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深夜の山道【短編ホラー】

作者: モモモタ

 友人の家は山の中にある。といっても道路はあるし、近くにほかの民家もあるため、秘境というほどでもない。ただ、歩いて帰るのは大変だし、車で行き来するのも道が狭いわ、夜間は真っ暗だわと、あまり行きたいとは思わない。ただ、その日は飲み会で、たまには飲みたいという友人の意思を尊重した結果。



「やっぱやめときゃ良かった」



 友人を送る羽目になってしまった。家の場所はわかるのでそれ自体は良いのだけど。



「のんきに寝てんじゃないよ」



 まぁ時間は深夜2時。しこたま飲んでいたのでそれ自体は良いのだが、この山道を走らさせる恐怖をせめて分かち合ってほしい。



「音楽でも流すか」



 ボリュームを上げて友人への嫌がらせも兼ねるとしよう。そうこうしているうちに友人宅が近づいてきて。



「見えたな」



 家の前に横付けする。周囲は林に覆われており、民家は近くても100メートル以上先だ。



「おい、着いたぞ」



 熟睡している友人を起こす。



「ううん……」



 だが、起きない。仕方ない。エンジンをかけたまま車を降り、助手席から友人を引きずり下ろし、肩を貸して家へ向かう。すでに連絡はしてあったため、友人の奥さんが扉を開いて出迎えてくれる。



「すみません、主人が面倒を」


「いえいえ」



 玄関に友人を寝かせる。



「後はこちらで何とかしますから」


「じゃあお願いします」



 後は託し、俺は家を出て車に戻る。



「よし、帰るか」



 今来た道を戻り、帰路に立つ。ここから山を下り、市街地に出るまで数分程度。俺は誰もいなくなった車内に若干の恐怖を覚えつつも、車を走らせる。ずっと寝てたけど、あんなでもいなくなったら寂しいもんだな。そして、走り出して1分ほどで。



「あれ」



 突然、音楽が止まる。ボリュームを弄っても変わらない。



「おかしいな」



 音楽プレーヤーと繋いでいるので、一度外して付け直す。認識はされるが、再生されない。



「………」



 何か怖くなってきた。音楽は諦めて、ラジオに変更した直後。



『ア……ア……ア……ア……ア』


「っ!」



 爆音でラジオから流れる奇声に驚き、ボリュームを下げる。大きくしたままだった。いや、それより今のは……奇声はなおも発せられており、不気味だ。ラジオも消し、運転に集中しようとしたが。



「ア……ア……ア……ア……ア」



 声はなおも聞こえてくる。ラジオが消えないのか。運転しながらなので片手間でしか弄れず、変な操作をしてしまったのかもしれない。一度停めて直そうかとも思ったが、もうすぐ市街地だ。このまま山を下りて明るいところで直そう。そう思ってアクセルを踏む足に力を入れる。このカーブを曲がれば……



「うあああ!?」



 カーブを曲がり切る直前。何かが車の前を横切った。急ブレーキを踏むが、ドン、という音と衝撃。やばい。何か轢いてしまった。すぐに車を停め、降りて確認するけど……



「あれ?」



 何もいない。動物だったら血の跡とかありそうなものだけど、無い。弾く直前に見た姿は大きさからしてもキツネとかじゃないし、衝撃も助手席に置いていたスマホが下に落ちるほどはあった。じゃあ何だというのか。私には、あれは……



「………」



 まるで、人が這っているように見えた。そう思ったのは恐怖からだろうか。もう一度車の周囲を見て、何もないことを確認するとすぐに車に戻る。だが。



「え」



 アクセルが反応しない。エンジンはかかっている。ハンドルロックもかかってないし……



「ア」



 背後から、声。あのラジオの声だ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 翌朝。俺は路肩に車を停めて車内で眠っていたらしい。近くを通りかかった人に起こされたそうだが、あまり覚えていない。家に帰り、もう一度眠りについてから、ようやく何があったかを思い出したのだ。あれはいったい何だったのか。友人に聞いても何も知らないの一点張りで、そういう怪談も聞いた事がない。ただ……あれから友人の家には行っていない。



                              完

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