1-3章 走り出せ
いつもと同じ夢
目覚まし時計の電気をつける
7時
いつもと同じ時間
朝日はまだ出ていない
「んー」
眠気を覚ますために伸びをする
「この世界は1日30時間ですからね。
まだ慣れてませんか」
「いや、別のことだよ」
「“いつもの”ですか…」
“クロス”
私の中にいる誰かの魔力だ。
誰の魔力なのかそれともメッセージなのか全くわからない。
ベッドから抜け出しいつもの服に着替える。
白い1枚の布のワンピース冬はあったか夏は涼しい。
もちろん菌はつかない、匂いもつかない、魔法耐性有り、破れても自動修復する優れものだ。
…それでも気になるからいつも洗濯してるけどね
よし、これにあったかいジャンバーコートを着て…
冬はあったか?
冬には冬の着こなし方があるんだよ
「よし、行こう」
静かに部屋のドアを開ける
肌を刺すような冷気が襲ってくる
一歩踏み出す
足からも冷気が伝わってくる
そのまま廊下を駆け抜け玄関へ
靴を履き外へ
「うん、冷える」
手袋をつける
あったかい
目的地は“いつもの場所”
展望広場
この時間はまだまだ人が出てこない
冬なら尚更だ
そのまま人のいない道を歩き続ける
おっと
コロンさんだ
彼女はこの村の医者で猫の獣人だ。
私も助けてもらったことがある。
「ライフちゃんおはよ♪」
「おはよう。相変わらず早いね」
「お互いにね。あっそうだ!ライフちゃんの顔見たら思い出しちゃった!さっき展望広場で女の子を見つけたんだよ!」
「本当!?偶然だね」
「あの時はびっくりしたよ。傷だらけの女の子が倒れてて…血の量も凄くて今こうして元気に暮らしてるのが不思議なぐらい」
「あの時かぁ…今だに何と戦ってたのか思い出せないよ…」
「思い出さない方がいいのかもしれないね。それじゃあいくね」
「バイバイ」
手を振り別れまた歩き出す
階段の下まで着くと女の子が2人
こんな時間に2人も珍しいな
あ、さっき言ってた子かな?
階段を上りながら考える
着いた
「…!」
丁度朝日が照ってきた
眩しさに腕で視界を遮る
綺麗…
腕じゃなくて朝日がね
“その一言がなければ完璧だったのに…”
うるさい
ぷるるるるr
電話だ
「もしもし、」
『ご飯できたヨ!』
「すぐ帰るよ」
そうとだけ伝え電話を切る
さて、
柵の方へ歩く
階段まで10mほどのところで振り返る
力を溜めて…
ドン!
走り出す!
朝日と逆方向へ!
そして!
飛ぶ!
髪が靡く!
トン…
go!!!
「到着」
5秒
玄関を開ける
良い匂いだ
「ただいま」
「おかえり!」
出迎えてくれたのはナナカ
頭を撫でる
「>v<」
かわいい
お嫁さんにしちゃいたいぐらい
良いお嫁さんになれそう
「おかえりライフ」
リビングから顔を覗かせたのはファル
この良い“素晴らしいハーモニーを奏でているような”匂いを創り出した張本人だ
「じゃあみんあ揃ったし席に着いて!」
「「「いただきます」」」