19 ˇ 妹ではなく、弟だったら問題あるよね?
「本当に久しぶりだね。お姉ちゃんとお風呂って」
買い物が終わって、今家に帰る途中の会話。家に着いたらすぐお風呂に入るつもりだ。やっぱりあたしは似海と一緒に入るということになったね。
「いや、久しぶりって? そもそもあたしたちは一緒にお風呂に入ったことなんてあるの?」
それってあっちの世界のあたしのことだよね? つまりあたしじゃない、もう一人のあたし。
「あるよ。姉妹だから時々一緒に入るよね」
「そうなの? こっちは『姉妹』ではないからやっぱり違う」
こっちの似海は男だから、一緒に入ることができないのは当然だよね。やっぱり妹がいたら一緒にお風呂に入ることくらいあるよね。
「お姉ちゃんは似海くんとお風呂に入ったことはないってこと?」
「そんなの当たり前だろう!」
やっぱり性別が違うと細かいところはいろいろ違うよね。
「そうか。似海くん、可哀想」
「いや、大袈裟だよ。お風呂くらいで」
別に一緒にお風呂に入らなくても問題があるわけないはずよ。
「つまり、お姉ちゃんのスッポンポンの姿を見るのが私だけの特権ね。あの子に勝った」
「外で堂々とこんなこと言うな! 人に聞こえられたらどうする? ていうか、外では『お姉ちゃん』と呼ぶなと言ったのに」
「あ、そうだったね。雪未ちゃん」
彼女と一緒にお風呂に入ったことがあるのは『あたしじゃないあたし』だな。つまり彼女が『姉と一緒にお風呂に入る』という経験があっても、あたしには『妹と一緒にお風呂に入る』という経験がない。
でもこれから初めて一緒にお風呂に入る機会だよね? 妹と一緒のお風呂か。それも悪くないかもね。年上の妹だけど。
「ただいま」
「姉ちゃんやっぱり帰り遅いね」
家に帰ってきたら小さい似海が居間に座っている。パジャマの姿だから、すでにお風呂が入ってきたようだ。
「女の子の買い物だから仕方ないよ」
これでも本当に早く済ませるように努力はしたわよ。もう夜なのだからね。でも結局意外と時間がかかってしまったみたい。
「2人はこれから一緒にお風呂に入るの?」
「うん、そうだよ。やっぱり似海くん一緒に入る?」
「僕はとっくに入ったよ!」
またお風呂の誘いか。こいつ、まだ諦めていないのね。残念だけど、この子はあたしと一緒に入ることすらないのだから、当然いきなり他の女と一緒に入るわけがない。
「それより、その……。実は僕ちょっと似海姉と2人きりでお話ししたいけど」
2人の似海が話し合う? 一体何のことなのか? あたしには言えないこと?
「いいよ。なら、私と一緒にお風呂に入ればいいのに」
「なんでそうなるの!? 話はやっぱりお風呂の後でいいよ」
「やっぱり駄目か」
お前しつこいぞ。たとえ一緒に入ったとしても、きっとお風呂の中で男女はまともに話し合える雰囲気ではないだろう。
「じゃ、お前は部屋で持っていていいよ」
「わかった」
何の話かわからないけど、問題ないだろう。2人で話し合わせてもいいかも。でもまずはお風呂だ。
「さあ、似海……」
「はい?」
あたしが大きい似海を呼ぼうとしたら、小さい似海の方が先に反応した。
「あ、そうだよね。今の『似海』は僕のことじゃなく、似海姉のことだよね。僕はつい」
「まあ、確かに紛らわしいわよね」
やっぱり同じ名前だとややこしい。勘違いやすいよね。でもどちらも似海だから仕方ないよね。今このままでいいか。すぐ慣れるはずよ。
「似海くん、ごめんね」
「え? なんで似海姉が謝るの?」
「だって……その……」
「2人とも、話があるならお風呂の後でいいわよ」
今大きい似海の言いたいこと、あたしわかるかも。自分の存在がこの紛らわしさの原因だと意識して悪いと思っているだろう。だからまず止めておいた方がいいと判断した。
「そうね。じゃ、私お姉ちゃんを借りるね」
「うん、お姉ちゃん預けるね」
「あたしは品物じゃないし! さあ、さっさと行くわよ」
「うん」
もう早くお風呂に入りたい。それに、同時にこの2人を相手にするのはやっぱりきついわよね。




