お金がない
なんてお金のなさだ
お金のなさにあたしは泣いた
「欲しいものがあれば言え買ってやる」
そう言いながらパパは、それが買い与えても良いものかどうか品定めした
あたしは言えるわけがなかった
ああ……BLコミックの表紙はなぜあんなにも一目でそれとわかるようなものばかりなのか!
表紙は可愛い無垢な子犬の写真とかでいいじゃない! それをぱらっとめくったら妖しい雰囲気の男子2人が口づけしてるとかでいいじゃない!
誤魔化してよ!
中学生にはお金がないんだから!
早く大人になりたかった
自分でお金を稼いで、早く自分の好きなものを自分の好きなだけ、買いたかった
買って、コレクションしたかった
古紙を捨ててあるゴミ置き場に大量のBLコミックが捨てられてるのを見たことあるけどあたしはあんなことはしない!
買ったものは責任をもってコレクションに加えて、愛してあげるんだ
そう、思ってた
社会人になってみたら
なんて時間のなさだ
時間のなさにあたしは泣いた
お金は最初のうちこそ自由に使えていたが、あまりに使いすぎるので、そのうちいくらあっても足りなくなった
やがて積もりに積もった借金の返済で我慢をするしかなくなった
コレクションは確かに豊富になったけど、なんてことだろう! 膨大なそのコレクションを楽しむ時間がない!
無職になろう
無職になりたい!
無職になったら
欲しいものがすべて得られた
お金はないけど
コレクションは残った
どうせ売っても二束三文の値にしかならないあたしの宝物たち
パパに寄生して生きて行こう
パパが死んだらあたしたちも終わりでいいじゃない
お金なんていらない
あなたたちさえいればいい
幸せ
ふふ、幸せ
共に生きよう
飽きるまで