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18 ˇ この世界の未来は歪んでしまうの?

 「ごめんね。私いきなり立ち止まっちゃって」


 しばらく涙を流した後、似海(にうみ)の様子はもう少し落ち着いてきた。


 「ううん、泣きたい時は泣けばいいのよ」

 「私、つい本音を口に出してしまったね。あの子を幸せにさせたい……、そう思っているつもりなのに、やっぱり本当は(うらや)ましくて……」

 「それは仕方ないことだよ」


 自分だけは辛いのに、他の人のことばかり心配する余裕なんてないよね。彼女も聖人君子(せいじんくんし)ではあるまいし。


 明るく振る舞っているように見えるけど、意外といろいろ抱え込んだダークな一面もあるよね。


 「大丈夫。こうやって今お姉ちゃんがここにいて、こうやって私と一緒に歩いているんだもの。もうこれで幸福だよ」

 「そうか」

 「年上の妹だけど、これからよろしくね。お姉ちゃん」

 「うん」

 「さあ、買い物ね。お姉ちゃんと買い物。私幸せ……」

 「……」


 今どんな言葉を(つむ)いで答えるかよくわからなくて、あたしは無言(むごん)になってしまった。どうしたらいいかまだわからないけど、とにかく今あたしにできるのは彼女と一緒に歩いて、買い物に行くことしかない。


 「え?」


 何なのこれ? さっき歩いてきた方向に視線を向いたら空中に亀裂(きれつ)のようなものが……。しかも蜈蚣(ムカデ)みたいにうねうね(うごめ)いているみたい。これを見たらなんか気持ち悪いという印象だ。()()がついてきた。


 「お姉ちゃん?」


 今似海は、向かっている方向に視線を向いているから、あたしと同じ景色は見えていない。


 「ね、あっちは一体何なの!?」


 ただの幻覚かな? でもこんなの見たことない。まさか似海と何か関係が……?


 「ふん? 何もないよ」

 「え?」


 もう消えた? 似海が同じ方向に向いた時、あれがすでに姿を消した。


 「やっぱり幻覚か」

 「何を見えたの?」

 「上手(うま)く説明できないけど、なんか大きな蜈蚣(ムカデ)みたいな亀裂(きれつ)

 「は? 何? なんか怖い!」

 「いや、ただ気の所為(せい)かもね」


 実はまだ気になっているけど、簡単に消えたのだから大したことないかも。


 「そうなの? お姉ちゃんったら、私は虫が苦手なのに」


 虫が苦手ってのは確かに小さい似海も同じだな。


 「ごめん、驚かせちゃったかな。さあ、早く行こう。夜遅くなったらよくないし」

 「うん」

 「それとね、やっぱりこれも言っておこう……」


 前へ歩き続けながら話を再開した。


 「何? なんか真剣な顔ね。お姉ちゃん」

 「それだ! その『お姉ちゃん』って呼び方は外ではちょっとね」

 「え? いきなりなんで?」

 「誰もいない時なら構わないけど、周りの人から見ればやっぱりおかしいと思われるわよね」

 「あー、確かに。私は年上だから」

 「別に、お前のことを否定してるってわけじゃないよ。でも……」


 年上の妹って不思議だけど、あたしはもう納得できた。でも他の人はあたしたちの事情を知っていないから。


 「わかった。そうだね。外では仕方ない。じゃ、どう呼べばいいかな?」

 「普通に名前でいいよ」

 「うん、そうね。……雪未(ゆきみ)ちゃん?」

 「なんで『ちゃん』付けなの?」

 「嫌なの? 子供っぽすぎるかな?」

 「ううん、今のお前は年上だし。あたしより大きいし」

 「じゃ、私の方がお姉さんだね?」

 「そうね。じゃあたしもお前のことを『似海お姉さん』と呼ばないとね」

 「え? いや、それはやっぱり駄目。お姉ちゃんにそう呼ばれるのはやっぱりなんか……」


 そんなに嫌なの? 多分彼女はたとえ年上になってもまだ妹でいられたいようだね。


 「そうか。じゃ、今までみたいに『似海』ね」

 「うん、わかった。これでいいよ。お姉ちゃん」

 「ほら、まだ外だから、『お姉ちゃん』ではなく、『雪未』だ」

 「そうね。雪未ちゃん」


 やっぱり『ちゃん』付けで決定か。まあ、それでいい。


 「あ、この店。懐かしい。実はこのお店は来年から閉店になっちゃってるから」


 今あたしがよく弟たちと一緒に食べに来ていた香港(ほんこん)料理のレストランを通り過ぎたから、似海はこの店の未来のネタを教えた。


 「そうか。なんか残念ね。じゃ後で食べに行こう。今度は4人で」

 「それはいいね。久しぶりにこの店の美味しいもの食べられる」

 「お前、流沙包(りゅうさほう)大好きだもんね」

 「うん!」


 似海、なんか嬉しそうね。確かに似海はこの店の料理が大好き。


 「ていうか、また未来のことをべらべらとあたしに教えて本当に大丈夫なの?」


 本当にあたしは勝手にこんなこと知ってもいいのか? よくわからないけど、なんかチートって感じだ。


 「そうね。もうすでにたくさん言ってしまったけど」

 「確かにそうね」


 今更だから、もういいのでは? 未来のことは気になっているし。 それに本当に全部の流れは同じになるとは限らないよね?


 「お前があたしの未来を変えたのだから、この店の未来も変えられるかもしれないね?」

 「あ、そうかもね。」

 

 いい方向に変えられるのならそれでいいんじゃないかな。しかし、万が一もし悪い方向に変わったらどうする? 勝手に変えたらまずいっていうこともあるはずだよね?


 「お姉ちゃんを救ったのと同じように、もしかしてこの店も私なら救えるかもしれないよね?」

 「いや、そこまでは」


 運営を辞める原因は様々あるだろう。この店の人々だけの問題ではないという可能性もある。あたしたちはただの部外者だから何かして解決できるわけがない。アニメじゃあるまいし。


 でも、あたしの事故のことみたいに、直接似海の干渉を受けていないことだったら全ては同じ流れになるのかな? それとも何もしなくてもいろいろ違う方向に向かっていく? 確かに『バタフライ効果(エフェクト)』のことはあたしも聞いたことがある。直接関わらなくたって影響が与えられるかもしれないってこと。


 もしかして、似海がこの世界に来た時点で、この世界はすでに歪み始めたのかもしれない? なんて、そんな怖いことを想像してしまった。きっと考えすぎるよね。


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