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プロローグ いつかの湖畔
待っていてくれないか、と彼は言った。
「すまない。僕にこんなことを言う資格などないことは、重々承知している。しかし、いまばかりは恥を忍んで、言わせてほしい」
深く、澄んだ青緑色の瞳が瞬く。それはすぐ傍に広がる、つめたい湖の水面のいろに良く似ていた。
「待っていてくれないか。この僕の、臆病なわがままを」
青緑の瞳がふたたび瞬く。澄み渡った深い冬の湖面が揺らぐように。そのこころの揺れを、そのまま映したように。
目の当たりにした俺は、ゆっくりと口をひらく。
そして、つたえる。