子はやっぱりそうなのね」

 羽鳥さんが言う。「私的にはあの量で充分だけど」

「そうなんだ」と、翔喜が言う。

「萌ちゃんは?」

 羽鳥さんが萌ちゃんに訊く。

「わたしも十分です。というか、時々多くて残しちゃうときもありますけど」と、萌ちゃんは照れ臭そうに話す。

「そっか」と、翔喜は頷く。

「なんだか給食の話をしてたら、給食が食べたくなりますね」

 健斗が言って笑う。

「本当ね」と、羽鳥さんも笑う。

「給食もいいけど、俺は母ちゃんの作るご飯が食べたいよ」と、翔喜が言う。

 全員が笑って頷く。

 本当にその通りだなと思い、励も笑う。

「お昼食べたら、眠くなってきたな……」

 翔喜がふわーっとあくびをしながら言った。

「わたしも」と、萌ちゃんも同意する。

「ちょっと上で昼寝でもするかな」

 翔喜は言い、椅子から立ち上がる。その後、萌ちゃんも立ち上がり、二人は二階へと上がっていく。

「しかし、暇ですね……」

 二人が上へ行った後、健斗が口を開く。

 確かにやることもないので、暇だと励は思った。

「普段なら、学校で授業を受けている時間よね」と、羽鳥さんが頬杖をついて言う。

「そうなんですよ」と、健斗は相槌を打つ。「授業もないし、学校に行っていないから宿題だってない……」

「それって、普段の私たちからしたら、ものすごく最高なことよね」

 羽鳥さんがそう言うので、健斗や励は頷く。

 だけど、と彼女が続ける。

「何もしないとなると、本当に暇よね……。もし、ここにピアノがあったら、私はひたすらピアノを弾いてるかな」

「ピアノ弾くんですか?」

 健斗が羽鳥さんに訊き返す。

うん、と彼女は笑顔で頷く。

「私ね、一年生の頃からピアノ教室に通っててね。もう四年くらいになるわ」

 羽鳥さんは笑顔で答える。

「へー」と、健斗は頷く。励もうんうんと頷く。

「ピアノがあれば、皆にも聞かせられたんだけどね」

 羽鳥さんはそう言って、舌を出す。

 励は羽鳥さんのピアノの演奏を聴いてみたいなと思った。

「じゃあ、ここを出られたら、ぜひ聞かせてもらおうかな」

 励はそう言った。

「ここを出られたらか……。うん、いいよ」

 羽鳥さんが真顔で言う。

「僕もぜひ聴かせてください」と、健斗も言った。羽鳥さんは頷く。

「それにしても暇ね……」

 羽鳥さんがそう呟いた後、「あ、そう言えば、僕、トランプを持っているんですけど、三人でやりません?」と、健斗がそう提案した。

「いいね」と、励が頷く。「やろうやろう」と、羽鳥さんも賛成した。

 励たち三人はトランプでゲームをすることにした。

 気づけば、二時間が経っていた。午後三時を過ぎた頃。

「休憩しない?」と、羽鳥さんが言った。

「はい」と、健斗が言う。励も頷いた。

「アイスでも食べない?」

 羽鳥さんがそう提案した。

「いいね」と、励は言う。「そうしましょう」と、健斗も言った。

 三人は冷凍庫から好きなアイスを選ぶ。健斗はチョコアイスを取り、羽鳥さんはストロベリーのアイスを取った。励はバニラアイスにした。

 三人はそれぞれのアイスを食べる。

「うん、美味しい」と、健斗が嬉しそうに言う。

「ねー」と、羽鳥さんが相槌を打つ。

 励もアイスを食べて笑顔になる。

「こうして毎日アイスが食べられるなら、ここにいてもいいわよね」

 羽鳥さんがそんなことを言う。

「確かに!」と、健斗は言って笑う。

 それもそうだなと励も思う。

「けどさ、毎日、お菓子やらアイス、ジュースって飲み食いしてると太るだろうし、それに虫歯にもなっちゃうよね……」

 羽鳥さんがそう言うと、「それもそうですね」と、健斗が頷いた。

「次、何します?」

 アイスを食べ終えて、健斗が次に何のゲームをするか二人に訊いた。

「私、疲れたから、少し上で休もうかな」と、羽鳥さんが言った。「二人でやってていいわよ」

「そうですか。それじゃあ……」

「僕も休むよ」

 励もそう言った。

「励さんも……」

 健斗が残念そうな顔をする。その後、「僕も一旦休みます」と、健斗は言った。

「夕飯まで休もうかしら?」

 羽鳥さんがそう言った。励や健斗もそうすることにした。

「それじゃあ、また後でね」

 羽鳥さんはそう言って立ち上がり、二階へ上がった。

 励や健斗もその後に続くように二階へ上がり、自室へ入った。

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