恋人が欲しい
流山千羽子は考えていた。
どうしたら、自分に恋人ができるか、を。
四年制の私立大学を卒業して早くも二年が経った。
もう何回か大学の同級生の結婚式に顔を出した。
会社の同僚も結婚を匂わせるようなお付き合いを続けている。
24歳で結婚だなんて、と初めは思っていた。
しかし、徐々に気持ちは変わっていった。
遊び仲間が減ってきたのだ。
あんなに毎日苦楽を共にしてきた会社の同僚も約三分の一が退職をした。
もちろんキャリアアップの退職もあったが、大半は寿退社であった。
会社終わりに昔はみんなでファミレスに行っては、理想の恋人のはなしや会社の愚痴を終電ギリギリまで話していたものだった。
しかしいまはどうだろう。
六時の提示になれば、同僚はそそくさとトイレに駆け込み、倍塗りのメイクをして、有楽町駅で待つ恋人に会いに行く。
残業をするのは、仕事が大好きな上司か絶対に恋人候補にならない独身男性の先輩、そして独身の私くらいだ。
千羽子は自分のライフプランを存外には考えていなかった。
ただなんとなく、二十代で結婚かこどもを一人生んであとはそのあと考えれば言いと思っていた。
周りの友達もそうだと思っていた。
そうだと言っていたのだ。
しかし裏ではしっかりと恵比寿で合コンを重ね、渋谷のクラブに入り浸っていたのだった。
私は合コンも苦手だし、クラブなんてもっての他だった。
唯一行ったのは、新宿で開催された婚活パーティー。
当日予約ができてなんと女性はたった500円だったのだ。
隣の席の美人な先輩とノリで行った。
でも合わなかった。
男が女を見定めているような雰囲気。
女も男を品定めしている雰囲気。
お互いがお互いの利益を追っている。
男性はなんとたった一時間のパーティーのために5000円も出しているということをあとから知った。
その事実もそうだけれども、自分は恋愛をして生涯の伴侶を決めたかった。
何も少女漫画にあるようなロマンチックなものじゃなくていい。
普通の恋愛でいい。
欲は言わない。
自分を大切にしてくれる人が欲しい。
それはシングルマザーである自分の母親への当て付けにも捉えられるかもしれないが、私はシングルマザーにはなりたくない。
夫と妻と二人で家族になりたい。
贅沢なこと、言ってるかな?
そんなことを考えながらする仕事は全く進まない。
同僚も全員帰宅した。
上司も今日はお客様のところから直帰だからオフィスにはいない。
恋人候補にならない独身男性の先輩は水曜日のど平日にもかかわらず、有給休暇で不在だ。
夜9時のオフィスには私だけ。
ひとり、この世界から取り残されたような感覚だった。
大袈裟な表現なんかじゃない。
本当にそんな気がしてくるのだ。
誰も自分になんて興味がない。
真っ暗な部屋にひとりきり。
誰にも相手にされない。
誰にも必要とされない。
「あー、やだやだ」
不要な書類をシュレッダーにかけながら千羽子は言った。
もう今日は帰ろう。
明日も仕事だし。
オフィスの電気を消して鍵をかけてそそくさとエレベーターに乗った。
外には色とりどりのネオンがひしめき合っていた。
いろんな方向から楽しそうな声が聞こえる。
わたしはそんな彼らの顔を見ないように急いで駅に向かった。
嫌でも幸せそうなカップルは目に入ってきたけれども、なんとか振り払うことができた。
銀座の通りは私のことなんかお構い無く、今日も賑わっていた。




