1-5章 魔法
「今日はお疲れ様でした…」
「大丈夫?」
「はい…」
美雪と結月は晩ご飯を食べに集会所へ来ていた。
「あ、おいしい」
文字が読めないので結月に適当に注文してもらった唐揚げを頬張る。
結月も同じ物を食べている。
注文する時結月はかなり頑張っていた。
お疲れ様です。
「お口にあって良かったです。リザードの肉らしいですよ」
リザード…ポ○モンで聞いたことがある。
トカゲのモンスターか。
「おいしいおいしい…
そうだ。話変わるけどさっきさ…」
「『フレイム・ボール』!」
あれ?出ない?
「ってことあったじゃん?あれってどうやって出してるの?」
「あれですか?
……特に意識したことはないですね……?
魔法使いになったから初期技として覚えているものだと…」
魔法かー。しばらくは拳で戦うことになりそうだな…。
「この本に書いてあるもので簡単なものなら…」
「使えるの?」
「近い近いです」
思わず身を乗り出す
興奮するぞ!もしかしたら夢にまで見たものが現実になるのか?
「えーとじゃあ…」
ページをめくり調べてくれてる。
「こんなのはどうでしょう?」
…
「読めないです」
「『フリーズ』ですね。初級魔法なので誰でも使えると思います!」
「『フリーズ』」
…
「出ませんね…」
「何かコツでもあるのでしょうか?」
「指に魔力がこもってない」
「ひやああああああああああああ」
「びびびびびびっくりした!!」
見ると後ろには白杖のお姉さんが立っていた。
背中には大盾を背負っている。
「ごめんごめん。ちょっと後ろから見てて指先に魔力がこもってなかったからつい。ほらこーやって…」
「は、ひゃい」
お姉さんは私の手を掴み的確に指示してくれる。
「指先に力を込める感じ。丁寧に丁寧に…」
「フ『フリーズ』…」
「冷た…!」
指先から冷気が出て結月の顔に拭きかかる。
「出た…!ごめん結月」
「大丈夫…良かったです…」
結月は袖で顔を拭く。
「良かった良かった。じゃあまたね」
「さよなら。ありがとうございました」
お姉さんは出て行った。
「魔力…不思議ですね。このまま練度を上げて行けば大魔法も使えるようになりますね!」
「これはその一歩ってことで〜乾杯!」
「乾杯」
2人は水の入ったコップで祝杯をあげた。
ーーーーーーーーーーー
〜数週間後の朝〜
窓から朝日が差し込んでくる。
「ねむ〜」
「私もねむいですぅ〜」
「おーきーてー患者さんが来ちゃう〜」
揺さぶられようやく気がつく。
「はっおはようございます…」
体を起こすと猫耳ロングの白衣のお姉さんが。
あの日宿屋の部屋が埋まっててそれ以降泊めてくれるようになったのだ。
ありがとう。
「あたしも眠いけど頑張ってるんだからぁ」
「ふぁ〜今日は日曜日ですよぉ」
…
…
…
「そうでしたー。てっきり今日も仕事かと…」
「しっかりしてくださいよぉ…」
「んえーごめんー」
コロンさんは私の膝に倒れてくる。
「よしよし」
「へへへぇ…」
撫でると嬉しそうにする。
やはり猫の習性なのだろう。
「ん…美雪ちゃん随分こっちの言葉上手くなったねぇ…。
急にうちに駆け込んできた時はびっくりしたよぉ。
玄関開けたらただ無言で見つめてくる2人が立ってるんだもん…」
「そうですねぇ…」
あの夜、宿屋を回ったがどこも満室で最後に電気のついていたこの病院を頼ったのだ。
が、私はこっちの世界の言葉を知らない結月はコミュ症発動しちゃうし。
それでも意思が伝わってここで過ごすことになって、2人にこっちの言葉を教えてもらった。
なんとかなるもんだねぇ。
「zzz…」
隣で結月も幸せそうに隣で寝ている。
今日はいい天気だ…