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理想を望む世界のReStart  作者: 甘夢 柊
第一章 生誕村での凶厄
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#4 『君がため』

「俺、用事思い出したから帰るわ。」


「?、突然だね?まぁいっか、私はもうちょっとここに残るよ。」


「用事終わったらまた帰ってくるわ。」


 そう言い残しカエデは父さんを探しに駆け出した。


 ――おそらく、あまり時間もないだろう⋯探す場所を絞るべきか、それとも⋯


  そんなことを考えながら駆けていたら目の前に人影が見えた。


 ――っ!父さんか?


  もちろんそんなに簡単に見つかるわけはないとは思っていた。だが期待というのはいつも抱いてしまうものだ。


「――こんなとこで何してんだよ?そんなに早く家に帰りたかったのか?」


  思わず足が止まる。それはここにいるはずのない人物だったのだ。


「⋯⋯⋯。ガルドラ⋯⋯、なんで⋯。街にいたんじゃ⋯⋯。」


「帰郷って言うのか?久々に顔出しに来たんだよ。そしたらお前が必死に走る姿が見えたから。」


「久々に会えて嬉しいんだけど⋯⋯、今はちょっと急いでて、また後で⋯⋯」


「はい、行ってらっしゃい⋯とは言えないだろ?お前何をそんなに焦ってんだよ?」


  カエデにとってこれは予想外のことだった。


 ――行動パターンのイレギュラーか?でも今はそんなことを考えてる場合じゃ⋯


「言えないような⋯ことなのか⋯?⋯⋯⋯。」


 ――っ⋯⋯打ち明けて手伝ってもらうべきか?⋯⋯不信感を抱かせることになるかもしれない⋯⋯。


「じ、実は⋯⋯その⋯⋯っ⋯⋯」


「やっぱいい。あまり言いたくないようなことなんだろ?さすがにそこまで迫れねぇよ⋯。」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯。いや、話す。実は⋯⋯俺の父さんが危ない目に合うん⋯⋯」


『異常な発言内容を確認しました。世界との接続を停止します。』


 ――なんだ⋯?この声?『世界との接続を停止』?なんの冗談だ?目の前⋯が⋯⋯



「ぉい!おいっ!しっかりしろっ!」


「っ!!⋯⋯はぁ、はぁ、はぁ、はぁ⋯⋯」


 ――苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。なんなんだ、これは⋯まるで身体を蝋人形にされたように、とにかく苦しい。


  身体中から血の気が引いてゆく。身体は動かず呼吸もままならない。

  まるでそこから切り離されて意識だけを残してきたような、そんな感覚。


 ――もしかして、未来に起こることを喋ろうとしたから?先のことを話そうとするとこうなるのか?


「どうしたんだよ⋯急に⋯大丈夫か?」


「だ、大丈夫だ⋯、はぁ」


  つまり、ガルドラにこれからの事は話せない。ガルドラに助けを乞うことは出来ない。


 ――人手が増えれば早めに見つけれると思ったんだが⋯。こればっかりはゲームだ、仕方ない。


「もう大丈夫だ、やっぱ言いたくないし俺急いでるから行くよ⋯。」


「⋯⋯⋯⋯。いや、言いたくないんじゃなくて、言えないんじゃないか?さっきのお前、理由が喉まで来てたじゃねぇか。なのに急にふらついて⋯⋯、蓋を開けたら言いたくないなんて、納得いかねぇ。俺もお前について行く。」


「!? なんでだよ!俺一人で何とかなる⋯はずなんだ。だから迷惑はかけられない⋯。」


「なるほどな、俺に迷惑をかけるかもしれないようなないようなんだな。なら尚更ほっとけねぇ。」


「なんで⋯?なんでそこまで⋯?」


「お前の為だ。今暇なんだよ、付き合うぐらいいいだろ?もしもやべぇことなら人数は多い方がいい。お前の為に俺の力を貸してやる。」


 ――あぁ、なんで忘れてたんだ⋯


  ガルドラは昔から感が鋭くて、こうやって欲しい時に力を貸してくれる優しいやつだった。

  なにもカエデ一人で解決しなくていいということ。それを彼は忘れてしまっていた。そこに頼れる仲間がいるのに。


「――仲間愛ってやつか?いいねいいね、そういう希望に溢れた言葉は大好きだ。」


 突如背後から聞きなれない声が2人に響いた。

 2人は汗を垂らしながらふりかえる。

 そこにはフードを被った男が立っていた。


「――っ!お前っ!」


 カエデは怒りに身を任せ男に殴りかかった。

 直後、咄嗟にガルドラがカエデを静止する。


「落ち着けっ!落ち着けっ、カエデ!」


 その言葉でカエデは我に返る。


「少しは冷静になったかい?少し尋ねたいことがあるから話しかけただけなんだ。そうカッカしないでくれ。」


 落ち着き、冷静さを取り戻す。そしてカエデはあることに気づく。


 ――フードが新しい⋯?確かあいつはボロボロの⋯


 気づいたのはフードの違いだった。

 これが意味することは、今カエデの目の前にいる男は奴とは別人だということ。

 そしてフードの男がまだ複数人いるかもしれないということ。


「⋯⋯お前たちは、この村で何をしてんだ?」


 出来れば信じたくないひとつの可能性が脳裏に浮かぶ。


「別に何もしていないさ。何も⋯ね。」


 ――やっぱり⋯


 嫌な予想は真実味を帯びていく。フードの男は複数人いて、それぞれに繋がりがある。


「とりあえず、名前くらい名乗ったらどうだ?」


「そうか、自己紹介がまだだったね。初めまして、俺の名前はニゲラ、ニゲラ・ガルミアだ。よろしく。」


「⋯俺はガルドラだ、こいつは⋯」


「カエデだ⋯。」


「そうか、君がカエデ君か、君のお父さんとは仲良くさせてもらっていてね、今日は挨拶に来たんだ。」


 挨拶、その言葉をカエデは信じることが出来なかった。

 嫌な空気のなかで彼、ニゲラの顔には常に笑みが浮かんでいる。


「挨拶?わざわざこんな村までか?」


「あぁ、わざわざ挨拶だけしに来たわけじゃないよ。この近くに用事があってね。挨拶はついでさ。」


「なんだよ、その用事って?」


 用事。つまりは父さんの暗殺。この状況ならば誰もが疑う。


「『五大神使』って知っているかい?俺はその中の一人、『創造者』クリア・アリドラに逢いに来たんだ。君たちにはこのことについて聞きたかったんだけど⋯」


 五大神使なんてものは聞いたことがなかった。

 カエデはなにか怪しい集団なのだろうと考えた。いかにも宗教的で怪しすぎる。


「なんだそれ、知らねぇよ。」


「そうか、知らなかったか。すまない。知っている体で話すのは癖でね。説明しよう。⋯」


 彼の話によればこの世界には神の使いとして世界を守っている五人がいるらしい。

『調停者』、『規律者』、『創造者』、『管理者』、『破壊者』の計五人だ。

 その中でも彼が会おうとしている『創造者』は、無から物質を構築することが出来る天才らしい。

 彼はその人からあるものを作って欲しいと頼みに行くそうだ。


「そうだったのか、疑って悪かった。ごめん。」


「いいんだ、フードを被っていると不審者のように見えてしまうのは当然のことだ。こちらこそ誤解を与えてしまって済まない。」


 彼は以外にも怪しさの割には誠実だった。

 おそらくフードがなければただの常識人に見えていたかもしれない。


「色々教えて貰ってありがとう。『創造者』だったか?願い、聞いて貰えるといいな。」


「そうだね、君も何かに悩んでいたみたいだが、冷静になれば見えてくることもある。


『君がために希望が降り注ぎますように。』


 それじゃ、またどこかで会える日を楽しみにしているよ。」


 彼はそう言うと、この場から颯爽と立ち去っていった。

 彼の言葉は正しい。冷静になれば見えてくる道もある。まだ時間はたっぷりある。


「ガルドラ、頼みたいことがあるんだ。」


 2人ならばあるいはこの状況を打破出来るかもしれない。


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