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(三)-11

「知らん! 今はそれどころではなかろう」

「大事な電話だったんじゃないですか」

「それなら固定電話の方にかかってくるはずだ」

 二人は一度それぞれ手を止めて、テーブルの上にかろうじてまだ居場所を確保している黒いかつてのハイテク機器を見た。

 それは全く微動だにせず、ただそこに鎮座ましましていた。

「まだのようだな」

「大人しく待っていましょう」

 夫の言葉に妻はそういうと、再び玄関チャイムが来訪者の存在を告げた。


(続く)

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