#2 『変化点1』
――少し寒いな⋯
夜の村は信号や居酒屋などの光もなくもちろんネオンの蛍光灯などもない。
なので温かみもなく寂しいというのがカエデにとっての第一印象だった。
――今、何月ぐらいなんだろう⋯。
そもそも何月っていう概念があるのか?少なくとも記憶の限りでは何月という括りなどはなかったが、季節的には秋ぐらいだろうか?
――それにしてもこの感覚、ホントにゲームなのか分からなくなるな。
寝てる時に世界に入れられて、ここが現実ですと言われてもなにも不思議がらないかもしれない。
カエデの頭の中ではこの世界についての疑問がびっしりと詰まっていた。
――それにしても、父さんどこにいるんだ?そんなに遠くまで探しに行ったのか?
探すと言っても範囲は絞られてくる。
しかしカエデの頭の中では街まで探しに行ってしまった可能性も捨てきれないでいた。
それと同時に「ここは異世界で魔物がいます」ななどという訳でもないため村の外に出ても別に危険ではないだろうとも考えていた。
――まさか危険な目に遭ってたりしないよな⋯
カエデは色々思うところはあるが、ここは街ではなく村だからよっぽどの事がない限り危険なことなど起こらないだろうなどと考えていた。
――すぐにでも見つけてさっさと謝って街とやらに行ってみたい。街に行ったら何をしようか⋯
カエデは辺りを見回しつつそんなことを考えていた。彼は正直何をしようかなんてものは全くもって考えていなかった。
――「この狭い村から一刻も早く出て楽しく過ごしたい」、なんて元のカエデは考えていたのだろうか⋯
カエデはもう正直こんなことを考え始めてから父さんが危険な目に遭っているなんて想像は消え去っていた。
――ここは自分が望んだ世界だ、そんなこと起こるはずがない⋯
カエデはそう思っていた。
それは目の前に途端に現れる。
この世界に似合わぬ顔の見えないボロボロのフード。
背筋が瞬間に凍りそうな異様な雰囲気。
どこか懐かしさを感じる奇妙な立ち振る舞い。
刹那、奥に見えたのは横たわる父親とつい2、3時間前まで言葉を交わしていた女の子の姿。
考えた。俺は必死に考えた。
何がこの結果を生んだのか、どうしてこうなったのか。
――『グサッ』
これはドッキリなどでは無い。
赤を纏った刃物が女の子の体を貫く。世界から色が消えていく。
淡い光、飛び散る赤、そして動けない、動かない。
また世界に色が戻る。
色が戻った世界は想像よりも残酷でまるで今までの思い出を否定するかのように潤んでいく。
――やめろ、やめろ、やめてくれ!
色が戻った世界で目に映るのは空の青でもなく、建物の錆びれた色でもなく、ただただ流れ出ていく女の子の暗い赤のみ。
その他の色が主張を失いまるで赤だけを主役にするための脇役になったように。
赤以外の色の認識が薄れていく。
――辛い、苦しい、痛い。
なぜ俺はこの景色を見て感情が湧き出すのだろうか。
悲しいだけならまだしも辛いや苦しいといったこの溢れ出る感情⋯そうか⋯見ているのだ、この景色を⋯何十何百と⋯
「カエデ⋯⋯⋯カエデ⋯?あぁ、よかった⋯」
――なぜ?なぜよく見えない?
ダメだダメだダメだダメだダメだ
血が出てる⋯止血しないと助からなくなる⋯
――動けよ身体!なんで動かないんだよ!
恐怖なのか、それともこのまま動かなくてもなんとかなるとこの状況でまだ思っているのか。
目の前はチカチカする。激しい憤怒で実際には聞こえていないはずなのに自然と血管がブチブチと切れる音が聞こえてくる。
――動いてくれ!頼む!
どれだけ願っても祈っても身体の硬直は一向に改善されない。
――周りに誰かいるなら誰でもいい!俺の代わりに!
ついには自分で助けるのを諦め懇願し始める始末だ。自分で自分が情けなくなる。
直後、今まで動かなかった身体が嘘のように動くようになる。
だが同時に激しい怒りもなかったかのように虚空に消えていってしまう。そうか⋯
――そうか、また同じ未来か⋯
思い出す記憶⋯そして繰り返す同じ未来⋯意識が遠のく。
――瞼が重い⋯そうだ、戻る時間だ。
体が薄のいていく、記憶が消えていく。
その刹那にも満たない瞬間、最も憎むべき悪役のフードの中身が見える。よく知っている顔、何度も見た顔⋯
――お前は⋯⋯
瞬時に全てを理解する。まだそのときでは無い、と。
「――そうだ、初めから⋯」
こうしてカエデの世界は幕を閉じた。
[コンテニュー]
[YES ] [NO]
――もちろん、YESだ。
そうだ、確かめる必要がある。自分が望む世界を作るため、コンテニューしてまたあの場所へ⋯




