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理想を望む世界のReStart  作者: 甘夢 柊
第一章 生誕村での凶厄
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#1 『現実とは何だったのか』

 

 ――俺もやっと仲間入りだ。


 先日楓は、今世界で大人気のゲームである「WIWVR」を購入した。今日は初めてプレイする日だ。

 彼はワクワクが収まらない様子で早速プレイを始めた。


 ――どんな世界が創られるのかとても楽しみだ。


 このゲームは潜在的に自分が欲している世界を構築してくれるというもの。

 その世界で寝るも良し、鍛錬するも良し、とにかく各々がやりたいことをできる。

 つまりは半異世界転生といったところだ。



 楓の目の前が暗転する。

 光が戻り、初めに目にしたのは美しい景色、青い空、そして隣にはかわいい女の子が静かに佇んでいた。

 五感が回復した刹那、この世界での楓、つまりカエデとしての記憶が彼の脳に突き刺さった。


 カエデが思い出した記憶によると隣にいる女の子は名をカリンというらしい。

 これは嬉々として確定している情報では無いため、カエデはこの記憶に対しては少しだけ疑いを持っていた。


 ――都合の悪いような設定は無いはずだから流石に名前ぐらいは記憶と合っているよな⋯


「カエデ?どうしたの?難しい顔して⋯?」


 カリンは話しかけ慣れた空気感で喋りかけてきた。


「!?...い...いや、なんでもないよ」


 カエデは咄嗟に否定してしまった。


 ――変じゃなかったか?


 今のカエデの返答はカエデという人格を意識して返した返事ではなかったためカエデは少し焦りを感じた。


 ――しかし、この世界はとても素晴らしい!空気は上手いし景色は見入ってしまうほど綺麗だ。この世界は最高だ。もう現実には戻れないかもしれない。


「そろそろ謝りに行こうよ、私も一緒に謝ってあげるからさ」


 ――やはりそう来るか。記憶が戻ってきたから当然ついさっきのことまで覚えている訳だが、どうやら俺は両親と喧嘩をして家出したらしい⋯。全く、めんどくさい仕事残していきやがって⋯。


 謝るのは簡単なのだがカエデはなにか絶対に謝りたくないという確固たる意思の塊が心の中にありどうも踏み出しきれないでいた。


「私も実はあんまり賛成じゃないんだ⋯、カエデがここを出ていって街に行くの。街に行っちゃったら⋯

 ゴニョゴニョ⋯」


 カリンは恥ずかしそうに口を紡ぎながら聞こえないほどの声で話した。

 カエデは「街に行ったら」の後になんと言ったのか聞き取ることができなかった。


「――なんて?」


 カエデは思わず聞き返していた。

 彼は聞こえなかったのだからこれは仕方ないことなどと考えていた。


「寂しくなるっていったの!もう、こんなこと何回も言わせないでよ⋯」


 カリンは恥ずかしそうに、それと同じように怒った様子で話した。


 ――可愛いやつだ⋯。ただそれは一理ある。


 街に行くということは滅多にこっちに帰ってくることは出来ないということなので、寂しいと考えるのもおかしいことでは無いとカエデも考えていた。

 だが、カエデは子供というのは親の元からいつかは巣立っていくものだと、その旅立ちは誰にも止めることは出来ないものなのだと自分を騙す言葉で自分の考えを塗り固めた。


「――ごめんな、それでも俺は行きたいんだ⋯」


 もちろんこの言葉は遙真楓としてもカエデとしてものセリフだ。彼のこの意思は揺らがないだろう。


「まぁ別に止めるつもりはないよ⋯、でもたまに顔くらいは出しに来てね。そうじゃないと心配になっちゃうから⋯」


 カエデはそのつもりではあったが、これで蔑ろには出来なくなったということを感じ取っていた。


 色々な話をしていたら徐々に日が落ち、空が黄金色になっていった。


 ―― このままここにいるつもりもないのでさすがに謝りに行くこととしよう。話せば分かるはずだ。


 家出から2時間程経ったとき、カエデもついに謝りに行く決心が着いた。


「そろそろ謝りに行くことにするよ、暗くなってきたし⋯」


 ――さすがにもうカリンに迷惑をかける訳にも行かないしな⋯


「私はもうちょっとここにいるよ。ここの風気持ちいいんだよね。」


 カエデは迷惑をかけることになるというのは杞憂だったのかと思うと安心した。



 カエデは彼女の元を後にした後、記憶を頼りに家族がいるであろう自宅に戻った。

 自宅に戻ると入口のドアの前で母さんがソワソワしながらウロウロしていた。


「母さん、ただいま⋯、それと昼はごめん⋯。」


 ――こういうときは怒るよりも素直に謝った方が良いとおじいちゃんが言っていた気がする。


「!? ――カエデ⋯!あんた心配したのよ!今までどこ行って⋯⋯ごめんなさい、ちょっとびっくりしちゃって⋯。――お父さんもそろそろ帰ってくるから、中に入っときなさい。」


 相当心配していたのが誰が見ても感じ取れるほどに母さんの目は涙目になり手も少し震えていた。

 カエデは家出は少しやりすぎたと反省をした。



 カエデは記憶が戻ったとはいえ、朧げな所はあるのでリビングで少しこの環境になれるため情報を整理していた。

 ある程度考えがまとまりふとカエデは父さんがまだ帰って来ていないことに気づいた。


「母さん、父さんは何しに行ったの?まだ帰ってこないなんて何かあったの?」


 カエデはこの時はまだ軽く考えていた。なにか重要な仕事でもしているのだろうと。


「おかしいわね、カエデを探しに行っただけなのに、こんなに遅いなんて⋯」


 ――なるほど⋯


「俺ちょっと探しに行ってくるよ。」


 そう言い残しカエデは父さんを探しに家を駆け出して言った。


 ――もしかするとなにか危険な目に遭っているのかもしれない。父さんとは話さないと行けないこともある。


 この後起こる悲劇を知らぬままカエデは夜の村を探しに行くのだった。


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