#3 『何度も見た世界』
――「コンテニューを受諾しました。実行に移ります。⋯⋯⋯。完了しました。世界を再構築します。⋯⋯⋯⋯。完了しました。」
次の瞬間、カエデの世界に光が戻り彼が初めに目にしたのは、見慣れた景色、見慣れた空、そして見慣れた女の子。
「カエデ?どうしたの?難しい顔して⋯?」
カエデはこの質問を幾度となく聞いてきた。そしてどのコンテニュー後でも同じ回答をした。
「――なんでもないよ。」
―――――――――――――――――――――
カエデはまず情報の整理を始めた。
なぜだか分からないが、今回のカエデには記憶がある。これまでの世界の記憶だ。
そしてその記憶から推測するに何かしらのトリガーにより世界はコンテニューにより再構築されるとカエデは考えをまとめた。重要なのはそのトリガーが何かということ。
彼もおおよそ予想はしているがそれが真であるという確証は無い。
そしておそらくは、カリンの死がトリガーになっている。
「そろそろ謝りに行こうよ、私も一緒に謝ってあげるからさ」
分かっていた会話だが、やはり乗り気にはなれない。
――だがそんなことは今はどうでもいい。俺が今やるべき事は⋯
「カリン、そろそろ帰るか。ずっとここにいたら風邪引いちまうしな。」
帰りたくないではなく、帰さなければならない。感情など二の次でいい。
頭の中では彼女を救うことしかに興味がなかった。
――今はカリンの安全の確保が最優先だ⋯
「えっ?そう?⋯⋯カエデがそう言うならそうしようかな⋯⋯。」
そして考えるべきことはもう1つ。父さんの安全の確保だ。
リミットがどこかは分からないが、父さんがカエデを探しに外に出ていくまでに帰らなければならない。
ならば、今帰るのが妥当だ。
「よし、帰るか。家まで送ってくよ。」
「ホントに!?そこまでしてくれなくてもいいのに⋯⋯。」
「別に、方向一緒だし、ちょっと寄り道するぐらいだから大丈夫だ。」
「⋯⋯⋯、じゃあお願い、しちゃおっかな⋯」
こうしてカエデとカリンは帰路についた。
何事もなく無事に⋯
帰宅すると案の定母さんがいた。
「母さん、ただいま、それと昼はごめん。」
「!? ――カエデ⋯!あんた心配したのよ!今までどこ行って⋯⋯ごめんなさい、ちょっとびっくりしちゃって⋯。――お父さんもそろそろ帰ってくるから、中に入っときなさい。」
「っ!!父さん俺の事探しに行ったの!?」
「?、ええ30分くらい前に⋯」
――しくった⋯
30分前ということはカエデが覚醒するタイミングぐらいだ。
つまり父さんは探しに行かなければならない。
――俺は父さんの死でも戻るのか?そもそも次に戻った時に記憶は残ったままなのか?
考えがまとまらない。
カエデ自身も相当焦っているのがわかる。予想外のことだか何とかするしかない。
そしてカエデは1つの答えにたどり着いた。
「俺父さん探しに行ってくるよ!母さんは家で待っといて!」
振り向いて駆け出そうとしたその時、目の前にあのフード男がいた。
あの忌まわしき男が⋯
「っ!お前はっ⋯⋯」
怒りが言葉に込み上げてきたその瞬間、
『――グサッ』
「はあ゛ぁ!?まじ⋯⋯かよ⋯⋯」
鋭利な凶器が体を貫いた。
――熱い、身体が熱い⋯俺が死んだらどうなるんだ?そもそもなんでここにいるんだ?なんでいきなり刺された?分からない分からない分からない⋯⋯、意識が薄れてく⋯⋯
母さんの悲鳴が響くなか、カエデは世界の幕を閉じた。
―――――――――――――――――――――
カエデはまた目を覚ました。
相変わらずそこにはコンテニューの文字が刻まれている。
カエデはここでもう一度状況を整理することにした。
――今回も前回も突然でびっくりしたが、何も解決法が無いわけじゃない⋯か⋯
何としてもこの状況を打破しなければならない。
問題点は3つある。
1つ目はカリンのこと。
これはカリンを家に帰せば解決出来る。よって考えなくていい。
2つ目は父さんのこと。
――父さんは⋯⋯厄介だな⋯
というのも、カエデが覚醒するタイミングにはもう既に家に居ない。
だから『引き止める』というのは不可能。『連れ戻す』が最適解になってくる。
そして新たに3つ目、母さんのこと。
カエデが帰ったタイミングでフードの男が来たならばカエデが帰らなければ外に出ていた母さんは確実に襲われる。
――いや⋯⋯これはそうとも限らないのか?そうか⋯
前々回では少なくとも襲われていなかった。
ならばなぜ今回は襲われたのか。
――カリンを家に帰したからか?つまりあのフードの男はカリンと関係がある人物か?
ただここでも分からないことはある。カリンを帰すことと男の行動の変化になんの関係があるのだろうか。
とにかくカリンを帰さずに父さんを探しに行けば全てを解決出来るはずだ。
――これでも、懸念は残る⋯⋯か⋯
行動パターンの変化。これがカエデの計画の中で一番厄介だ。
カリンを残して早く帰ることでパターンが変化するかもしれない。
それにあの男を野放しにすることも出来ない。
――見境なく刃物を突き立てるヤバいやつだ⋯。これも何とかしないといけない⋯。だが、光明は見えた。なんとかしてやるしかない。
――誰も殺させやしない。平穏に暮らすために。どうにかしてやる⋯。




