#プロローグ 『繰り返すコンテニュー』
新作ゲーム「WIWVR」を手に入れプレイする普通の学生、遙真楓。自らが望んだ世界で過ごすというそのゲームで楓が過ごす世界はなんと…普通の世界!?
しかし普通に過ごす訳もなく…起こるはずのないバグの世界を攻略することになってしまう。
この世界で何を感じ、何を見て、どう終えるのか。
淡い光、飛び散る赤、そして動けない、動かない。
また世界に色が戻る。
色が戻った世界は想像よりも残酷でまるで今までの思い出を否定するかのように潤んでいく。
――やめろ、やめろ、やめてくれ!
色が戻った世界で目に映るのは空の青でもなく、建物の錆びれた色でもなく、ただただ流れ出ていく女の子の暗い赤のみ。
その他の色が主張を失いまるで赤だけを主役にするための脇役になったように。
赤以外の色の認識が薄れていく。
――辛い、苦しい、痛い。
なぜ俺はこの景色を見て感情が湧き出すのだろうか。
悲しいだけならまだしも辛いや苦しいといったこの溢れ出る感情・・・そうか・・・見ているのだ、この景色を・・・何十何百と・・・
「カエデ.........カエデ...?あぁ、よかった...」
――なぜ?なぜよく見えない?
ダメだダメだダメだダメだダメだ
血が出てる・・・止血しないと助からなくなる・・・
――動けよ身体!なんで動かないんだよ!
恐怖なのか、それともこのまま動かなくてもなんとかなるとこの状況でまだ思っているのか。
目の前はチカチカする。激しい憤怒で実際には聞こえていないはずなのに自然と血管がブチブチと切れる音が聞こえてくる。
――動いてくれ!頼む!
どれだけ願っても祈っても身体の硬直は一向に改善されない。
――周りに誰かいるなら誰でもいい!俺の代わりに!
ついには自分で助けるのを諦め懇願し始める始末だ。自分で自分が情けなくなる。
直後、今まで動かなかった身体が嘘のように動くようになる。
だが同時に激しい怒りもなかったかのように虚空に消えていってしまう。そうか・・・
――そうか、また同じ未来か・・・
思い出す記憶・・・そして繰り返す同じ未来・・・意識が遠のく。
――瞼が重い・・・そうだ、戻る時間だ。
体が薄のいていく、記憶が消えていく。
その刹那にも満たない瞬間、最も憎むべき悪役のフードの中身が見える。よく知っている顔、何度も見た顔・・・
――お前は・・・・・・
瞬時に全てを理解する。まだそのときでは無い、と。
「――そうだ、初めから・・・」
こうしてカエデの世界は幕を閉じた。
[コンテニュー]
[YES ] [NO]
――もちろん、YESだ。
そうだ、確かめる必要がある。自分が望む世界を作るため、コンテニューしてまたあの場所へ・・・