1-2章 魔法の使えない魔法使いと生命と
せーの
「「はい!」」
美雪です。
今度はテレポートではなく歩いて荒野に来ました。
「はああああああああああ!!!!!!!!!」
!?!?!!?!?!?!?
結月の指先に赤に魔力が集まる。
「『フレイム・ボール』!!!」
「ばぁん!」
結月は手をピストルの形にして対象に放つ。
「キュウ!」
兎に見事に命中。
黒焦げになった。
「やった!
…でもちょっとかわいそう…」
黒焦げに近寄りしゃがみ込む。
それに続いて結月もしゃがみ込む。
「美雪さんは優しいですね。
この世界の兎は凶暴でペットや動物園で飼われているものとは比べものにならない限り野生の力が強いんです。
だから作物を荒らしたり、売り物を盗ったり被害も大きい。
…人間のエゴかもしれませんがやっぱり私たちが安心して生きるにはこういう不条理なことも必要なのかもしれませんね」
そうだよね…
動物は私たちと違って自分で作物を育てて食べて生きていけるわけじゃないもんね。
生物が生きたいってのは根本にあるものなんだな。
「私も…はあああああああああああああああ!!!!」」
「え」
「『フレイム・ボール』!」
スカ
「あれ?」
ぴょんぴょん…
兎が近寄って…
ドン!
「うっ!」
私のお腹にダイブ。
「大丈夫ですか!?」
その場で私はお腹を抱えて倒れ込む。
こんなに痛いなんて…
「『フレイム・ボール』5発!バン!ban!bang!ban!bang!…ふっ」
「おみごと…です…」
「どやです」
「なんで魔法…使えない…」
「…今日はこの辺で引き上げましょうか。これだけ狩れれば何日か過ごせますので…」
「ごめん…なさい…」
「そんなことより!生きてて良かった!あれ食らったら最悪死にますからね!」
「え!?」
「お腹…触りますね」
結月の手が私のお腹に触れていく。
「ふ…」
「骨は折れてないみたいですね」
…
「ちょ…ふふふふふ…」
「失礼しました。大丈夫ですよ」
くすぐったくなくなった。
「よいしょ」
立ち上がってもなんともない。
良かった。
今日は運が良い。
私たちは村へ歩き出す。
午後は何をしようか。
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またここ
ここはどこ
たくさんの家が建っている
住宅街だ
白い煉瓦
赤い屋根
そして…もうすぐ来る
ほら来た
人の大群が一斉に逃げていく
私は立ち尽くすだけ
逃げている方と逆方向に見える大きい黒い影
あれを倒せば良いんでしょ
でも…目の前にその人は現れる
黒い影で覆われた人
誰…
その人は私に手を伸ばす
私はその手を掴もうと手を伸ばし返す
「またここ」
ライフ、おはようございます。
「おはよう、クロス」
早朝、ベッドの上でのとある話。